2014-06-10 (JST 12:50) Aaron Terruli
2014-06-11 revised by 松尾芳郎
図:(Boeing)ボーイング777Xのイメージ。主翼は炭素繊維複合材製、翼幅71.1mで、翼端は“レーキ型”になる。
ボーイング777X開発の核心部分は、炭素繊維複合材(CFRP)で作る新設計の巨大な主翼。
この主翼の大型化変更を伝えるニュースが、英国および米国の航空専門サイト”FlightGlobal”および”Aviation Week eBulletin”から、6月9日迄に相次いで報じられた。要旨は次ぎの通り。
これで明らかになった777Xの新主翼は、翼幅を原案の68.5mから71.1mに延長して、翼端は787に似た“レーキ型”((raked wingtip)となる。これは、性能向上のための数値流体力学(CFD)の解析結果と、ボーイング社内の亜音速風洞と英国ファンボローの大型低速風洞を使った試験の結果で決められたもの。同時に外翼後縁のフラップは、2分割式にしてフラッターに対する耐久性を向上させる。
複合材主翼を胴体と結合する「セクション11」部分“センター・ウイングボックス”は、これ迄のアルミではなく複合材製にすることを決定済み(昨年)、これで熱膨張差による応力問題は解決している。これ迄も777用のアルミ製“センター・ウイングボックス”を担当してきた富士重工は、この決定を踏まえて100億円を投じ777X用の新設備を増設する。
71.1m型主翼は、ボーイング歴史上最長の主翼で、777-300ERなどより主翼面積が約10%広がり、着陸速度を下げ、騒音を下げる効果が期待される。
新主翼は、これまで777のアルミ合金主翼を作っていた同社のアーバーン(Auburn, Was.)工場で作ることになるが、今度は複合材のため大型のオートクレーブの設置を始めとし、巨額の投資が必要となる。
また、71.1m主翼はこのままでは、ICAO指定の777用ゲート(Code E)は使えず、747-8やA380用のCode Fゲートを使わざるを得ない。これを避けるため、かつて777-200で検討され、廃案となった翼端6.9mを折り畳む案が浮上して来た。これは、外翼の前縁スラット2枚と外翼エルロンの部分を折り曲げて、DC-10サイズのゲートが使おうと云うアイデアだった。
しかし新主翼では、重量増加と設計の複雑化を避けるため“レーキ型翼端”部分のみの約3.4mを折り畳み、現在の777-300ERに適用されているCode Eゲートおよびタキシーウエイを使えるようにする、と云うもの。
図:(Boeing)原案のGE9Xエンジンナセルの形状。787用GEnxと似た“波形(chevron)”排気口とする構想だったが、検討の結果採用は取り止めとなった。
図:(Boeing/Aviation Week)新しいGE9Xエンジンナセルの排気口は、現在型777と一見変らないが、空力的に洗練された形状になる。
777Xで明らかになったこの他の改善点は;—
1) GE9Xエンジンナセルの排気ノズルを787等で使っている“波形 (chevron)”の採用を取り止め、空力的に一層改善された在来型に似た形状に改める。
2) エンジン排気ノズルをこれ迄の耐熱合金製から”セラミック・マトリックス複合材(CMC)”製への変更を検討する。”CMC”製ノズルは、ボーイングの「787エコ・デモンストレータ」プログラムで検証済みの新技術。(詳しくはTokyoExprres 2014-04-09 「超合金に替わる”セラミック・マトリックス複合材(CMC)」を参照のこと)
3) GE9Xエンジンのファン直径を、原案の132㌅から133.5㌅に大きくする。これで離昇出力を顧客の要望に応えて102,000lbsから105,000lbsに増加する。
–以上−
本稿作成の参考にした記事;–
Flight Global “Stretched Ppotential for the Boeing 777”
Aviation Week eBulletin Jun 9, 2014 “777X Configuration Changes Revealed” by Guy Norris