紛争地域上空飛行の"死角"。マレーシア航空に非無し(No7:MH17便撃墜事件)


2014年7月20日(JST.21:10)                           John Bosnitch マレーシア航空B777-200型機撃墜事件で、一部に同航空が選んだ飛行ルートに問題ありとする議論がウクライナの反政府組織、背後に控えるロシアから責任回避の格好の理由として流れている。ドネツク州は双方がいがみ合う戦闘地域。避けるの筋といわんばかり。しかし、マレーシア航空はこうした批判に敢然と反論、同機は、欧州上空の高々度管制業務を統括する『ユーロコントロール』から発出された管制承認を遵守、高度10,000㍍も指定されたものだと、批判を受けるのはもってのほかと主張している。マレーシア航空機だけではない。撃墜事件直前迄、舞台となったウクライナ東部上空は多数の民間機が”空の十字路”の一つとし、頻繁に往来していた。 BBC放送は該当空域のフライトの実態について事故直前1週間で『アエロフロート機:86回、シンガポール航空機:75回、ウクライナ国際航空機:62回、ルフトハンザ航空:56回、マレーシア航空機:48回』と報じた。マレーシア航空機は少ない方だ。なぜこのルートが選択されるのか。旧ソ連崩壊で、民間機の飛行ルートに旧ソ連圏上空が相次いで開放されウクライナ上空経由は、欧州と南東アジアの『大圏ルート飛行』(目的地への最短コース)に最適。飛行時間短縮、燃料節約で益々増加傾向にあった。 ウクライナ情勢がクリミア半島併合後、急速に悪化する中で、米国機は同ルート使用、アゾフ海上空回避等、飛行規制をFAA(米連邦航空局)からNOTAMで知らされていた。『君子危うきに近寄らず』というロジックだろう。 しかし、国連の下部機関、ICAO(国際民間航空機関、本部モントリオール)、ユーロコントロール、ウクライナ管制当局は、飛行九度の下限を警告していたが、飛行禁止措置を発出していなかった。地対空ミサイルで民間旅客機が標的になるなどは全くの想定外だったからだ。 戦闘行動に無関係の第3国の航空機を狙う等言語道断だ。もし同ルートが危険極まりないなら、アエロフロート航空機が86回と最多の飛行をする事はあり得ないだろう。 ウクライナ東部を実行支配する親露派反政府組織が、ウクライ空軍の爆撃機接近と見誤って誤射したのか、最初から狙い撃ちしたのか、事件の真相に迫る上で、事故現場の保存、現地で国際調査団の早急な調査開始、ブラックボックスの回収ーを急ぐ必要がある。ロシアは国際政治の責任ある大国として、協力を惜しんではならない。 SGPhotos [(ICAO)出番が近いICAO、レイモンド・ベンジャミン事務総長]