「JAL A350発注」に対する米国の厳しい意見


−エビエーションウイーク誌投書欄に掲載された読者の見方−

 

2013-11-07  松尾芳郎

 

図:(Aviation Week)エビエーションウイーク誌Oct. 14/28, 2013 Page 32-34掲載の記事”Wide Opening”、「(米国の独占に)風穴を開けられた」と云った意味か。投書欄にはこの写真が併せて掲載されている。

 

先に「JALのエアバスA350選択で業界に波紋」(2013-10-30)を本ブログに掲載したが、これには上図の記事も参照した。

エビエーションウイークの当該記事を読んだ限りでは、これ迄ボーイング独占が続いていた日本の市場が、JALのエアバスA350選定で崩れた、と悔しさを滲ませた意見として受け止められた。しかし、同誌の次号Oct. 28, 2013 Page 10の投書欄”Feedback”には、極めて厳しい読者のコメントが掲載されている。

これは、同誌が自身の考え方を直接ではなく、投書した読者の意見を借りて述べたものと受け取って良い。日本のマスコミでも婉曲に自己主張するために時々この手法を使う。

これは或る意味で、米国の日本に対する警告と受け取れる内容で、日本が真の意味での独立を目指すのであれば、特に国防の面で相応の負担をすべし、との主張だと読み取れる。

 

投書の大要は以下の通り。

 

タイトル「風穴を開けられた」のサブタイトルは「JALのA350注文でボーイングの日本市場が食破られた」となっている。

日本は、これまで70年間に亘って米国の軍事的な庇護の下で安全に過ごしてきた。しかしエアバス関係国、フランス、ドイツ、英国、スペイン、は日本の防衛には全く関与してこなかった。米国はGDP対比で4.9%、昨年で云えば6,430億㌦(64兆3,000億円)の国防費を支出している。これに対し日本の防衛費はGDPの1%(5兆円)弱に過ぎない(米国の僅か12分の1だ)。米国が自らの国防支出を可能にしてきたのは、ボーイング等の巨額な輸出を含む富の力によるところが大きい。

日本が米国の保護から脱し自立するのであれば、直ちに自身の国防支出を少なくともGDP対比4.9%(24兆円)に引き上げるべきだ。若しそれが出来なければエアバス関係国に国防支援を求めたらいい。

日本は、米国の傘から脱した場合、隣接する(多数の)核弾頭を保有するロシアと中国と云う横暴な国に対し自分の力で対処しなければならない。

数年前イスラエルのエルアル(El Al)航空は、ボーイング機の代替として新しいエアバス機の購入を検討した。しかし結局エルアル航空は更新用として再びボーイング機を選定した。これはイスラエルが周辺諸国からの脅威に対し、米国の手厚い支援を受けていることからもたらされた結論だ。

JAL/日本の場合も、これとそっくり同じ状況と認識すべきではなかろうか。日本政府はイスラエルと同じく、賢明な措置を採るべきと考える。

ボーイングは冒頭のサブタイトルに書かれたことでおとなしく引き下がるのではなく、断固反撃にでるべきだ。

ブレント・ホワイト(Brent White)

 

投書欄には冒頭の写真がこの記事と一緒に掲載されているが、これは掲載された中で最も重視すべき投書について同誌が行なうやり方である。

航空宇宙業界誌ナンバーワンのエビエーションウイーク誌は、この記事で自社の主張を明らかにしたと云って良い。記事の行間からは、JALのエアバス選択の非難と云うより、日本は防衛分担が少な過ぎる、これを早急に改めるべし、と伝わってくる。

我国の昨年度予算は、一般会計歳出93兆円の中で、社会保障費が約29兆円を占め、それに対し国防費は4.8兆円(GDP対比1%弱)、比率にして6:1だ。こんなに国防を疎んじる金の使い方をしている国は他には見当たらない。投書の中身は問題点を正しく指摘したものと云って良い。

IMFの2012年度の各国GDP(国内総生産)比較によると、1位米国1,570兆円、2位中国825兆円、3位日本598兆円の順になっている。

最後にストックホルム国際平和研究所が纏めた2010年度の各国軍事支出とGDP対比率を表にして示す。

 

国名

2010年軍事費:

現レート換算

GDP比

1

アメリカ

6,870億㌦

68.7兆円

4.7%

2

中国*

1,143億㌦

11.4兆円

2.2%

3

フランス

613億㌦

6.1兆円

2.5%

4

イギリス

574億㌦

5.7兆円

2.7%

5

ロシア

526億㌦

5.3兆円

4.3%

6

日本

514億㌦

5.1兆円**

1.0%

7

ドイツ

468億㌦

4.7兆円

1.4%

8

サウジアラビア

429億㌦

4.3兆円

11.2%

9

イタリア

382億㌦

3.8兆円

1.8%

10

インド

348億㌦

3.5兆円

2.8%

*  :中国の軍事費は不透明なところが多く、国際的基準で推定すると18兆円に達している。

*  *:日本は、2010年当時円vs$レートが82~90円だったのでこれを適用すると4.4兆円程度になる。

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[(AIRBUS)米国に衝撃を与えた日航のエアバスA350XWB型機大量導入]

 

以上