マレーシア航空B777型機、消息不明(第6報)=機体発見に秘策?=


2014年3月10日         John Bosnitch & Aaron Terruli

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[(BEA,FRANCE)2年の歳月と5,000万㌦をかけ、深さ4㌔の大西洋海底から引き揚げたエールフランス、A330型機(228人搭乗)の”ブラックス・ボックス”と同一の装置]

乗客、乗員239人が搭乗のマレーシア航空、B777型機は、地上との最後の交信をたってから3月10日深夜現在、丸3日間、機体は行方不明のままだ。レーダー画面から突然消失した南シナ海上を中心に多数の艦船、航空機が捜索活動中だが、遭難が確実視される中で、遭難地点を割り出す機体残骸の破片や、”ブラックボックス”が発信するはずのシグナルもキャッチ出来ないでいる。乗客数で最大の中国当局は、マレーシア政府に捜索活動のスピードアップを求める動きに出た。旅客の家族の間で広がるあせりと苛立ちに先手を打つ政治判断が働いたのだろう。最新鋭に近い旅客機の遭難で、これほど長時間、事故の痕跡を発見出来ないケースは極めて異例だ。仏の事故調査機関、BEAは2009年大西洋上空で起きた228人搭乗のエールフランスA330型機墜落事故で、2年近くをかけ深さ4㌔の深海から”ブラックボックス”を回収、同時に機体の大半を発見した経験を生かし今回の捜索活動に協力する意向をマレーシア側に伝えた。現代社会でハイテクの塊と言われる旅客機が”神隠しに会う”等とは到底、考えられない。

2009年6月1日、リオ・デ・ジャネイロ発パリ行きエールフランスのA330型機がブラジル東方の大西洋上で行方不明となった際も、事故機関連の機体の残骸発見や、遺体の収容で相当な困難にぶつかった。機体の大半が沈んだと見られる海域の特定に仏政府は原子力潜水艦の出動に踏み切った。水中での探知活動に秀でたソナーを活用、事故機の”ブラックボックス”(飛行記録計と音声記録計の総称)が発信する特殊シグナルを捉える為だった。ピンポイント迄はいかなかったが大体の場所は特定したという。

その後、2年間の歳月と5,000万㌦を投じ無人特殊深海艇で最終的に”ブラックスボックス”の在処を海底から見いだした。同時に機体の大半、エンジンの残骸も突き止める事が出来た。

事故原因は当初、航路上で巨大積乱雲に遭遇し、激しい乱気流に巻き込まれたせいと推測された。しかし、”ブラックボックス”の回収成功で同型機に装備したピトー管の欠陥が明らかになり、パイロットの操縦ミスによる失速という原因究明に繋がったという。

大韓航空機がベンガル湾で北朝鮮の爆弾テロで墜落したケースでも機体の残骸の海上への浮上は極端に少なかったと言われる。

今回、マレーシア航空のB777型機の場合、突然レーダー画面から機影が消失したり、機長から緊急事態を連絡する余裕も無かった事に加え、”ブラックボックス”の遭難シグナル発信の痕跡が皆無等、高度10,500㍍を水平飛行中、予測不可能な異変が機体を襲いかっかたとしか推測出来ない。乗客のうち2人が盗難旅券を使用して搭乗した事実が発覚したため、マレーシア機事故を一層ミステリーじみたものにしている。

ハイジャック事件が機上で発生していたのか、爆発物が持ち込まれ機体を瞬時に破壊したのか、それとも2年前上海空港でまきこまれた他機との地上接触事故で修理した右主翼に金属疲労が進行し、空中破壊に発展したのかーなど行方不明の背景に事欠かない。何れにしろ機体の存在箇所を一刻も早く特定する事が最優先事項だ。

☆ 中国は、消息不明のマレーシア航空B777型機の機体捜索で多数の人工衛星を投入する事を決めた。人民解放軍の機関紙『解放軍報』が3月10日、報じた。それによると中国西部、四川省西安の衛星管制センターは地球周回軌道上の10基のサテライトで軌道変更の指令を出し、南シナ海を監視可能な新たな軌道へ投入するという。何れも解像度の高い監視装置を搭載しているという。これで捜索範囲拡大が即刻可能で、マレーシア政府等の海空での大掛かりな救難活動を側面支援できるという。