中国空軍爆撃機・戦闘機が宮古海峡を通過、太平洋で艦艇攻撃演習


2016-09-26(平成28年) 松尾芳郎

 

中国空軍公式ニュース発表によると、9月25日に40機以上の各種空軍機が宮古海峡を通過し、荒天の西太平洋上に進出、演習を行った。演習に参加したのはH-6K戦略爆撃機、スーホイSu-30戦闘機、給油用タンカー、早期警戒監視機で、台風17号で悪天候であるにもかかわらず艦船攻撃演習と空中給油の訓練を行った。また、参加した爆撃機と戦闘機は、中国が3年前に自国の権益を主張するため東シナ海に設定した防空識別圏(ADIZ)で、通常のパトロールを実施した。

防衛省統合幕僚監部の発表(28-09-25)によると、9月25日(日)に中国空軍機合計8機が沖縄本島と宮古島に間の宮古海峡上空を通過、西太平洋上に進出、演習を行ったのちに反転、同海峡を通過して中国本土に帰投した。往復したのは最新型の戦略爆撃機H-6Kが4機と情報収集機TU-154が1機、情報収集機Y-8が1機、それに戦闘機(Su-30と推定)が2機であった。領空侵犯を防ぐため那覇基地から戦闘機を緊急発進させて対応した。

中国空軍と統合幕僚監部の発表に機数の差があるが、理由は不明。中国機の一部が台湾—フィリピン間バシー海峡を通過し、演習に参加したのかも知れない。

マイアミ大学地政学教授で「米中経済および安全保障調査委員会(US-China Economic and Security Review Commission)の長官を務めるジューン・ターフェル・ドレイヤー(June Teufel Dreyer)氏は「今回の中国機の行動は、日本に対する南シナ海問題へ介入するなとの警告と思える。日米両国が共同で中国の南シナ海進出に抗議していることに対する反発だ」と話している。

別の中国問題研究機関の専門家は「中国は昨年3月以降沖縄列島—台湾を結ぶ彼らの言う第一列島線をしばしば横断し、西太平洋上に進出している。海軍力だけでなく空軍力でもその成長振りを誇示するようになった。特に戦略爆撃機H-6Kに6基搭載する巡航ミサイルDF-10Aを持ってすれば、グアム基地の攻撃は容易になる」と警告している。

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図1:(統合幕僚監部)9月 25日、宮古海峡を通過する中国空軍H-6K型爆撃機4機の内の1機。H-6爆撃機 は1969年から配備が始まり派生型を含み現在120機ほどを運用中。原型はロシアのツポレフTu-16で、西安航空機で国産化している。当初は核爆弾(20 kt級)用であったが、弾道ミサイル(ICBM)の実用化で核爆撃機としての効用が薄れ、今は長距離巡航ミサイルDF-10Aを6基搭載する。乗員2名、全長35m、翼幅34.4m、最大離陸重量76ton、エンジンはロシア製D30KP 2基、巡航速度790km/he、戦闘行動半径3,500km、兵装搭載量は9トン。

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図2:(Global Times/環球時報)9月25日に沖縄本島と宮古島間の宮古海峡を通過するH-6K爆撃機とSu-30MKK戦闘機の写真。

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 図3:(Chinadaily com)中国軍基地を離陸するSu-30MKK戦闘機の2機編隊の写真。中国空軍は2010年以降73機のSu-30MKK戦闘機を保有している。また同海軍はSu-30MK2型機を24機運用している。乗員2名、全長21.9 m、最大離陸重量34.5 ton、エンジンはLyulka AL-31Fターボファン推力27,000 lbsを2基。最大速度はマッハ2、航続距離は3,000 km、空対空、対艦、対地の各種ミサイル、爆弾などを搭載できる。

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図4:(統合幕僚監部)ツポレフTu-154旅客機を中国が輸入、電子偵察機に改造したのが「Tu-154情報収集機」。エンジンはロシア製D-30KUターボファン推力23,000 lbsを3基、航続距離6,600 km.

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図5:(統合幕僚監部)早期警戒管制機Y-8。ウクライナのアントノフ設計局が作ったAn-12型輸送機を中国がライセンス生産したのがY-8輸送機。1981年から陜西飛機工業で75+機が生産された。Y-8は輸送機型が基本だが、多くが多様な電子偵察用に改造されている。写真はその一つ、はっきりしないが「Y-8G」型か。全長36 m、翼幅38 m、最大離陸重量65㌧、」航続距離5,700 km、エンジンはWojiang WJ-6C ターボプロップ、5,100軸馬力が4基。

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図6:(統合幕僚監部)9月 25日、宮古海峡を通過した中国空軍の航跡。

 

—以上—

 

 

本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。

China Military sponsored by the Chinese People’s Liberation Army Sept 25, 2016 “China Air Force Conducts West Pacific Drill, Patrols ADIZ” by Dong Shaohul