—P&W/GE共同開発のGP7200は92億ドルの受注機会を失う—
2015-04-25 (平成27年) 松尾芳郎
図:(Emirates)エアバスA380は2階建4エンジンの大型旅客機。2007年10月にシンガポール航空で就航開始。確定受注機数は317機、うち156機を13社に引渡し済み。最大のユーザーはエミレーツ、発注140機うち58機を受領。
A380は床面積でボーイング747-8より40%広く、3クラス仕様で525席、全席エコノミーだと850席以上になる。航続距離距離は15,700km、巡航速度はマッハ0.85 (900km/hr)。エンジンはP&W-GE Engine Alliance GP7200あるいはRolls-Royce Trent 900のいずれかを選択できる。
P&W-GEの合弁企業エンジン-アライアンスは現在エアバス A380用にGP7200(推力72,000lbs)エンジンを製造、供給している。先週金曜日(17日)に明らかになったところによると、中東のエミレーツ航空は発注中のA380型機のうち50機のエンジンをロールスロイス製トレント900に変える(エミレーツ社長テイム-クラーク(Tim Clark)氏談)。エミレーツが現在運行中のA380は全てP&W-GE製のGP7200エンジンを使っている。変更の理由は「RRがトレント900の改良に熱心なため」と云う。P&W-GE合弁のエンジン-アライアンスはA380の受注が先細りのためGP7200の燃費改善に意欲的でない事が背景にあると見られる。エミレーツは、初めの25機のA380を2016年末から2018年第一四半期に受け取り、残りの25機は2019-2020年に受領する手筈になっている。
ロールスロイス(RR)のCEOジョーン-リストン(John Rishton)氏によると「今回の92億ドル(約1,000億円)に達する商談は、ロールスロイス(RR)にとり史上最大の契約となる」。
P&W-GEエンジン-アライアンスGP7200は、2012年末現在でA380エンジンの56%を占めている。採用しているのはエアフランス、大韓航空、エチハド航空、カタール航空、それにエミレーツである。
A380についてはここ2年ほど新規受注が無く、発注の可能性があるのはエミレーツのみ、しかもエミレーツは追加発注の条件として燃費性能の向上した新型機A380neo (new engine option)の開発を要求している。すなわち、エアバスに対し、機体重量の削減、空力的な改良、新型エンジンへの換装で、燃費-航続距離の10-13%改善を求めている。
今回のエミレーツのエンジン変更がA380neo開発に繋がるかは定かでないが、それに向けての圧力となるのは間違いなさそうだ。
「A380neoの開発が決まればRRが唯一のエンジン供給者となり、応分の開発費を負担することになる、そしてエンジン-アライアンスは消え去ることになろう」(業界アナリストの話)。
図:(Emirates)ドバイ国際空港(DXB)の旅客ターミナルT-3に並ぶエミレーツのA380。どう航空ではA380が最大の稼ぎ頭という。エミレーツ専用のT-3は2008年に完成、床面積は170万㎡で建築物として世界第2位の広さだが、すでに手狭となり拡張を計画中という。
−以上−
本稿作成の参考にした記事は以下の通り。
Airbus .com “A380 Effect”
Howard French Journal Inquirer, April 18, 2015 “Pratt/GE alliance loses slargest engine customer, $9 billion contract”
Pro “Re-engined A380 prospects hazy as Emiratews takes Trent 900” by David Kaminski
「成長著しい湾岸航空3社をめぐる話題」2015-02-19作成
「エアバスA33-neoに装備するRRトレント7000エンジンとは」2014-07-29作成、2014-08-02改定」
「ロールスロイス、新型エンジン開発計画を発表」2014-08-29作成