2014-07-04 (JST23:50) 小河正義
2014-07-05 改訂
図:(川崎重工、防衛省、航空自衛隊)量産開始が仕切り直しとなったC-2次期主力輸送機の試作2号機。地上強度試験機で後部胴体下部の貨物搭載ランプ扉付近の強度不足が判明、かなりの規模の改修が必要となった。C-2輸送機は最大貨物搭載量30㌧、12㌧搭載で航続距離は8,900kmに達する高性能機。
航空自衛隊の次期主力輸送機、C-2型の量産が大幅に遅れる。後部胴体の構造強度に重大な欠陥が判明、該当部分の改修などで実戦配備用の機体完成は、平成28年度末迄、延期が正式決定した。防衛省が、7月4日正式発表した。当然、同型機で編成する輸送機部隊の運用開始も、同様に2年先送りを余儀なくされる結果となった。C−2開発では過去、設計ミスが複数回、明らかになり開発経費は見込みより大きく膨らむ。ただ、日本だけでなく、軍の大型輸送機、新規開発では同様の事態が生じており、今後、リスク分散をかね新型軍用機開発での国際共同開発が時代の主流となろう。
図:(上下とも川崎重工、防衛省、航空自衛隊)現在の航空自衛隊主力輸送機、川崎重工製C-1
防衛省の発表だと、機体の新たな構造強度不足が明らかになったのは、カーゴ扉とランプ扉を含む、胴体後部。1月7日、岐阜県・各務原の航空自衛隊実験航空隊のテスト場で飛行中の胴体内部での加圧を想定した地上での強度試験中に弱点が浮かび上がったという。
カーゴ扉、ランプ扉、周辺の胴体に予想外の損壊が発生、試験継続が急遽、取りやめとなった。半年に及ぶ同事故の調査、原因究明で『カーゴ扉とランプ扉の境界付近で胴体フレームの一部に荷重が集中。後部胴体で機体損壊に及んだ事を突き止た』。
このままではC-2型の量産移行は無理で、該当部分の設計変更等大幅な手直しが避けられなくなった。
防衛省、航空自衛隊では1)開発期間を更に2年延長する。2)部隊への量産機引き渡しも予定より大幅遅れで平成28年度末とするー等の対応で事態を収拾するに至った。C-2型の開発つまずきへの批判のある一方、同時並行で次期対潜哨戒機、P1型開発という欧米でも例のない、野心的すぎる計画策定があった事は否めない。ただ、P1型は問題点を克服、実戦配備へ向け進行中。C-2型機の構造部分の弱点是正もいずれ解決できると専門家は見る。
むしろ、予算超過の批判にたじろぎ、搭載重量の減少などの安易な改修で問題を誤摩化してはならぬ。計画目標の空輸能力30㌧を確保する事が、今回の失敗を生かす防衛省や製造の主契約社、川崎重工の責務と考えるが、如何だろう。
本稿については、「航空自衛隊次期主力輸送機で機体構造に強度不足」(2014-02-03改訂)でも紹介してあるので、併せてご覧頂きたい。
最後に、小野寺防衛相が7月4日に行った記者会見議事録の中から「C-2配備遅延に関する質疑応答の部分」を抜粋して掲載する。
C-2輸送機の配備遅延問題について
7月4日防衛省で小野寺防衛大臣が行った記者会見の内容
Q:航空自衛隊の次期主力輸送機のC-2のことでお伺いしたいのですが、今回また防衛省の方で、新たに開発配備に2年更に遅れることが正式に決定されて、いわゆる当初予定していたものからトータルで5年遅れることになるのですが、開発というのは、引き続きこの計画は維持していくのでしょうか。
A:今年1月7日に航空自衛隊岐阜基地で静強度試験を実施した中で、C-2について不具合が発生をいたしました。今回原因の特定と、対策がまとまったということで、開発計画を変更するということになります。これは、2年間延長ということになります。この中で、最終的なC-2の配備開始が平成28年度末ということで現在予定をしております。当初からこういう形で計画が遅れるということ、これは、私どもとしては、なるべく予定には間に合うようにということで、研究分野担当部署にはしっかりと話をしておりますし、また、現在ある輸送機体制での運用に支障がないように、これは空幕を中心に、私どもは何度もこのことについては、省内で会議を行い、運用に遅れがないような形で、今後とも対応していきたいと思っています。
Q:防衛省ではこの間、新しく「防衛生産・技術基盤戦略」というのをまとめて、当初の事業費予定見込みのものからかなり超過するものについては、いわゆる事業そのものを取り止めることも検討というところを書かれたのですけれども、今回、この度重なる計画の見直しによって、多分、当初予定の800億円位予算が出ているはずなのですけれども、これにC-2事案というのは該当するのでしょうか。
A:いずれにしても、私どもとしては当初の計画から遅れる、あるいは予算が増えるということは決して望ましいことではありませんので、そのことがないように、研究開発の部署にはしっかりと指示をしております。また、C-2については、すでに試作機は飛行しておりますし、最終的な今回の静強度試験の中での不具合を技術的に解決できるという技術本部の見通しもありますので、その方向についてしっかり対応していただきたいという指示をこれからもしていきたいと思っています。
Q:今、「運用に支障がないように」とおっしゃいましたけれども、今、南西諸島の強化ですとか、これから集団的自衛権とか、いろいろと自衛隊の海外への役割が拡大していくと思うのですが、その中で今、現行のC-1が海外に距離的に適していないというのが現状ですが、本当に運用に支障がなくやっていける見込みというか、それは問題ないのでしょうか。
A:いずれにしても、今、C-1あるいはC-130を含めて、輸送体制をとっておりますが、C-2のような航空機というのは、あの大きさであれだけの航続距離を持ち、搭載能力がある航空機というのは、世界にない形になりますので、いずれにしてもその性能を満たすものが、このC-2が今のところ、一番私どもの要求性能に近いということでありますので、まずはこの開発を最終段階までしっかり成し遂げるということが大事だと思っています。また、当初からの遅れということは、当然このように起きておりますので、現在の輸送体制で、特に問題がないような形をとるように、これは何度も空幕と、その運用については協議をさせていただいております。
Q:完全な国産化というのは、わが国の防衛技術基盤を維持・発展していくために不可欠だったと思うのですが、逆に、例えば米国産とか、C-2に匹敵するようなものもあると思うのですが、そういった海外の物を最初から調達するという選択肢は、今さらですがなかったのでしょうか。これだけコストと時間が掛かっている現状において。
A:C-2を開発する段階での、その当時の判断という中で、C-2のような性能を持つ輸送機が世界にはないということで、そういう世界最高レベルの性能を持つものを開発するという決定をされたのだと思っております。いずれにしても、現時点でもこのC-2の性能というのは、世界から大変注目をされていますので、しっかりと一日も早く実際に量産できるような、そういう体制にすることが重要だと思っています。
–以上−