2014年8月18日(JST.18:50) John Bosnitch
2014-08-19 改訂2
ステルス機探知に特化した専用レーダーを中露が極秘裏に開発中との見方が強まっている。旧ユーゴスラビア・コソボを巡るNATO軍との衝突で、ユーゴが米空軍の㊙ステルス戦闘機『F117(ナイトホーク)』1機を撃墜した際、係ったと言われる長波利用のレーダーと原理が似ているという。欧米の情報機関が懸命に実用化の段階を突き止める努力をしているが、機密の厚いベールに妨げられているらしい。ステルス機の原理となった『レーダー波乱反射設計は旧ソ連時代、ロシア人技術者が高等数学を駆使し考案した』(ロッキード・マーチン社のステルス部門責任者、ベン・リッチ)というから、歴史の皮肉な巡り合わせというほかない。
中露がステルス機探知に特化したレーダー開発に着手しているとの情報に最も神経を尖らせているのが米国だ。21世紀のペンタゴンの戦略でステルス性能を一層、磨き上げる事に最重点が置かれている。次世代統合戦闘攻撃機(JSF)F35『ライトニングⅡ』、次期戦略爆撃機構想ーの空軍だけでなく、海軍も原潜、駆逐艦の分野でステルス技術を取入れ、中露に圧倒的技術力の差を見せつけようとしている。
『ステルス技術で先行すれば、数で不利でも戦況を覆せる』と読んでいるからだ。実際、世界初の超音速ステルス戦闘機、ロッキード・マーチンF22『ラプター』のライバル機との模擬空中戦分析では100%の撃墜率で、同盟国を含む戦闘機パイロットの心胆を寒からしめている。
しかし、ステルス機に死角が存在する事は、相当早い段階で知られていた。コソボ紛争当時、NATO軍の絶対航空優勢下でF117型機が対空砲火の犠牲になった。ユーゴ軍がチェコスロバキア製の長波使用のレーダー『タマラ』で大体の飛行位置をキャッチ。想定される飛行ルート上に地上砲火の弾幕を浴びせたと言われる。15年近くが経つが真相は不明だ。仏上空をイラクへ向け出動したステルス爆撃機B2『スピリッツ』の機影が地上レーダーに映ったとの情報も伝えられている。
ステルス性能はレーダー波を乱反射させ姿をくらませるのが基本。機体の外観デザインが既存機と全く異なるほか、エンジンが吐き出す赤外線を最小化する特殊構造も加え、敵のミサイル攻撃をかわす総合ステルス能力を付与している。
図:(Almaz Antey)アルマズ・アンテイ社の「NNIIRT」無線科学研究所は図に示す新型の2周波帯使用3-D早期警戒レーダーを開発、2013年秋に公開した。新レーダー「55Zh6UME」は生産が進み次第、配備中の旧型「55Zh6UNwbo-U」、輸出用の「同nebo-UE」と交替する。新レーダーは、旧型の比べ、極めて視認性の低い、つまりステルス性の高い、巡航ミサイルや弾道ミサイルまでも容易に捕捉できるのが特徴。新レーダーは、距離測定用にVHF波長帯、高度測定用にLバンド帯、を使う。大型のアンテナパネルはトレーラートラックに搭載され、360°回転式、設置、撤収に約5時間かかる。2周波帯を同時に使うためアンテナはパネル両面に設置してある。
こうした中で、お膝元の米軍OBの中から、中露がステルス機を捉えるレーダー開発の可能性を指摘しだした。一部が米海軍関係の専門メディアで、最近紹介された。
ステルス機を探知するレーダーとして中露は周波数の帯域が長い、長波(LF)利用が最適との実証結果を得た模様だ。TV放送で利用するSHF帯域以上の高い周波数を軍レーダーは使用、これを撹乱すればステルス性能を入手できる設計になっていた。今回、”死角”の存在が明らかになった以上、ステルス性能はピンチに陥る。だが、欧米の電子工学の専門家は、『おぼろげながらの位置は探知できても、ピンポイントの割り出しには数十年以上かかるかもしれない。実用にはほど遠い』と冷静だ。
気になるビデオ映像が最近、YOUTUBEで流された。マレーシア航空機を撃墜した旧ソ連時代開発の『S11(ブークM2)』を製造する露の軍用ハイテク電子機器メーカー『アルマズーアンティ』のプロモーション・ビデオ。米軍のステルス戦闘機F22『ラプター』、ステルス爆撃機B2『スピリッツ』を目標にステルス性能を誇示する専用レーダー、地対空ミサイルなどの存在を匂わしている。
ロシアのハイテク電子機器メーカー「アルマズ・アンテイ」社(Almaz Antey)が描く『対ミサイル戦闘の構想』を示す動画を次ぎに示す。10分足らずだが、中にはウクライナで使用された「Buke対空ミサイル」、SM3に迫ると云われる「S300対空ミサイル」などの使い方が含まれており、ロシアの対ミサイル戦闘についての考え方が良く判る。
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