ー有力候補にボーイングB747-8、エアバスA380型の両機種浮上ー
2014年2月1日 マーク・デブリン(米フロリダ州マイアミ)
大統領、首相等の政府要人輸送に携わるVIP専用機の後継機種選定が米、日で同時進行中だ。先行する米国では米空軍が2年前から内部での検討作業に着手。日本でも2月3日、防衛省が機体メーカーに対し初の説明会実施を官報で告知した。両国とも現在使用中の機体は世界の空に君臨したボーイングB747型機。導入から20年以上が経ち、経済寿命が近ずいている。この先、継続使用するには時間の制約がある。後継機の導入時期は2020年代初頭が目途。そのタイミングに適合する有力候補機種として多発機ではB747型機の最新シリーズ-8型、エアバスのA380型機が浮上している。B777-X 、A350XWB両次世代双発機は省エネ性で時代の要請に合うが、『VIP機は多発機が望ましい』の米軍見解があると言われ、双発ハイテク機採用は飛行の安全性確保で後塵を拝するかも知れない。
[(Boeing)ジャンボ機の最新シリーズB747-8型機]
[(AIRBUS)ライバル機としてジャンボ機を追うエアバスA380型機]
米大統領専用機の後継機についてボーイング社は昨年秋、米空軍の要請に応じ関連の技術情報提供等、積極的な協力体制を組んでいる。白地にライトブルーのツートンカラーで有名な『エア・フォース・ワン』は巨人機時代のパイオニアB747-200型機の特別改修機体。ジョージ・ブッシュ大統領が同機の最初の使用者となった。それ以前の機体もボーイングが製造したB707-320型機で大統領専用機はボーイングの独壇場にある。次の機種も同社に白羽の矢が立つと航空産業界は見る。B747型機の最新シリーズ-8型機は航続距離、搭載重量、エンジンの改良等飛行性能は際立って向上。あらゆる飛行条件に間に合う機体改修の余裕度が大きい。
9・11同時多発テロ発生時、ブッシュ大統領搭乗の『エア・フォース・ワン』はテロの魔手を避けるため遊説先のフロリダ州からワシントンへの帰還飛行で散々苦労した。ミサイル攻撃防護装置など㊙の安全確保の手段だけで不安視された。しかし、B747-8型機では一層充実した対ミサイル防護装置の搭載、ステルス性、空中給油による超長時間連続飛行を含め21世紀の国際情勢に十分対応可能な機体を仕上げられると航空専門家は分析する。ライバル機として市場で重みを増すエアバスA380型機だが、ホワイトハウスの主人公が欧州製の機体で国際外交の舞台に登場する政治情勢は無い。まずはB747-8型機を軸に塀空軍の米大統領専用機の選定作業が進むと見る。
現在使用中の『エア・フォース・ワン』は2017年で経済寿命の30年に到達する。その後の継続使用は整備費の高騰、安全性確保等年々問題が生じかねない。米空軍は後継機の就航を2023年頃に設定しているという。だとすれば機種選定作業本番にそろそろ取りかかる時期が迫っているとも言えよう。
[(USAF)米大統領のいくところ常に寄り添うボーイングB747-200型”エア・フォース・ワン”]
一方、日本の防衛省は次期『政府専用機』選定向けた説明会を2月3日、実施すると官報で告示した。1991年導入した現用のボーイングB747-400型機の後継機の機種選定作業が事実上、スタートする訳だ。ブルンバーグによると航空自衛隊関係者は『2019年度の運用開始』示唆したと伝えた。米国より一歩先んじるかもしれない。
日本の政府専用機は機体の運航、管理は航空自衛隊の『特別航空輸送隊』が担当。同一機種2機を保有、通常は千歳基地で駐機、厳重な監視下に置かれている。首相の外遊や天皇陛下、皇太子殿下の特別フライトに応じ、羽田空港に回航される。
機体の整備作業については海外も含め同型機の運航整備に経験が深い日本航空に当初から依存してきた。しかし、ジャンボ機が全日空も含め、日本の航空界から全機退役で今後、整備作業の円滑な遂行、部品の供給保管でいずれ限界が出てきかねない。
2019年度に後継機に移行するのは常識的判断といえよう。候補機種としては”日米同盟”のシンボルとの絡みでボーイングB747-8型機が有利と見る向きが外交関係者に多い。ここへきてエアバスA380型機の技術先進性も捨てがたいとの評価も少なくない。日航が昨年決断したエアバスの次世代省エネ機A350XWB型機の大量発注が、日本でのボーイング絶対優位性を崩し始めている。
また経済性重視の観点で、次世代省エネ双発機、B787型機やA350XWBがダークホースとして注目される可能性がある。航空機商戦は政治ビジネスの色彩が濃い。欧米何れに軍配を上げるのか、将来の日本外交の針路を占うものとなろう。
[(航空自衛隊)天皇フライトや首相外遊の重責を担う航空自衛隊のB747-400型機]