ウクライナ空軍機、謎の"雁行飛行"。露国防省反撃で始った"謀略情報戦"(No9.MH17便撃墜事件)


2014年7月22日(JST.09:50)                             John Bosnitch マレーシア航空、B777-200型機撃墜事件で、露国防省が具体的反証を挙げ、事件当日のウクライナ軍行動に”疑惑”ありと反撃を始めた。1983年8月、大韓航空、B747型機撃墜事件で経験したクレムリン得意の”謀略情報戦”を彷彿させる。国際世論が、プーチン政権の道義的責任をエスカレートさせる中で、露包囲網突破の非常手段なのか? 露国防省は、7月20日、第一作戦本部長のアンドレイ・カルトポロフ(Andrei Kartopolov)中将が作戦室で異例の記者会見を行った。同将軍は、マレーシア航空、B777型機撃墜事件はウクライナ軍との関連を調査する事が”真相解明の鍵”だと、未公表だった新事実を明らかにした。 要旨は2項目。冒頭に指摘したのは事件発生当時、マレーシア航空の飛行ルートをウクライナ空軍のスホーイSu25対地攻撃機が謎の”雁行飛行”中だった点。撃墜事件発生地点近くにウクライナ軍の地対空ミサイル『ブーク』部隊が作戦行動中で、事件直後、急ぎ現場を離脱した事実。対プーチン政権非難、責任論浮上は全くの”濡れ衣”言いたげ。 露国防省が挙げた撃墜事件とウクライナ軍の関連性に疑惑を提する反論を公式発表からみてみる。 それによると、マレーシア航空、B777型機がウクライナ東部を飛行中、ウクライナ空軍のスホーイSu25対地攻撃機が”雁行飛行”。両機の間隔は3~5㌔だったという。同型機は空対空ミサイルを装備、射程は5~10㌔。飛行可能な到達高度は10㌔とマレーシア機とほぼ同一と匂わせた。 露側はロストフの対弾道ミサイル警戒レーダーで監視していた模様で、ビデオ映像の存在を示唆した。あわせて、当時、米国の偵察衛星がウクライナ紛争地域上空で、監視中で、米側に偵察衛星画像の公開を求めた。 つまり、露国防省当局はウクライナ空軍のスホーイSu25対地攻撃機が発射した空対空ミサイルが撃墜事件の”犯人”の可能性から、排除出来ぬとの論拠だ。 shoygu-new_170 [(DOD,RF)プーチン大統領の腹心で”切れ者”との評価があるセルゲイ・ショイグ国防相] 8_1 [(Sukhoi JSC)スホーイSu25対地攻撃機の同型機] suuuu.si [(DOD RF)RTが報じたマレーシア機と”雁行飛行”するウクライナ空軍のSu25対地攻撃機の飛行プロファイル] ウクライナ東部を実効支配する親露反政府組織が撃墜事件の”首謀者”と欧米がほぼ断定、地対空ミサイルはロシアが供与した兵器とされる点にも激しく噛みつき、多数の衛星写真を証拠に問題の地対空ミサイル『ブーク』を撃墜現場周辺で展開、行動中だったのはウクライ政府軍だったと反撃した。具体的証拠として、衛星写真、電波傍受で『Kupol-M1 9S18』捜索追尾レーダーがルガンスクの北東8㌔付近に所在。撃墜件直後は8基(3日前は5基だった)が作動中を確認しているという。同レーダーは地対空ミサイル『ブーク』の敵機、探知・追尾・誘導で常時、作戦行動を共にする。 何故に、事実関係が混沌としている中でマレーシア航空機撃墜事件の犯人を決めつけるのか、公明正大性に欠ける行為と反論。プーチン大統領が再三再四繰り返す、すべての関係者が参加する国際中立調査組織の立ち上げが問題解決の王道と主張した。 しかし、1983年の大韓航空B747型機ミサイル撃墜事件で、当時の旧ソ連軍参謀総長オガルコフ大将も似た手口で責任を回避しようとした。たまたま、事件当時、旧ソ連軍が新型弾道ミサイルをカムチャッカ半島クーラ試験場に向け、プレセック基地から発射実験との情報を米軍が入手。このため、アリューシャン列島の西方公海上で、米空軍の電子偵察機、RC135の『8の字飛行』の事実を暴露。大韓機の飛行ルートと交錯した事実を挙げ、責任逃れようとした過去がある。 当時のクレムリンの主人は『KGB(国家保安委員会)』出身のアンドロポフ書記長。KGB諜報部員と後身の『FSB(連邦保安局)』長官経験のあるプーチン大統領の得意技”謀略戦”が今回もアンドロポフ時代と二重写しに見えてしまう。