小型無人機の民間利用が広まる


–ピザ宅配、警察の監視活動、山岳ハイカーの捜索、農薬散布、など–

                                                                                   2013-08-22  松尾芳郎

2013-08-28  Revised

 

1. ピザ宅配のテスト

 

http://youtu.be/ZDXuGQRpvs4

 

pizza配達

図:(Domino’s UK)英国ドミノピザでは、小型無人ヘリを使ってピザ宅配のテストを行なった。

 

英国(UK)ドミノピザ(DPZ)が、去る2013年6月4日に小型無人ヘリを使ってピザの宅配テストをした事は、CNNなどを通じ紹介されたのでご存知の方も多いと思う。これはUKドミノピザが宣伝会社と協力してエアロサイト(Arosight or Aerial Technology International)社が作るオクトコプターHolo 8 (5,200㌦)を使って、宣伝のために行なったテスト。上記YouTube動画は発表後4日間で120万回以上のアクセスがあったと云う。オクトコプターは本来写真撮影の目的で開発された無人ヘリで、ローター6~8個と電子制御装置、それにカメラやピザを保持するフックで構成されている。

似たようなアイデアが米国でもあり、Burrito Bomber 製無人機を使ってタコスの配達をしようと云う構想があるが、こちらは今のところFAAの法律で禁止されている。

 

2. カナダ警察が小型無人機を試用中、送電線網監視にも適用可能

 

エイロン無人ヘリ

図:(Aeryon Labs)

 

カナダのウオータールー(Waterloo, Ontario)にあるエイロン研究所(Aeryon Labs)が開発したクオードローター(quadrotors)「スカウト(Scout)」は、オンタリオ州ハルトン(Halton)地区警察が試験運用を始めている。

エイロン研究所によると「スカウト」は、航続距離3km、時速50km、80km/hrの強風を含む悪天候下でも飛行できる。重量は僅か1kg、分解してケースに入れて持運びが出来、簡単に組立てられる。光学ズームデジタルカメラあるいは夜間用に赤外線カメラを搭載し、ジャイロで目標をロックオンして追跡が可能。操作はタッチスクリーン型タブレット端末で簡単にできる。「スカウト」はカメラ以外に、コンピュータ、GPS、ジャイロ、などのセンサーを搭載している。

ニューメキシコ州立大学(NMSU=New Mexico State University)の電力研究所(Electric Power Research Institute)では、「スカウト」を使って高圧送電線網の監視、検査を行う研究を進めている。これまではハリケーン後の送電網の被害状況を有人機や人手を使って検査していたが、「スカウト」を使うことで遥かに低コスト、高精度の検査が可能となると云う。我国の電力会社でも検討したら良いと思う。

 

3. 遭難した山岳ハイカーの捜索救助テスト

 

aerosee

図;(UCLan)”AeroSee”小型オクトコプター(価格は15,000ポンド)。アフガン戦線でタリバン捜索用に開発された無人機を転用したもの。

 

山岳ハイカーの捜索、救助に無人機を使う研究に取組んでいるイギリスのセントラル・ランカシア大学(UCLan)のグループは2013年7月25日に試験を行なった。この試験は、地元の山岳救助チーム(Patterdale Mountain Rescue Team)等と協力しE-migs社製のオクトコプターを使うもので、”AeroSee”プロジェクトと呼ぶ。

試験は、無人機を20分間飛ばし遭難者がいると思われる区域10平方kmを捜索する、と云う想定で実施したが、開始して69秒後に行方不明のハイカーを発見した。”AeroSee”からの画像は”AeroSee”ウエブに登録接続している端末にリレーされ、遭難者の状況を知る。画像は目視で確認するだけでなく、GPSデータで位置が判るので、救援活動を無駄なく行なえる。送られて来た画像は20分間の飛行で2,000枚以上に達した。

最近の無人機技術の進歩のお陰で、このような高度な救援活動が悪天候下でも素早く低コストで行なえるようになった。無人機”AeroSee”は、軍事作戦中に誤って民間人を殺傷するとして、メデイアから非難の声が多いが、民間転用でこのような利用法もあることを評価すべきだと思う。

“AeroSee”プロジェクトはイギリスに限定されることなく、我国を含む世界中の山岳救助チームが利用できる日が早く到来することを期待したい。

 

4. 農薬散布に活躍するヤマハ無人ヘリ

 

 

ヤマハ

図:(ヤマハ)農薬散布中のヤマハRMAX Type IIG無人ヘリ、軽トラックの荷台に載せられる。姿勢、方位、GPSセンサーを搭載、視程外での自律飛行も行なえる。エンジンは自社開発の246cc水冷2サイクル水平対向型、ローター径は3.13m、ローターを含む全長3,63m、積載量16kg。

 

ヤマハ発動機では1990年頃から無人ヘリコプターを手掛け、1997年にはRMAX型、2001年からは自律航行型RMAX、そして2003年には改良型のRMAX Type IIG型を出し、これまでに国内で総計2,500機ほど販売している。そして今年10月には第4世代の無人ヘリが発表される予定。

これまでは韓国にしか輸出していなかったが、今後はアメリカとオーストラリアへ本格的に輸出を始めると云う。

カリフォルニア大学デイビス(Davis)校では、RMAX Type IIGを使ってワインの産地、ナパバレー(Napa Valley)のぶどう畑に除草剤や殺虫剤を散布する試験を行っている。ローターからの下向きの風で葉の裏側にも薬剤が散布され、高い評価を受けている。ナパバレーは起伏に富んだ地形でぶどう畑の直ぐ近くに人家があり、小型ヘリによるきめ細かい薬剤散布作業に適している。

ヤマハ発動機は、2001年以降5年間に中国に自律飛行型RMAXを合計9機輸出したが、輸出先の北京BVE社はこれを軍用無人ヘリに改造したと発表した。このためヤマハは2006年に関係機関から無許可輸出の疑いで調査を受けたことがある。この事件を踏まえてヤマハでは今後の輸出は“目の届くところに限定”するとしている。

–以上−