北京空港、定時出発率で世界主要空港中の最下位


—世界的なフライトデータ調査機関「フライトスタッツ」が発表—

 

2013-09-08  松尾芳郎

北京空港

図:(Wikipedia)北京空港の全景、長大なターミナルビル(茶色)を挟んで2本の併行滑走路(R/W 18R/36Lおよび18L/36R)、右端には横風用R/W (01/19)がある。1999年に日本の援助(ODA)で既存空港を大拡張した。年間乗降旅客数は8,200万人で世界2位。

 

米国の世界的なフライトデータ調査機関「フライトスタッツ(FlightStats)」は、定期的に世界の空港別、エアライン別などの定時出発率や定時到着率などを公表している。同社は先月2013年前半の世界主要空港35空港の定時出発率を発表した。そのなかで中国の北京国際空港は定刻15分以内に出発できた定時出発率は僅か18%、主要空港中35位の最下位だった。そして34位には上海浦東空港の29%がランクされている。

これについて中国の国家通信機関の一つ中国新聞[China News Service]は、空港遅延の最大の理由は一部で云われている空軍の横暴のためではないと否定し、民間航空には充分な空域が充当済みだ、と説明している。そして主な原因はエアラインの定時制確保に対する意欲不足、としている。中国新聞は新華通信社と並ぶ大手通信機関。

最下位と云う汚名を着た北京、上海の両空港は、中国最大の都市に隣接し最も混雑する空域にあることを勘案しなければならない。しかし中国民間航空局(CAAC)によると、中国全体の空港の平均でも、2012年の定時出発率は76%に止まっている。

社会の安定維持に懸命な独裁政権の施策に不満を抱く民衆が、空港当局やエアラインスタッフと衝突し、謝罪や補償を要求して出発遅れにつながっていることも、しばしば報道されている通りで、原因となる。

中国新聞は、出発遅延の原因の42%はエアラインの管理体制の不備にあり、航空交通量の増大によるものが26%、悪天候が21%、そして空軍の演習などの活動は7%、と分析している。そして何よりも、過去5年間の航空交通量は、北京で29%、上海で36%増えているのが対処を難しくしている原因だ、としている。

交通量増大に対処するためCAACは、今年7月から新ルールの運用を始めた。新ルールでは、国内主要8空港から出発するフライトは到着予定空港の許可や指示無しで出発でき、悪天候や空軍の要求の場合を除き、到着空港はそれを優先的に着陸させるべし、と云うもの。地方空港は往々にして地元エアラインを優遇して取り扱っていたが、これが出来なくなる。

しかし諸外国の航空関係者の間では、これだけでは不十分とする意見が多い。航空管制上の航空機同士の間隔(aircraft separation)が大きすぎること、飛行空域が不当に制限され全体の34%しか使えないこと、空軍への割当てが25%と多すぎること(他は殆ど使用されない空域)、これ等が解決されないと遅延解消には繋がらないだろう、としている。

これでは、9月5日掲載の「中国民間航空機市場、向う20年間で3倍に成長」にある予測の実現にはブレーキが掛かりそうだ。

今年前半の世界35主要空港の定時出発率の上位には、羽田91%、ミュンヘン86%、成田84%、がトップ3にランクされていることも付記しておく。

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