2014年6月28日(JST.18:20) Aaron Terruli
乗客乗員239人を乗せ行方をたったマレーシア航空機、B777-200型機について、豪州政府は8月から機体の残骸の捜索を再開する。同時に墜落想定地点をこれ迄より南方のインド洋上に設定し直す。機体の捜索と事故原因解明のこれまでの調査結果を豪州政府が纏め6月26日、公表した。その中で『行方不明機は、最終段階で自動操縦で、最後は燃料切れで南インド洋に突っ込んだ』との中間報告となっている。
自動操縦と事故との因果関係は現時点で明らかにしていないが、欧米の有力メディアの中には『機長ら乗員がHYPOXIA(低酸素症)に陥った』可能性を示唆した。この推論が正しければ、事故は新たな展開を遂げるが、航空専門家は早すぎる原因推定と疑問視する。
豪州政府航空運輸安全委員会(ATSB)はマレーシア航空、B777-200型機の捜索対象海域を変更する理由について、同機を追尾した随一の科学的手段、『INMARSAT』のデータを再度見直した結果だとしている。これには、航空、サテライト通信の専門家が加わり信頼性に自信を示した。
新捜索海域は豪州西部、パース市の西方、1800㌔。60,000平方キロの膨大な面積。再度、無人深海潜航艇を投入。1年がかりで機体の残骸を突き止めるという。
一時、事故機の発信したブラックボックスの遭難信号捕捉も、その後、関連性が希薄になっている。
しかし、マレーシア航空、B777-200型機を追尾した衛星情報で、自動操縦状態で飛行していた分析結果が、今回明らかになった。飛行ルートが直進だったと推定されるという。最後は、機体が燃料切れに追い込まれ、南インド洋上に墜落したみる。
長時間の直進飛行はムハンマド・ザハリ機長らが無意識のうちに『HYPOXIA(低酸素症)』にかかったとの仮説を新たに事故原因として浮上させ、メディアの一部が大々的に報じた。
確かに、機種は異なるが相似性事故が、過去発生しているからである。最近のケースとしては2005年8月14日、白昼に起きたキプロスの『HELIOS(ヘリオス)航空』、B737-300型墜落事故。同機には乗客乗員121人が搭乗、キプロスのラルナカを出発、ギリシャのアテネへ向かった。離陸20分後、高度8,890㍍付近で地上との交信が途絶。ギリシャ空軍のF16戦闘機が緊急発進し、機体に接近したが乗員から応答は無かった。同機はその後も水平飛行を続け、同日午後零時04分、アテネの北方、40㌔付近で、山岳地帯に墜落した。
ギリシャ空軍のパイロットはコックピットで人影を見たがパイロットではなかったという。原因は燃料切れだったが、機体の客室与圧装置の操作ミスと、設計の不備も指摘された。FAA(米連邦航空局)は同種事故を食い止めるため、B737-100~-500型のB737クラッシクに対し、与圧装置の警報器、2基の追加をボーイングに耐空性改善命令として義務づけた。設置終了は今年3月だった。
未確認情報としては酸素欠乏からかろうじて逃れた、客室乗務員の1人が墜落直前になんとか機体を立て直そうとしたとのドラマも伝えられている。
今ひとつ、航空界で知られる『HYPOXIA』関連事故は米ゴルフ界の紳士、ペイン・スチュアートを巻き込んだ、ビジネス・ジェット機の事故。悲劇は、1999年10月25日、サウスダコタ州の農業地帯で起きた。フロリダ州オーランドからテキサス州ダラスに向かった双発小型機『リアジェット35』が該当機。離陸後暫くして交信を絶ち、レーダー機影を追尾していたFAAの航空路管制センターの緊急発進要請で、ナショナルガード所属の州航空部隊のF16戦闘機が3度、同機に接近。応答は無く操縦室が氷結の影響で曇り内部がスクランブル機のパイロットも見通せ無かったという。
結局、予定コースを東にそれ、4時間、2,400㌔の”無言飛行”の末、燃料切れで、サウスダコタの片田舎で農地に激突した。もし人口稠密な都市部上空に接近したら、地上住民への2次災害防止で、スクランブル機は撃墜命令を受けたと言われる。
NTSB(国家運輸安全委員会)は推定事故原因に乗員の『HYPOXIA』罹患の可能性を指摘した。同型機で、客室与圧装置の問題で、搭乗者が酸素欠乏症で墜落事故の犠牲になったケースが報告されていている。
2例の事故から判る様に、直進飛行の継続と自動操縦の作動、地上管制機関との交信途絶、スクランブル機への無反応そして燃料切れで、とどめを打たれたシナリオはマレーシア航空、B777-200型機、のケースでも似通っているように見える。ハリウッド映画並みの御見立てが正しいか否かは、この夏の機体残骸捜索再開の成果にかかっている。
[(Boeing)行方不明のマレーシア航空機と同型のB777-200型]