先進技術実証機「ATD-X」が完成、地上試験を開始


2014-07-14 松尾芳郎

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図:(防衛技研本部)三菱重工(株)小牧南工場で組立てが完了、工場から引出された先進技術実証機「ATD-X」初号機。塗装は白と赤の技本カラー。コクピット・キャノピーはカバーしてある。長さ14m、翼幅9m、高さ4.5m、離陸重量13㌧と小型、エンジンはIHI開発の「XF5-1」アフトバーナ付きターボファン推力5㌧を2基。初飛行は2014年末の予定。

ATDX 2

図:(防衛技研本部)同じく「ATD-X」、逆光で不明瞭だが、横からのシルエットは、本サイト(2014-06-23掲載)『先進技術実証機ATD-X(心神)、今年末に初飛行』中の“三菱技報 Vol.45, No.4, 2008の三面図”と同じ。

 

防衛相技術研究本部が数日前に発表した最新のニュース「先進技術実証機の現況」によると、“三菱重工小牧南工場で製造中の先進技術実証機の機体塗装が終了し、現在各種の地上試験等を実施中”と云う。写真はいずれも2014年5月8日撮影として公表された。

本サイト2014-06-23掲載の「「先進技術実証機「ATD-X」(心神)、今年末に初飛行」で紹介したが、小野寺防衛大臣の参議院外交防衛委員会での発言を再録すると;—

『将来の国産ステルス戦闘機「F-3」の試作機となる「先進技術実証機”ATD-X”(心神)」の初飛行を今年末までに実施する』、さらに言葉を続けて

『”ATD-X“の飛行試験で戦闘機関連技術の実証研究を行い、2018年度までに次期戦闘機である”F-3”を国際共同開発にするか、あるいは国産開発にするかの最終判断を行い、必要な措置を講ずる』

 

防衛技研と三菱重工は、”ATD-X”を使って”F-3”に適用するステルス性能、推力偏向パドルを含む高機動能力(IFPC)、先進アビオニクスの装備、さらに新エンジンXF5-1の性能等を含め、2016年までの約2年間にわたり試験をする予定“だ。

この試験で、次世代戦闘機用の先進技術の妥当性が実証されれば、2018年頃には新戦闘機”F-3”の開発が決定するだろう。

14-05-02航空性能試験XF5-1

図:(防衛技研本部)札幌試験場の「エンジン高空性能試験装置」に搭載、試験中の実証エンジン「XF5-1」(5月2日撮影)。推力はアフトバーナ時で約5㌧(11,000lbs)で小型だが、推力/重量比はほぼ8:1。これと並行して新戦闘機用推力15㌧級エンジンの開発が始まっている。

同じAftバーナ

図:(防衛技研本部)実証エンジン「XF5-1」アフトバーナ試験。(5月2日撮影)

 

技研本部航空装備研究所は、去る5月に「先進技術実証機の研究・エンジン地上試験」として、搭載する実証エンジン「XF5-1」の機能性能を確認するための試験を実施中である、と公表した。

「XF5−1」は、国産初の本格的アフトバーナ付き低バイパス比ターボファンで、その自重に対する推力の比率(推重比)は世界のトップレベル(約8)を達成している。試験は、札幌試験場にあるエンジン航空試験装置を使い、先進技術実証機の飛行高度や速度等により異なるエンジン入口の気流の状態を模擬し、「XF5-1」の定常性能、過渡性能、空中での再始動特性などの確認を行っている。

次世代戦闘機”F-3”に搭載予定のエンジンは推力15㌧(35,000lbs)級で、2013年から戦闘機用エンジンの要素研究として開発がスタートしている。

 

先進技術実証機ATD-Xの地上試験が進み、今年末の飛行試験が順調に行われることを期待したい。そして2年間の評価試験の成果が待望の次世代国産戦闘機の開発に繋がることを願う。

–以上−

 

本稿作成の参考にした記事は次ぎの通り。

防衛省技術研究本部ニュース“先進技術実証機の現況”平成26年7月

防衛省技術研究本部ニュース“先進技術実証機の研究・エンジン地上試験”平成26年5月