新中期防で調達予定の主な米国製品は(その2)


新中期防で調達予定の主な米国製品は(その2)

 

−2014~2018年の新中期防別表で、米国の関心は“水陸両用車”、“オスプレイ”と“F-35”に集まる–

 

2014-01-14  松尾芳郎

 

*  水陸両用車

水陸両用車

図2:(US Navy/Wikipedia)水陸両用車(AAV=Amphibious Assault Vehicle)。

写真は米海軍のAAV7A1水陸両用車が強襲揚陸艦「カーサージ(Kearsarge)」のウエルデッキに乗りこむ様子。AAV7A1は重量29㌧、長さ8m、幅3.3m、乗員3名プラス兵員25名を収容、400馬力ジーゼルエンジンを装備、時速は不整地で30km/hr、舗装道路で70km/hr、水上で13.2km/hrである。

 

水陸両用車AAV7A1は、United Defense社製でLVTP7として1971年から配備開始、改良が加えられ1985年から現在の名前に変わり米軍用の1,300輛とその他の国々用に600輛ほどが作られた。この内韓国は、ライセンス生産を含み160輛を所有している。

AAV7系列の水陸両用車は配備開始から40年が経過し、今では米本国では生産が終了、改良工事のみが続けられている。従って我国が発注すれば生産ラインの再開が必要になる。

新防衛計画大綱では、我国南西諸島が侵攻を受けた際の奪回のために「1個水陸機動団」を新設することになった。この機動団用として52輛の導入が決まった。

我国では「水陸両用車」と云っているが英語で[Amphibian Assault Vehicle]と書かれているので、正しくは「水陸両用強襲車」と云うべきだろう。米海兵隊では[Amtrac]と呼んでいる。

 

*  テイルトローター機

オスプレイ

図3:(okinawa.usmc.com )2013-06-14に実施された日米統合実働演習[ドーンブリッツ2013]で、海上自衛隊ヘリ空母「ひゅうが」に着艦する米海兵隊のMV-22オスプレイ(Osprey)。演習はサンデイエゴ(San Diego, Calif.)沖の太平洋で実施された。V-22オスプレイは、全長17.5m、ローター直径11.6m、翼幅14m、最大離陸重量27.4㌧。エンジンはロールスロイスT406/AE 1107C”リバテイ(Liberty)”ターボシャフト6150軸馬力を2基搭載。最大時速は509km、巡航速度は446km/hr、航続距離は1,600km、戦闘行動半径は720km。南西諸島防衛のためには有効な性能を備えている。

ひゅうがとV-22

図4:(okinawa.usmc.com )海自ヘリ空母「ひゅうが(艦番号81)」に着艦するMV-22オスプレイ。着艦後、甲板中央のエレベーターで艦内に収容するテストに成功、再び離艦して、運用に問題のないことを確かめた。

 

ベル・ボーイング(Bell Boeing)製V-22オスプレイは、多目的軍用テイルトローター機で、ヘリコプターと同じく垂直離発着ができ、ターボプロップ機と同じように高速飛行ができる。我が陸自/空自で使用中のCH-47ヘリコプターは合計で約70機、V-22とほぼ同じサイズだが、巡航速度は270km、航続距離は740km、戦闘行動半径は370km、といずれも離島作戦用としてはやや能力不十分。これに対し、V-22のそれは“図3”の説明のように遥かに高性能だ。

V-22は1981年に開発がスタート、1989年に初飛行、2007年から米海兵隊に、2009年から米空軍に、それぞれ配備が始まっている。これまでに160機が製造済み。海兵隊用MV-22の単価は6,930万㌦(約70億円)。

MV-22は乗員4名、24〜32名の兵員を収容でき、または内部に貨物9㌧を収納、あるいは外部に6.8㌧の貨物を吊り下げて輸送できる。

 

V-22オスプレイが「ひゅうが」に着艦、エレベーターで艦内に収容される場面のYouTubeを示す。

 http://youtu.be/9WYaQYR2Vv0

同じく2機のV-22が、「しもきた」と、続いて「ひゅうが」に着艦する場面のYouTubeを示す。

youtu.be/JCssyelDFeI.webloc

 

日本のV-22オスプレイ購入が実現すれば、2018年に生産終了を予定していた同社のフォートウオース(Fort Worth, TX)工場ではさらに生産が続くこととなり、大歓迎している。オスプレイは単価70億円にもなるため、これまで輸出先を探すのに苦労していた。イスラエルが5機購入を検討したが予算の制約で保留となった矢先だけに、ベル・ボーイングでは安堵している。

(その3に続く)