失速後、9分間で約9,000㍍を螺旋急降下。マクダネル・ダグラスMD-80シリーズの飛行特性が影響?。(No7:アルジェリア航空機事故)


2014年8月10日(JST.23:30)                                   John Bosnitch

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[(BEA=仏政府航空事故調査委員会=)飛行記録計が示すアルジェリア航空、MD-83型機の螺旋急降下]

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[(同上)アルジェリア航空機は急降下当時、積乱雲の北縁を飛行中]

乗客乗員116人を乗せ西アフリカ、マリ共和国南部砂漠地帯で墜落したアルジェリア航空、マクダネル・ダグラスMD83型機は事故直前、9分間で約9,000㍍の”螺旋急降下”に陥っていた事が判った。事故原因を究明中の仏政府事故調査委員会(BEA)がこのほど公表した、事故概要の第1回の報告書で明らかになった。巡航高度到達直後、失速が始っており、マクダネル・ダグラスMD83型機の飛行特性が背景にあると見られる。当時機体は強烈な乱気流を含む積乱雲の北縁付近で、回避操作も絡んだ可能性が強いという。

BEAはブラックボックスのうちFDR(飛行記録計)の解読にほぼ成功した。同時回収されたCVR(音声記録計)は損傷が激しく現状では再生は無理らしい。しかし、電子技術の応用でデータの一部でも取り出す努力が続いている。事故機が交信途絶直前の地上管制機関との交信記録再生は管制塔側のテープ利用が可能。これらをFDRの記録と突き合せれば、操縦室内での機長らの操作の状況を推測できるかもしれない。

BEAが公表したFDRの解読結果だと、事故機は巡航高度9,300㍍に到達した2分後急速に速度を失ったという。7月24日午前2時39分頃(現地時間)、積乱雲の北縁付近を飛行中、突然飛行速度の低下が始った(時速、273ノットの記録)。その後も減速が続き時速160ノットになった時点で急降下が始った。機体は左旋回で1回半の”螺旋降

下”で約9分で高度480㍍付近にまで落下。記録は同日午前2時47分でストップしている。速度は370ノットだったという。電源が切れたのは機体の空中分解がこの時点で生じたのだろう。

機体の回復操作の余裕も無いままアルジェリア航空機は砂漠に突っ込んだと見られる。

高空を飛行中、マクダネル・ダグラスMD80シリーズは速度計の変化を注意深く監視しないと、エンジンの加速に問題が起きる特性がある、2005年8月、ベネズェラ上空で起きた西カリブ航空のMD-82型機事故では、今回と同様、熱帯での積乱雲近くの飛行状況下で失速に陥っていた。事故調査で、失速開始後、急降下でパイロットは機体姿勢の回復操作で手を打てず、墜落したという。

再発防止のため、高々度飛行時の操作改善策が取られたというが果たして十分だったのか。BEAが9月にも纏める最終報告書で新たな勧告が出されそう。