2015(平成27年)-09-03 松尾芳郎
「ワシントン発時事通信」によると、米国防当局者は9月2日、5隻からなる中国海軍艦隊がアラスカ州沖のベーリング海に進出、活動中だと語った。米軍がベーリング海に展開する中国艦隊を確認したのはこれが初めてだ。中国海軍が自国沿岸から遠く離れたアラスカ近海でも活動できる能力を備えていることを誇示したことになる。
艦隊はいずれも公海水域に止まっており,米国への脅威はない、としている。
当該中国艦隊は、本サイト2015-09-01 「中国艦隊,日本海での島嶼上陸演習を終了し大半は宗谷海峡を東進」で記した艦隊そのもの。防衛省統合幕僚監部が発表(2015-08-30)した次の艦隊である。すなわち「8月29日午後4時,海自哨戒機と同ミサイル艇が、宗谷海峡を東進するルージョウ級ミサイル駆逐艦1隻、ジャンカイII級フリゲート2隻、ユージャオ級揚陸艦1隻、フチ級補給艦1隻、を発見,オホーツク海に入るのを確認した」。
ルージョウ(旅洲)級ミサイル駆逐艦:満載排水量7,000トン、強力な対空ミサイル64発を搭載する防空駆逐艦
ジャンカイII(江凱II)級フリゲート:満載排水量4,000トン、対空ミサイル32発、対艦ミサイル8基を搭載するフリゲート艦
ユージャオ(玉昭)級揚陸艦:満載排水量18,500トン、ウエルドックに大型揚陸艇4隻、上甲板格納庫にヘリ4機、多数の兵員と装甲車両を搭載する
フチ(福池)級補給艦:満載排水量23,000トン、優れた外洋航行能力を持つ
これらの各艦は、いずれも2007年以降に就役した新造艦である。
これに関連して、防衛省統合幕僚監部は、「ロシア海軍のスラバ級ミサイル巡洋艦1隻が8月31日(月)午後6時頃宗谷岬の西南西200kmの海域を北東に進むのを発見した」と発表した(27-09-01)。発見したのは八戸基地海自第2航空群所属のP-3C哨戒機。同艦、艦番号011は1989年就役の「バリヤーク」でロシア海軍太平洋艦隊の旗艦。行き先は明らかでないが、中国艦隊のベーリング海進出の時期と符合することから、その支援行動かと思われる。
図1:(統合幕僚監部)スラバ級ミサイル巡洋艦、艦番号011「バリヤーク」。2008年にオーバーホール済み。基準排水量9,300㌧、満載排水量11,300㌧、強力な防空力と打撃力で空母機動部隊攻撃が主任務。スラバ級は3隻が現役で各艦隊の旗艦を務めている。両舷の4個の筒は、射程距離700km、速度マッハ2の「P-1000ブルカーン」対艦ミサイル発射筒、各筒に2基ずつ、合計16基を搭載している。
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