2014年8月4日(JST.22:10) Aaron Terruli
マレーシア航空B777型機が地対空ミサイルで撃墜された翌日、バルト海上空で米電子偵察機、RC-135U『リベット・ジョイント(Rivet Joint)』が露空軍戦闘機のスクランブルを受けていた事が判った。ニューヨーク・タイムズ、スエーデンの有力紙『Svenska Bladet』など欧米メディアが報じた。米軍機は露軍機の追跡を回避するため、一時的に事前許可無く、スエーデン領空を侵犯した模様だ。米軍電子スパイ機に対する露側の反応はより好戦的と言われ、4月23日、オホーツ海上空で、RC-135U型機の鼻先、約30㍍をかすめる際どい場面もあったばかりだ。
欧米メディアの報道を総合すると、米軍のRC-135U型機はバルト海東部上空で、”ロシアの飛び地”、カリーニングラード州を対象に電子偵察活動を実施していた。『突然、露側の対空レーダーが作動、ほどなくして露戦闘機の緊急発進と追跡を確認した』(英有力メディア)という。危険な事態発生を回避すべく、『米電子偵察機は急遽スエーデン領ゴットランド諸島上空へ逃げた』(CNN、RTなど)という。その際『スエーデン領空を一時的に侵犯、事前許可無しの行動だった』(スエーデン有力紙)らしい。米軍機は同日も公海上空で電子偵察活動中だった。
RC-135U『リベット・ジョイント』は地上レーダーの所在地探索と使用周波数をピンポイントの精度で突き止めるという。搭載した解読装置がキャッチした電子スペクトラムから割りだす。同型機は他国に存在せず、米空軍ならではのハイテク技術の塊。
露側は旧ソ連時代より、RC-135Uの活動に神経質。『4月23日、オホーツク海で同型機が偵察活動中、露空軍の超音速戦闘機スホーイSu27″フランカー”2機編隊が緊急発進し、うち1機は米軍機の鼻先30㍍を横切った』(米国防総省)という。百戦錬磨の米パイロットの度肝を抜かれんばかりの”超異常接近”だった。冷戦終結後、米露の軍用機が至近距離で睨み合う際どいケースで、事態を重視した、米国のデンプシー参謀総長は露側のカウンターパートに異例の警鐘を鳴らした。この事件に先立ち黒海をパトロール中の米ミサイル駆逐艦に露軍対地攻撃機スホーイSu-25『フロッグフット』が12回も上空を旋回、威嚇行動にでた。
バルト海上空で起きた、米電子偵察機のスエーデン領空侵犯の事実はスエーデンも認めている。同国はNATO(北大西洋)のメンバーではない。ペンタゴンも事実関係について、CNNの取材の過程で認めているという。マレーシア航空、B777型機地対空ミサイル撃墜事件とウクライナ東部での戦闘続行で、背後にいるロシアの存在に堪り兼ね、欧米は先月末追加経済制裁を課し、プーチン体制への締め付けを厳格にした。今後露側が、米軍機に対し、冷戦時代を彷彿させる敵対行動に踏み切らないとの保証は無い。国際政治の流れは欧米vs.露の対決の構図へ走り出した。
[(US AIR FORCE FACT SHEET)米空軍、電子偵察機、RC-135U”リベット・ジョイント”]