待った無し、福島原発事故収束での国の全面支援


『待った無し、福島原発事故収束での国の全面支援』

ー東京五輪成功の鍵。国際公約からもう逃げられぬー

2013-09-08  やぶにらみ左膳

東電福島第一原発を巡る汚染水問題は日増しに深刻化する。後に控える廃炉作業はこの先、何十年続くか判らない。除染・廃炉に要する費用は全体で少なくとも10兆円は下らぬと見積もられる。事故発生から2年半。安倍政権は重い腰を上げ、目下最大の課題、汚染水対策で、国が前面に乗り出すと内外に公約した。遅まきながら、470億円の国費を投入、汚染水対策で東電任せの”逃げの姿勢”からの転換だ。

安倍首相は、2020年五輪の東京開催が決まった、8日のIOC総会で、福島第一原発の汚染水など安全監理について『自分が保証する』と大見得を切った。福島原発事故の安全監理はこれで国際公約化した訳だ。経営状況の疲弊が著しい東電に替わり、日本政府が本格的に前面に姿を現す、新情勢となったのである。

『東電はもう”倒産”するほか無い』ー汚染水問題が加速度的に悪化するにつれて、原発関係者の間では国家資金の注入を受け事実上、”国有化同然”の東電の行方に一段と悲観論が溢れた。倍増したLNG(液化天然ガス)、原油輸入代金の支払いで金庫は空っぽ。頼みの綱は新潟県・柏崎刈羽原発の一刻も早い再稼働。それなくして高騰する燃料費を押さえ込む手立ては残されていない。しかし地元、新潟県の泉田知事の反対姿勢は堅い。『福島事故の原因究明が出来ていない。再稼働には安全上、問題がある』。正論だとマスコミや県民のバックアップは強い。汚染水対策の見通しが立たない以上、原発関係者は悲観的になる一方だった。担当閣僚と泉田知事との交渉なぞセット出来る訳が無く、東電の原発再稼働問題は一層厳しくなってきた。

メルトダウンで放射能汚染された原子炉建屋には1日あたり、400トンの地下水が大量流入する。つまり汚染水はこのままだと際限なく増えることになる。今回、国費で建設が決定したのは凍土を使う遮水壁だ。建屋周辺の土壌を凍らせて固め、地下水の流入を断ち切るメカニズムである。政府は2014年度中の稼働を目指すが、凍土方式で長さ1,400メートルの壁が建設されるのは世界でも例が無い。それだけ技術的に不透明な部分がある、また、高濃度汚染水から放射性物質を取り除く新型浄化処理設備の開発でも国家資金投入が決まった。既に実用化した同種装置(ALPS)は計画から1年遅れで近く動き出す有様で果たして、新システムが目論見通り実用化出来るか否か予断は許さない。。困ったことに、大量の汚染水漏れの元凶だった地上の汚染水タンク関連の国費支出の見通しは立っていない。

福島原発事故の後処理の基本スキームは民主党政権時代の産物だ。国の支援は被害者への賠償に限定。除染・廃炉対策がすっぽり抜け落ち東電まかせとなっていた。賠償は東電へ5兆円を上限に貸し出し、数十年かけての返済ーの方式。ところが4兆円が使われ、限界は近い。事故当時、国費の投入を避けたい財務省と倒産で貸付金の返済カットを恐れる三井住友等の銀行団が手を組み作り上げたガラス細工の似た仕組みは当初から、先行きが危ぶまれた。今や『この仕組みは破綻する』との関係者の予想が現実のものとなっている。

そこで、東電の倒産を避けるため、経済産業省、東電の資金捻出画策が水面下で進行中だ。福島第1、第2や柏崎刈羽の各原発を日本原子力発電へ売却する案。更には全国の原発を電力会社から切り離し、国営の日本原子力発電機構を創設するとの考え。原発はかっての”金の成る木”から、3・11を境に不良債権化してしまった。受け皿となる日本原電も活断層問題で敦賀原発が廃炉の運命にあり、茨城県東海原発の再稼働が困難との見方もあって、全国の原発の経営一体化は触手をそそられる。福島原発廃炉専門機能も取り込めば良い。

いずれにしろ、2020年の東京五輪開催決定で、安倍政権は福島原発の安全管理という十字架から逃られなくなった。国際公約を世界に宣言した以上、福島原発事故収束は急がねばならぬ。未だに、未完成の成田空港問題の根本原因は『土地買収費を大蔵官僚がケチったせい』と元霞ヶ関高官が述懐する。国家の運命がかかるケースで、官邸が予算を握る財務官僚の算盤に引きずり回されてはならない。『財務官僚栄えて、国家、国民が滅びる』なぞあってはならないことだ。