—小野寺防衛相、友好国(同盟国を含む)の信頼を毀損する行為は望ましくないー
2013-11-05 政治評論家 伊達国重
同盟国首脳への盗聴疑惑で批判を浴びる『NSA(米国家安全保障局)』が日本も標的にしていた事が明らかになった。ニューヨーク・タイムズ(11月2日付き電子版)報道を引用し、NHKなど日本の有力メディアが11月5日、一斉に砲口を開いた。小野寺防衛相はこの問題で同日の記者会見で、『同盟国間を含めて様々な友好国との信頼を傷つける行為は好ましくない』と応えるに留まった。日米同盟強化の安倍政権の路線が、この問題の紛糾で妨げになってはならないとの政治的配慮からだろう。独政府は情報機関の幹部がワシントンに乗り込み、双方でスパイ活動禁止協定締結で手を打ったという。日本もそれ位の決断があってもいいのでは。そのかわり防衛機密の保秘体制の厳格化、スパイ防止法制定を急ぐ必要がある。
ニューヨーク・タイムズは『NSAの作戦リストで米経済の優位性確保で日本を情報収集対象国にした』と報じ、『職員を日本にも派遣、米軍基地、駐日大使館を拠点に盗聴活動に当たった』と具体的に指摘した。収集対象は技術革新分野、経済情報、外交政策。NHKは『米政策当局者が日本国内に通信傍受施設を運営している』と独自の取材結果で報道の信憑性を補足した。
ニューヨーク・のタイムズの報道根拠はロシアへ亡命したNSA関連機関職員、スノーデン氏が暴露した2007年の内部文書。
NSAの欧州の同盟国首脳の携帯電話盗聴疑惑等、底なし沼の状況だ。しかし欧米の主要国、情報機関が日夜、盗聴やヒューミントの手段で水面下の諜報活動に狂奔しているのは国際政治の常識。
NSAについてはジェームス・バンフォード博士が『すべては傍受されている』(邦訳タイトル)、『パズルパレス』(同)で10年以上前から警鐘を鳴らしている。情報機関がしっかりしていれば、とっくの昔に対策を講じ、何食わぬかをで相手を牽制出来たはず。
情報機関の掟はギブ・アンド・テイク。日本には相手側から引き出すに足る機密情報がなさ過ぎる。
安倍内閣は日本版『NSC(国家安全保障会議)』創設で防衛機密等の守秘義務徹底に着手する。当然の事だ。米国NSAの盗聴疑惑問題は日本のノー天気な体質を見直すまたとない機会を与えてくれた。米国に批判の矢が向く一方で露、中の諜報機関が日本国内でこれ迄以上に活動強化しているのに警戒すべきだ。セックス・ピオナージ作戦(女性を使った罠)等を含め手口は巧妙だ。マスコミにもネットワークを拡大、出番に備えた準備に余念がない。観光立国も重要だが、国家の安全保障体制を覆す甘い施策は手に染めてはならない。
[(NSA)CIAもかなわない米国の超スパイ機関、NSA(国家安全保障局)]