露空軍、戦略爆撃機など日本海側の接近で空自スクランブル。


2014年2月24日      小河正義

露空軍の戦略爆撃機編隊等が日本海側で日本列島の領空侵犯に繋がりかねない飛行経路を示したため航空自衛隊機がF-15『イーグル』戦闘機を中心にのスクランブルを複数回、余儀なくされた。

防衛省統合幕僚監部が2月24日夜、公表した。それによると、同日まず、日本海を山口県沖合へ接近する複数の国籍不明機のレーダーエコーを西部航空方面隊の防空レーダーが発見した。防空識別圏を超え南下を継続、領空侵犯阻止の警戒監視でF-15等が相次いで警戒発進した。同時に秋田県沖に接近する国籍不明機の機影も探知され、待機中の戦闘機にスクランブルの指示が出た。

14-02-24露軍機航跡

 

図:(防衛省)2月24日夜のTu-95 2機編隊とA-50 AWACS機の飛行航跡。

14-02-24Tu-95航跡

図:(防衛省)別と思われるTu-95 2機編隊は対馬と九州の間を飛行した。

山口県沖へ接近したのはトゥポレフTu-95戦略爆撃機2機編隊でその後、日本海側を北上、北海道奥尻島西方で沿海州方面へ飛び去った。同編隊と別に秋田沖で不審な飛行パターンを取ったのは回転式レーダードームを搭載した露空軍のAWACS、アントノフAn-50型機1機。日本列島への接近はめずらしい。

2014-02-24 Tu-95

 

図:(防衛省)防空識別圏内に侵入した露空軍のTu-95爆撃機2機のうちの1機。

2014-02-24 A-50

図:(防衛省)秋田県沖の防空識別圏に入った露空軍AWACS機A-50。A-50は、イリューシンIl-76大型輸送機に直径9mのロートドームを取付け、内部にUPO Vega製のレーダーと敵味方識別装置(IFF)を組込む。230km範囲の50目標を追跡できる。最大離陸重量176㌧、乗員は15名、1984年から配備が始まったが、2011年以降電子装置をデジタル化するA-50U型への改修が進んでいる。ロシア空軍で28機、インド空軍で3機が運用中。

一方山口県沖合へ向け日本海を南下、九州と対馬列島間をすり抜け韓国済州島南方を西進した複数の国籍不明機を西部航空方面隊の警戒管制組織が捉えた。トゥポレフTu-95『ベア』2機編隊だった。築城基地からスクランブルで対応した。

この日の飛行ルートは朝鮮半島南部で実施中の米韓合同軍事演習に対し軍事情報収集と牽制に出たと見る専門家は多い。旧ソ連時代ロシアと並んでウクライナは連邦国家の中核。ソチ五輪開催でクレムリンの緊張が緩んだ隙に情勢が一気に急変。ウクライナの分裂、内線勃発等情勢は不確定要因が多い。露海空軍は今後、国境周辺で偵察活動強化等きわどい行動を露骨に示威しそう。

在京軍事情報筋は国際情勢は波乱含みの展開となりそうで、北方領土を巡る交渉は当初見込んだほど甘くはない。クレムリンは自国領土の防衛に頑な態度へ転換するだろう。

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[(航空自衛隊)昼夜を分たず日本の空を守る航空自衛隊、三菱重工F-2戦闘機]

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