空自機の緊急発進回数さらに増加


-今年4~6月の自衛隊機の緊急発進は115回、2005年以降で最多-

作成:2013-07-12 松尾芳郎

防衛省統合幕僚監部は7月10日「2013年4~6月の航空緊急発進(スクランブル/scramble)は115回となり前年同期比で40%増えた」と発表した。この時期としては2005年以降で最多となる。如何に我が国周辺の緊張が高まってきているかが判る。
国別でみると対中国機が69回、前年同期は15回だったので4倍以上に増加した。対ロシア機は31回で、昨年同期の62回から半減した。残りは対北朝鮮機の9回、その他となっている。
空自の配備方面別に見ると、沖縄那覇基地の南西航空混成団からの発進が最も多くて75回(前年同期は19回)、続いて北部航空方面隊が20回(同39回)、中部航空方面隊が14回(同12回)等となっている。
尖閣諸島を巡る中国の強引な領有権主張、北朝鮮の核実験と弾道ミサイル実験、がこの数字に如実に表れている。また我国に接近姿勢を見せるロシア・プーチン政権も、依然として電子偵察機を使い我国周辺で活発な動きをしている。
中国はこの10年間国防費を毎年10%以上ずつ増やし、2012年には公表で8.5兆円、推定値では14兆円以上とした。これは我国防衛費のほぼ3倍に相当する。本サイト2012-04-11「近代的大空軍建設を目指す中国」にあるように、ロシア製スーホイSu-27を176機購入、ライセンス生産でJ-11として100機以上を生産、さらにこれを改良したJ-11Bを120機以上配備している。また2010年末に初飛行したステルス戦闘機J-20は実戦配備に向け着々開発が進んでいる。このようにして中国空軍は、他機種を含め2020年までには総数1,000機を超える大空軍に成長すると見られる。
これに対する我国の防空体制はどうか?現状では、後述のように質的にはF-15およびF-2の近代化改修で優位を保つことができても、数的劣勢は否定できない。予想される“飽和攻撃”つまり「圧倒的な数で攻撃を加え、損害を顧みず最後の勝利を得ようと云う戦術」に対抗するには質の優位は勿論だが、同時に量を揃えることも重要であることを忘れてはなるまい。

蛇足:
昨日11日朝のNHKニュースが統幕発表を紹介していたがその内容は;
「今年の中国機に対する緊急発進は減少中」
と云う趣旨だった。
おかしいなと思い朝刊を見たら正反対の記事、統合幕僚監部発表サイトで確認したら上記の通り。NHKの報道姿勢はかねてから“反原発”、”日中友好”、そして“反アベノミックス”に偏向していると見られているが、このニュースは事実を伝えず”日中友好”に肩入れする「偏向報道」の一例であった。

図:(Wikipedia/航空自衛隊)航空方面隊とは担当空域の防空を担う戦闘航空部隊で、規模の小さいものを航空混成団と呼ぶ。それぞれの戦闘航空団は2個飛行隊、高射部隊、航空警戒管制部隊、その他の直轄部隊で構成する。
北部航空方面隊、中部航空方面隊、西武航空方面隊の3つがある。那覇を基地とする南西航空混成団は戦闘航空団として1個飛行隊のみ、その他は方面隊と同じ構成である。

図:(航空自衛隊)空自の主力戦闘機で、8個飛行隊、飛行教導隊等に約200機が配備されている。初飛行は1972年、すでに40年経過しているが近年J-MSIPと呼ぶ近代化改修が進行中で、トップクラスの実力を持つ戦闘機。全備重量約25㌧、最大速度マッハ2.5、航続距離4,600km、戦闘行動半径は1,900kmに達する。F-15は三菱重工を主契約とし、多くの日本企業が参加して国産化している。エンジンはP&W製を国産化したF101-IHI-100あるいは同-IHI-220E推力25,000lbs(11㌧)を2基搭載。
兵装はM-61A 20mmバルカン砲、中距離空対空ミサイルとしてAIM-120または国産の99式誘導弾AAM-4B、さらに短距離赤外線ミサイルとしてAIM-9あるいは国産04式誘導弾AAM-5を搭載する。なかでも99式誘導弾AAM-4Bは弾頭にAESAレーダーを世界に先駆けて搭載、射程を大幅に延長した最新鋭の空対空ミサイルである。
配備は;千歳/第2航空団第201飛行隊第203飛行隊、百里/第7航空団第305飛行隊、浜松/第一術科学校、小松/第6航空団第303飛行隊第306飛行隊、岐阜/飛行開発実験団、築城/第8航空団第304飛行隊、新田原/飛行教導隊第23飛行隊、那覇/第83航空隊第204飛行隊、

図:(航空自衛隊)F-2は米国のF-16を基に日米共同で開発した戦闘攻撃機。現在94機が配備されている。対艦、対空、対地の攻撃任務をこなす多目的戦闘機として開発された。
初飛行は1994年、2004年以降能力向上改修が進められ、GPS誘導爆弾JDAMの搭載能力の付与、F-15改修で述べた99式中距離対空誘導弾AAM-4Bの運用能力の付与、そして昨年からは搭載するAESAレーダー三菱電機製J/APG-1を探知距離を大きく伸ばした新型のJ/APG-2に換装する改修が進んでいる。これでF-2は米海軍の主力機F/A-18E/Fスーパーホーネットに匹敵する高性能機に変身中である。
全備重量22㌧、エンジンはIHI/GE F110-IHI-129推力13㌧を1基、最大速度マッハ2.0、航続距離(フェリー時)約4,000km、
兵装はJM61A1 20mmバルカン砲、F-15Jと同じ短距離対空誘導弾および中距離対空誘導弾、対艦用に80式対艦誘導弾(ASM-1)、同93式(ASM-2)、JDAM 500lb誘導爆弾等を搭載する。
F-2の配備は;三沢/第3航空団第3飛行隊第8飛行隊、築城第8航空団第6飛行隊、松島/第4航空団第21飛行隊、岐阜/飛行開発実験団、浜松/第1術科学校。
-以上-