平成27年度の緊急発進では対中国機が急増


2016-04-23(平成27年) 松尾芳郎

 

防衛省統合幕僚監部の発表(28-04-22)によれば昨年度(平成27年度)の我が航空自衛隊機による緊急発進回数は前年対比70回少ない873回であった。対象国機は中国機約65%、ロシア機約33%。減少した理由はロシア機が減ったため。

航空自衛隊の方面隊別では、北部航空方面隊/205回、中部航空方面隊/50回、西武航空方面隊/87回、主として中国機の領空侵犯に対処する沖縄の南西航空混成団/531回が目立っている。

平成27年度の特徴は、中国機に対する緊急発進が前年度対比で107回増加し、過去最大となったこと。このうち14件は特異飛行事例として公表している。ロシア機に対するスクランブルは前年対比185回の減少であった。このうち10件は特異事例として公表した。

この1年間の緊急発進回数873件のうち、領空侵犯件数は38回に達しているが警告射撃で対応したとは報じられでいない。

このように中国機に対する緊急発進が著しく増加している事実は、同国の近年の軍備大拡張、尖閣諸島領有権主張、などと無縁ではない。

残念なことにこの統合幕僚監部の発表を報じたのは一部マスコミだけで、他のいわゆる親中「サヨク」のメデイアは、ほとんどが黙殺、取り上げたところもごく控えめな報道ぶりであった。熊本地震に関して、習近平主席が天皇陛下にお見舞いの電報を発信したことには大きく紙面を割いていたのに。このような偏った報道振りは世論を誤った方向に誘導するもので、国益をないがしろにする姿勢だと言わざるを得ない。

対中国機スクランブルで多忙を極めた南西航空混成団は、遅まきながら2016年(平成28年)1月31日付けで、第204と第304(いずれもF-15)の2飛行隊制に増強され、名称も「第9航空団」に改められた。これで戦闘機40機+の体制が整ったが、中国機の増強に対処するには未だ不十分である。

27スクランブル・グラフ

図1:(統合幕僚監部)図2の数値をグラフにした図。縦軸に緊急発進の回数、横軸に年度(西暦)を示す。中国機の増え方が著しい。これは中国の対日姿勢の変化を示している。一方ロシアは原油安で財政苦境が続き、加えてウクライナ、シリア問題を抱えていることが影響して我国近辺の飛行を減らしている模様。

27緊急発進表

図2:(統合幕僚監部)過去5年間の緊急発進状況。中国機の著しい増加が目立つ。その他は、北朝鮮、台湾などである。

2016露中機緊急発進航路 

図3:(統合幕僚監部)緊急発進の対象となったロシア機、中国機の飛行パターン。中国機の経路のうち、対馬海峡と宮古海峡の通過は、大型爆撃機や大型早期警戒機などが主で、平成27年度から急に増えている。

 

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