ーショイグ国防相、後続の実験中止指示。欠陥問題再浮上?ー
2013-09-07、19:00 ジョン・ボスニッチ(ベオグラード)
2013-09-08 改訂
図:(Wikipedia) 露海軍の次世代SLBMであるRSM-56 「ブラバ(Blava)」、爆発力1.5㌔㌧の核弾頭6発を搭載し射程は約10,000km、迎撃ミサイルを回避するため比較的低空を飛翔し目標に向かうので準弾道ミサイルとも呼ぶ。
図:「ブラバ」発射試験に参加した次世代型原子力弾道ミサイル潜水艦(SSBN)「アレクサンドル・ネブスキー(Alexander Nevskiy)」、同型の「ボレイ(Borei)」級の3番艦。水中排水量24,000㌧、長さ170mの巨大艦で水中速力28kt、「ブラバ」ミサイルを16基搭載する。
ロシア海軍が次世代の潜水艦発射弾道ミサイルとして実戦配備を急いでいた『ブラバ』の発射実験に失敗した。ノーボスチ通信が国防省スポークスマンの発表として伝えた。シリア情勢が緊迫するタイミングで、発射成功であれば米国への”軍事力”プレッシャーとなった。セルゲイ・ショイグ国防相は海軍に後続の実験中止を命令。海軍総司令官、ビクトル・チルコフ大将がトップの委員会が失敗の原因、究明に当たる。『ブラバ』開発段階で実験失敗が相次ぎ、設計を含む欠陥が指摘されていた。
SLBM『ブラバ』の発射実験が失敗したのは、9月5日。この日、ロシア北極圏、白海でテストに参画した次世代SLBM潜水艦『アレクサンドル・ネフスキー』(排水量、24,000トン)がカムチャッカ半島クーラ実験場を目標に発射の任務を担当した。しかし、ミサイルは発射わずか2分後、システムの一部で故障が起き、実験は失敗した。失敗は複数回との未確認情報もある。事態を重視したショイグ国防相は、この後、予定した合計、5回の同ミサイル発射実験の中止命令を出した。
次世代SLBM『ブラバ』は3段式・水中発射長距離弾道弾。1~2段が固体燃料。3段目が液体燃料のハイブリッド設計。ライバルの米海軍SLBM『トライデントⅢ』が3段とも固体燃料推進方式と大きな相違だ。弾頭部には6~10発の核弾頭を装填。各弾頭は最終段階で高度、方向を自在に変える個別誘導。欧米のミサイル防衛網など問題にしないという。最大射程距離は8,000キロ以上。オホーツク海、ロシア北極圏の海中から米本土を直接攻撃目標に出来る。ロシア海軍は次世代SLBM誕生に合わせ搭載する新型SLBM潜水艦『ボーレイ級』8隻の建造計画を進めている。今回の実験に参加した『アレクサンドル・ネフスキー』の他、『ユーリー・ドルゴルキー(Yury Dolgoruky)』など3隻が竣工。最終的には8隻体制で米海軍『トライデント原潜』部隊に対抗する戦略だ。次世代SLBM『ブラバ』はモスクワ熱力学研究所が開発主体となり10年以上、実用化に努めてきた。しかし開発段階で失敗が絶えず成功率は5~6割というが実際のデータは更に悪いらしい。主任設計技師の首をすげ替える荒療治で問題は解決するかに見えたが、今回の事態で構造欠陥問題が再浮上しそうだ。
次世代SLBM『ブラバ』近く実戦配備が決まっており、米国のシリア空爆が時間の問題で、プーチン政権にとって『ブラバ』発射失敗は対米戦略で痛手に違いない。
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