2014-11-19 松尾芳郎
珠海で行われた「2014中国航空ショー」(11月11日〜16日)で、CASC (China Aerospace Science and Technology Corp.=中国航天科技集団公司)が新しい超音速巡航ミサイル”CX-1”を公開した。2種類あり、CX-1Aは艦載用、CX-1Bは地上発射型である。
陸上施設も同じだが、艦船が巡航ミサイル攻撃を受けた場合は“近接防御火器システム(CIWS=Close in Weapon System)”「ファランクス」により距離3km前後で防御、撃墜が可能だ。しかし超音速巡航ミサイルでは、CIWSで破壊してもその破片が飛来し自艦が損傷する恐れがある。万全の対抗策としては、より遠距離で迎撃可能な射程“9km”の赤外線誘導ミサイル使用 RIM116 RAM、あるいはその改良型Mk.15 mod 31 SeaRAMが必要となる。SeaRAMは米国およびドイツの艦艇に多数装備されているが、我が海自では来年3月就役予定の大型ヘリ空母「いずも」に初めて搭載される。
CX-1は、対艦攻撃用を主目的として開発されているが、対地攻撃の能力も備えている。艦載用はCX-1A、水上艦の甲板上に設置される斜めの発射筒から発射される。またCX-1Bは、大型トラック装備の2本のランチャーから発射される。
図:(Chinese Military Review)CX-1は、発射後高度15,000〜18,000mに上昇ブースターを切り離し、マッハ2.8〜3.0の高速で巡航、目標手前で降下し、5〜20mの超低空飛行に移り、マッハ2.2〜2.4の超音速で目標に向かい衝突、破壊する。弾頭には200〜300kgの炸薬を装填してある。
図:(Navy Recognition)陸上発射型CX-1Bのランチャーの模型。
図:(Chinese Military Review)CX-1を後から写した写真。ブースター段には4枚のフィンがあるが、P-800やブラモスにはない。排気孔には推力偏向用の4枚のベーン(赤色)が見える。
CX-1は、ロシアが開発したP-800オニックス(Oniks)および、ロシアとインドが共同開発したブラモス(BrahMos) 巡航ミサイルに良く似た形をしている。先端の大型空気取入れ口とその中のコーンはそっくりだ。しかし翼の形状は異なり、P-800とブラモスは2組であるのに対しCX-1は3組の翼を備えている。
CX-1は、2段式で巡航段とブースターから成っている。機首部分の円筒形の空気取入れ口と中心のコーンでスクラムジェットを作動させ、マッハ2〜3の超音速巡航を実現している。洋上を航行する艦船を攻撃する場合は、一旦高空に上昇、巡航して装備するレーダーで目標を捕捉、降下して超低空飛行に移り、ターミナル段階に入り超音速で目標に衝突撃破する。
図:(Aviation Analysis Wing)ロシアのNPOマシノストエニア(NPOM=NPO Mashinostroyenia)製P-800オニックス(Oniks)、ヤコント(Yakhont)とも呼ぶ。同社はCX-1をP-800の模造だと非難している。重量は3,000kg、全長8.9m、直径0.7m、弾頭炸薬は250kg、2段目はケロシン燃料使用のラムジェットエンジンを装備する。射程は巡航高度で異なり120〜300km、マッハ2.5で飛行する。
図:(Aviation Analysis Wing)ロシアの NPOマシノストエニア(NPOM)とインド政府の国防研究開発機構(DRDO = Defense Research and Development Organization)が共同でP-800をベースに開発したブラモス(BrahMos)。性能はロシア製P-800とほぼ同じ。対艦ミサイルだが、地上発射型、潜水艦発射型、航空機発射型がある。
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本稿作成の参考にした記事は次ぎの通り。
Aviation Week eBulletin Nov. 7, 2014 “Updated: Zhuhai Surprise: China’s Third “Russian” Supersonic ASCM” by Richard D. Fisher, Jr.
Navy Recognition “Zhuhai Airshow: Chinese Company CASC unveiled the new CX-1 Supersonic Anti-Ship Cruise Missile”
Aviation Analysis Wing Nov. 18, 2014 “Chinese CX-1 and BrahMos Supersonic Cruise Missile”