どこへ行くボーイング・ロングビーチ工場。米空軍向けC-17型機、生産終了


ー米議会、日本に同型機20機購入要請の動き。待ち受ける地元経済のダメージー

2013-09-13  小河正義

ボーイング社は9月12日、米空軍向け大型輸送機、C-17『グローブマスターⅢ』の最終号機を引き渡したと発表した。同型機の製造を担当した南カリフォルニア・ロングビーチ工場の生産ラインは海外からの受注残があり2014年迄、生産活動は継続する。同社はC-17型機の優れた短距離発着性能と60トンの戦略輸送能力にかなうライバル機が存在しないため、原油マネーで潤う中東市場等で改めてセールス攻勢をかける。米議会内には、日米同盟進化の具体的シンボルとして航空自衛隊へ20機程度の導入を打診する動きも出てきた。生産ラインの閉鎖となれば、4,000人の直接雇用が失われ、関連企業を含めると全米44州、3万人強の労働者が職場を失いかねない。ポストC-17問題は今後ワシントンでも政治問題化は必至だ。

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[米空軍の主力輸送機、C-17"グローブマスターⅢ"。写真提供:ボーイング]

『次に待ち受ける事態はなんだ!』ーC-17最終号機が米空軍の手に渡った9月12日、ロングビーチの地元メディアや、有力紙ロサンゼルス・タイムズ等が同型機の生産ライン継続の行方に悲観的な見通しを報じだした。ボーイング社は遅かれは早かれロングビーチ工場の将来の姿と約4,000人の授業員の雇用について公式発表をせざるをえないと見ている。C-17型機は米空軍向けが223機で今回すべて納入が完了。海外の受注は英国、豪州、カナダ、インド、カタール、UAE(アラブ首長国連合)、NATO合同平和維持輸送組織から34機の注文が寄せられた。このうち14機の生産が残っているものロングビーチ工場は来年後半で主要な役目を終える運命だ。。しかしその先、同工場の機体最終生産ラインが遺るのか、閉鎖に追い込まれるかは全く不透明だ。

上部組織のボーイング・ディフェンス、スペース&セキュリティ(本社、ミズリー州セントルイス)は中東の産油国の潤沢なオイル・マネーに狙いを定め、新たな顧客獲得に懸命だ。『反応は悪くない』との情報もあるが、航空機製造では部品調達にリード・タイムが欠かせず生産活動継続決断に残された時間は少ない。ボーイング民間航空機部門がシアトルに集中していた、民間航空機の技術部門を南カリフォルニアを含め全米3地区に再配分する計画を打ち出した。受け皿作りの一環と見る向きもある。

ロッキード・マーチン、ゼネラル・ダイナミックスなどそうそうたる航空機メーカがカリフォルニア州の機体工場をジョージア、テキサス等へ移し航空産業のメッカ、カリフォルニア州の姿はすっかり色あせた。唯一の機体工場が旧ダグラス航空機の本拠、ロングビーチ工場だった。日航が導入したダグラスDC4、DC6B、DC7C、マクダネルの傘下に入った後のDC-10、MD-11はここらから搬出された。日本の民間航空界とは数十年近いつながりを持つゆかりの地だ。

地元紙によると、ロングビーチ工場の直接雇用者数は現在、4,000人。1990年、同工場を中心にC-17型機、MD-11等の生産で一帯の航空関連産業は13万人に上る航空関連労働者を抱えていた。それが2010年には3万9千人に縮小、万一、ロングビーチ工場の機体生産ラインにピリオドが打たれると、地元では失業問題、再雇用職場確保が待った無しの政治問題となる。

米空軍向けのC-17型機も途中、新規発注取りやめの計画が空軍より出されたが、米議会は共和、民主両党がタッグを組み予算付けしてきた経緯がある。航空機産業は米国経済の牽引車で外貨稼ぎに欠かせない。経済のハイテク化で航空宇宙産業の果たす使命は大だ。ホワイトハウスや米議会がC-17型機の生産ライン継続か否かで下す今後の決断に目が離せない。

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