ドバイ・エアショー2017、エアバス・ボーイングの狭胴型機に空前の商談、我国からはC-2輸送機が参加


2017-11-20 (平成29年) 松尾芳郎

 ドバイ地図

図1:(Google) エアショーが行われたアラブ首長国連邦のドバイと、展示された空自C-2輸送機が訪問するジプチ(アフリカ)の位置を示す。

 

ドバイ・エアショーはアラブ首長国連邦(UAE=United Arab Emirates)の主催で隔年にドバイ(Dubai)で行われ、1989年から始まり、今年(2017)は11月12日から16日に行われた。

我国で知られている大規模なエアショーは、イギキスのファンボロー、フランスのパリ、ドイツのベルリン、シンガポール等がある。また米国ではオシュコシュ・エアベンチャーショー、ミラマー海軍航空ショーなども大規模。

これ等に比べるとドバイ・エアショーは、やや小さいが今年は注目すべきニュースがあった。一つはエアバス、ボーイングの新型狭胴機で空前の規模の商談がまとまったこと、もう一つは我が空自の新型輸送機C-2が展示され、湾岸諸国空軍幹部の注目を集めたことである。

 

エアバスとボーイングの狭胴型機に空前の大型商談

neo vs max

図2:(YouTube)ボーイングとエアバスの狭胴型機を代表する「737MAX9」(上)と「A320neo」(下)。両機ともサイズはほぼ同じ、客席数は共に170席前後で、激しく競合している。これまでの受注機数はエアバスが5,209機、737MAXが3,459機で、エアバスがリード。

 

11月15日にはエアバス、ボーイングの狭胴型機に記録的な大型契約が纏まった。

エアバスは、インディゴ・パートナーズ(Indigo Partners)と、A320neo系列機を合計430機、公示価格で495億ドル(約5兆4500億円)購入する旨の覚書(MOU)にサインした。正式契約は今年末に締結される。エンジンをP&WにするかCFMにするかはまだ決まっていない。430機の内訳は、A320neoが273機とA321neoが157機となっている。これはエアバス史上最大規模の受注となる。

インディゴ・パートナーズは米国に拠点を持つファンド会社で、現在A320型機を427機発注しているが、今回の発注でそれを倍増することになる。同社は超低価格航空(Ultra LCC)4社を保有し運営している。すなわち、ハンガリーのウイズ・エア(Wizz Air)、米国デンバーに本社を置くフロンテイア航空(Frontier Airlines)、南米チリのジェットスマート(JetSMART)、それにメキシコのボラリス(Volaris)。各社はそれぞれ100機規模のA320系列機を運用中である。引き渡し開始は2021年だが、大部分は2025-26年に納入される。なおインデイゴ・パートナーズはインドのLCC IndiGo社とは関係のない企業。

一方ボーイングは、フライ・ドバイ(FlyDubai) 航空から737MAX系列機を合計225機、公示価格で270億ドル(約3兆円)の受注契約に成功した。これとは別にボーイングは、エアショー初日にエミレーツ(Emirates)航空から787-10型機、151億ドル(約1兆6600億円)を受注している。

フライ・ドバイは設立後10年ほどの会社だが、今年末までに737-800NG型機を61機運用する予定で、ドバイを中心に44カ国97地点に路線網を持ち、さらなる拡大を目指している。

17-11 neo vs MAX比較表

図3:(Airbus, Boeing) エアバス、ボーイング公表の資料をまとめたA320neo系列機とBoeing 737MAX系列機の比較表を示す。A32neo系列機は、エンジンを CFM製かPW製のいずれかを選択できる、10月末現在の選択状況は、PW1100G-JMが1,386機(28%)、CFM Leap 1Aが1,712機 (34%)、残りが未定で1,911機となっている。

 

空自、C-2輸送機を展示

C-2輸送機

図4:C-2輸送機はエアバスのA400M型輸送機とほぼ同じサイズで、全備重量120 ton、エンジンはGE CF6-80Cを2基装備する。

 

我が航空自衛隊の新大型輸送機、川崎重工(KHI)製のC-2輸送機が飛行訓練の途上ドバイ・エアショーに立ち寄り展示された。このあとC-2輸送機は自衛隊が基地を設営しているアフリカ東岸のジブチ(Djibouti)を訪問している。その後ニュージランド(New Zealand)に向かい、同国が検討中の輸送機選定に参加、売り込みを図る予定になっている。

防衛装備庁では、2014年にいわゆる武器輸出三原則が「防衛装備移転3原則」に変更され内容が緩和されたのを受け、C-2輸送機と川崎重工製のP-1哨戒機の輸出活動を行なっているが、今の所受注に成功していない。

航空自衛隊では2016年6月からC-2輸送機の受領、配備を始めており、旧式化した1970年代の国産小型輸送機C-1の代替として、約40機を導入する予定である。これまでに4機が納入済みで、鳥取県美保基地第3輸送航空隊に配備されている。他に4機程度を電子情報蒐集機(ELINT)に改造、運用することが検討されている。

他にショーに参加した軍用輸送機には、エアバスA400M、ロシアのアントノフ(Antonov)An-70、ロッキード・マーチンC30J、そしてずっと小型のエアバスC-293、アントノフAn-132D、などがある。

C-2は我国で作られている最大の機体で、GE CF6-80C2K1F (推力27.9 ton)エンジン2機を装備、最大離陸重量141 ton、貨物搭載量は36 tonで陸自が配備中のほぼ全ての戦闘車両を搭載できる。前身のC-1輸送機に比べ、搭載量は3倍、航続距離は4倍に達する。また左右6輪からなる主車輪は、胴体側面のふくらみに収めるため貨物室が広く、長さ40 ftコンテナーをセミトレーラー付きで収納できる。またローターを折り畳んだUH-60系列の汎用ヘリを搭載できる。また軍用機にしては珍しくスラスト・リバーサーを装備しているので着陸滑走距離はC-1同じ位短い。

最大速度はマッハ0.82で民間旅客機と同じ、航続距離は貨物20 ton搭載で約7,600 kmである。

乗員はパイロット2名、ロードマスター1名の計3名。C-2は、不整地離着陸はできないが、海外カストマーの要求があれば簡単な改修で不整地離着陸の機能を付加することができる。操縦系統はフライバイワイヤ方式で、姉妹機のP-1哨戒機が採用するフライバイライトと異なっている。

C-2は今回ドバイに2日間滞在したが、アラブ首長国連邦(UAE)国防軍の首脳は大変関心を持って調査したと、外電は報じている。なお、UAEの空軍司令官は2016年6月に岐阜基地に来訪、C-2に試乗し調査を行っている。

 

—以上—

 

本稿作成の主な参照記事は次の通り。

Dubai Airshow News 15 November 2017 “Record Breaking Deals day at Dubai Airshow 2017”

Aviation Week Show Nuews Nov. 12, 2017 “Japan’s C-2 Appears at Dubai Airshow” by Bradley Perrett

Aviation Week Nov. 17, 2017 “Japan’s Giant Airlifter Makes Dubai Debut” by Tony Osborne