全日空の次世代ワイド・ボディ、B777-9X型機発注の背景


ANA 787-9 Artwork

[(Boeing )新設計の主翼装着等、機体性能は双発ワイドボディ機でライバル機を寄せ付けない]

2014年3月28日(JST.14:35)     Aaron Terruli

全日空が次期主力旅客機選定でB777-9Xに軍配を上げた。ボーイングは日本のワイド・ボディ(2通路広胴型機)市場の優勢をとにかく確保した。ボーイングの地元有力紙『シアトル・タイムズ』は日航への売り込み競争で敗北、エアバスの対日攻勢が増していただけに、今回の全日空の決断を『ボーイングに取って”救いの手”』と手放しで歓迎の姿勢だ。見出しでも『Boeing wins lion’s share ANA against Airbus』と高揚感が溢れている。これでB777-Xシリーズを選定した航空会社は6社、300機台に迫る発注を得た。開発着手の段階で異例の人気である。今後、欧米等の有力企業が追随に出れば、ボーイングは今後とも、航空機メーカーNo1の座を確保出来よう。

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[(Boeing)ボーイングB777Xシリーズ発注で、最初に手を挙げたのはエアバス・ファミリーと目された独ルフトハンザ航空だった]

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[(Boeing)同上]

ボーイング社に取って 看板機種(アイコン)と言えば異口同音にB747ジャンボジェット機という事になる。誕生から45年以上が経つが、現在は省エネ、後続距離延伸、低騒音等で性能を一新したB747-8型機が需要に応じている。しかし、製造ラインでキック・オフの段階で発注が殺到した1990年代とは市場環境が様変りした。総二階建てで、最大座席数が600人を超すマンモス機、エアバスA380型機の登場で旗色はこのところくすんできた。ボーイングに取ってライバルを蹴落とす新鋭機と見られたB787『ドリームライナー』完成が3年近く遅延。後発のエアバスA350XWB型機が背後に迫る迄、両機種の売り込み合戦は加熱気味である。A350-900~1000型機はボーイングの打ち出の小槌のB777型機の優位なマーケットも脅かし始めた。

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[(Boeing)昨年11月、ドバイの航空ショーでエミレーツ航空がB777Xシリーズ、150機の大量発注発表で流れが変わった]

ボーイングへ次世代ワイド・ボディ商戦の流れを引き寄せたのはエミレーツの決断。中東の有力航空会社の次世代ワイドボディ機種選定に”衝撃波”となった。エチハド、カタール航空がB777Xシリーズ戦線に加わった。最終決断の対ボーイング交渉では性能面の更なる向上を要求。ライバル機のエアバスA350XWB型機へしっかり重大な関心を示し、ボ社の背中をゆさぶったという。

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[(Boeing)湾岸を代表するカタール航空もB777Xシリーズ導入]

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[(Boeing)同上

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[(Boeing)急成長が続くエチハド航空もB777-Xシリーズ導入に踏み切った]

向こう20年間で市場成長力が最大のアジアでもB777Xシリーズへ関心が高まる。双発エンジンという省エネ性能の決定だ。加えて最大400人の旅客収容能力。運航経費でジェット燃料の重圧が年々のしかかる中で、B777Xシリーズは市場での優位性を改めて証明した。アジア路線網で強いキャセイ・パシフィック航空も昨年暮れ、B777Xシリーズの発注を決めた。

全日空はボーイングB777-9X型機20機、B777-300ER型6機、B787-9型14機の抱き合わせ発注で相当のディスカウントを引き出すしたたかさを見せた。米業界専門誌は実際のボーイングとの契約総額は70億㌦らしいと推定している。全日空経営陣は小型機のの後継機種にエアバスA320neoシリーズ、30機の導入も決めタフな交渉と、欧米双方の顔を立てる離れ業を見せた。伊東信一郎社長率いる全日空経営陣の頭脳作戦に評価は高い。

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[(Boeing)キャセイ・パシフィック航空の機種選定が与える影響は大]

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[(Boeing)キャセイ・パシフィック航空もB777Xシリーズ導入に踏み切る]