ー射程5,000キロで中国全土の標的をカバー。核抑止力でインド、中国に対等の地位ー
2013-09-16 ジョン・ボスニッチ(ベオグラード)
図:(Wikipedia)インド開発のICBM「アグニ5(Agni V)」。計1㌧の核弾頭を搭載し射程5,000km、固体燃料3段式で全長17m。トレーラー搭載型で機動性に勝れ、、準備は僅か5分で発射可能と云う。
インドが国産技術で開発した、ICBM『アグニ5(Agni Ⅴ)』の第2回目の発射実験に成功した。NDTV、ヒンドスタン・タイムズ等インドのメデイアが9月15日、一斉に報じた。予定した5,000キロのコースを飛翔し、実験は完全な成功だったという。同ミサイルは2015年迄に実戦配備につき、中国への核抑止力として北京への睨みを利かせる。インドは核弾頭の小型化も果たしており、今回ICBMの性能を実証したことで米、ロ、英、仏、中に続く完全な核・ICBMクラブ入りを達成した。中国の国営、新華社通信はインドのICBM実験成功の事実報道だけにとどめた。
インドのメディアによると、インド国産のICBM『アグニ5(Agni Ⅴ)=サンスクリット語で”火の鳥”の意)』は開発に当たった国防技術開発研究組織(DRDO)の手で9月15日、実行された。発射基地はインド東部、カルカッタ南西のベンガル湾に面したオディシャ海岸沖のウィーラー島、ミサイル発射実験場。第4発射施設から同日午前8時50分(現地時間)、打ち上げられ弾頭は予定した目標水域に着弾したという。飛行パラメーターや、レーダー追尾記録の初期解析で発射実験は完全に成功を収めたという。
『アグニ5』、ICBMは昨年4月、初の実験に成功、今回で2回連続となる。実戦配備に向け過去1年半近く弾頭部の改良等、性能を磨いたわけで、2015年が目標の部隊への配備は実現可能となった。それを裏付けるようにインド・メディアは開発には”ミサイル・ウーマン”の異名を持つ有能な女性科学者の存在を紹介するなど成功賞賛の報道に溢れている。インドは米、露、英、仏、中国に続く核・ICBMクラブのメンバーになったと伝える有力紙も少なくない。
欧州の軍事専門家によると、『アグニ5』はインドが自国のテクノロジーで開発した国産ICBM。長さ17メートル、直径2メートルの三段式ロケットで推進燃料はすべて固体方式。弾頭部のペイロードは1トン。射程は5,000キロ。敵の攻撃警報を入手後、わずか5分で発射が可能で、常時トレーラーに積載し運搬が可能。つまり機動性にすぐれ、固定式発射装置に比べ、敵の目標になりにくい高い”生存性”があるという。
インド国防省は『アグニ5』を更に進化させ、最終的には弾頭部には個別誘導が可能な10発の核弾頭の積載を計画中という。射程5,000キロだと中国全土が攻撃可能となり、これまでの北京の対印核優位の構造が覆される。ニューデリーは本格的な対中国核抑止力を手にすることになる。ヒマラヤ山脈麓で中国、インドは長年国境紛争を続けている。こうした国境紛争の行方も含め南西アジアのゲオポリテックスが大きく変化しそうだ。
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