2015-05-09 (平成27年)作成 松尾芳郎
ロシアは5月9日に70回目の対独戦勝記念日を迎え、プーチン大統領出席の下で、モスクワ赤の広場で大規模な軍事パレードを開催する。ここではBuk M2対空ミサイル、大陸間弾道ミサイルTopol-Mなどの部隊が行進する予定。特に冷戦終結後初めて公開されるT-14戦車など最新の陸上戦闘車両に注目が集まっている。
写真1:(Russian Defense Ministry)長らく開発中だった新型戦車Armata T-14型がやっと姿を見せる。目下少量初期生産の段階にあるようだ。現在の主力戦車T-90に比べ、はるかに優れているというのが西側専門家の一致した見方だ。ロシア陸軍では2020年から配備を開始し、2,300台を導入する予定。
T-14型戦車の最大の特徴は世界で初めて無人砲塔を実用化した点。乗員は車長、砲手、ドライバーの3人で、砲塔前にある狭い装甲カプセルに乗務する。主砲は新型の口径125mm滑腔砲(smooth bore gun/砲身内に螺旋溝を持たない砲)。砲塔の上には航法装置、周辺監視、射撃照準装置が一体で装甲ボックスに納められている。さらに砲塔後部には砲弾の自動装填装置らしきものが見える。また車体後部のエンジン室外周はバー- アーマー(Bar armor)で防御されている。
写真2:(Russian Defense Ministry)Armata製の重歩兵戦闘車( IFV=Infantry Fighting Vehicle)T-15、車体前部には厚い装甲が施され、後部上面には遠隔操作型兵装(RCWS=remote-controlled weapon system)用砲塔を持つ。この砲塔には中口径の機関砲1門と対戦車ミサイルを左右に2基ずつ計4基を装備する。
写真3:(Russian Defense Ministry)Coalition-SV製152mm口径の自走砲は、1980年代に使われた2S19 Msta-S自走砲の後継車両である。外観はtwin barrel砲を搭載した2S19とあまり変わっていないが、砲塔はかなり大きくなり、新型の砲弾装填システムが搭載されたようだ。車体の支持装置は2S19と同じくT-80戦車用の12-車輪型を使っている。
写真4:(Russian Defense Ministry)Kurganets-25は、冷戦時代に大量保有していたBMP系列歩兵戦闘車の後継だが、19㌧型のBMT-4に比べずっと重い。必要に応じ追加装甲あるいはアクテイブ装甲の取付けもできる。車体後部上方にはT-15 IFV搭載と同じ遠隔操作型兵装砲塔(RCWS)を装備する。
写真5:(Russian Defense Ministry)全く新しいBoomerangm製タイヤ付き8輪歩兵戦闘車(IFV)。車体底部は深い”V”型で、後部に大きなダクテッド-プロペラを持つ水陸両用IFVである。重歩兵戦闘車T-15(写真2)および歩兵戦闘車Kurganets-25(写真4)と共に、ロシア陸軍が得意とする大規模兵力投入作戦に使われる。砲塔はKurganets-25やT-15と同じRCWSを搭載している。
冷戦終結後の90年代のロシアでは、軍事費は旧ソ連時代の18分の1に急減したが、プーチン政権下で再び拡大に転じ、2014年では前年比8%増の845億ドルに増加している。これはアメリカ/6,100億ドル、中国/2,170億ドル、に次ぐ世界第3位である。ロシアは人口1.4億人、GDPは1.9兆ドル、これに対し我が日本は人口1.3億人、GDPは4.6兆ドル。ロシア対比でGDPは2倍以上ある裕福な国だが、軍事費は460億ドルでほぼ半分でしかない。中国、ロシアの強大な軍事圧力を受けている日本が平和で豊かな国であり続けるためには戦いに備える必要がある。
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本稿作成の参考にした記事は次の通り。
Aviation Week May 6, 2015 “Red Square Revelations” by Bill Sweetman
BBC News 7May 2015 “Russian super-tank “stalls” on rehearsal parade in Moscow”
TASS Russian News Agency May 06, 2015 “Putin to review troops at May 9 Victory Parade”