2018-03-30(平成30年) 松尾芳郎
現在地上あるいは海上輸送で広く使われているインターモーダル・コンテナ(intermodal container)を航空輸送に使おうと云う夢のような話がある。
米国カーペンテリア(Carpenteria, Calif.)にある創業間もないドーサル航空機(Dorsal Aircraft)社が発表した構想はこうだ。
「コンテナを航空機構造の一部として使えるのではないか」。同社の提案は、貨物機の背骨(spine)の部分を強化し、そこにコンテナを固定、主翼、エンジン、尾翼を取付けて無人貨物機として使おうというものである。このアイデアは現在使用中のあらゆる大型貨物機に適用できるが、ここではC-130H軍用輸送機を取り上げている。
コンテナを背骨に固定し、コンテナ同士も固定して、飛行中は構造部材として荷重を受け持つように設計する。コンテナは、長さ5 ftから50 ftの標準型を、お互い上下、左右で固定し、胴体背骨に4箇所で懸架する。
「この方法で長距離貨物輸送のコストを少なくとも60 %削減できる、この方法は固定翼の貨物機だけでなく一部のヘリコプターにも適用できる」とドーサル航空機の創立者エリー・へローJr. (Elie Helou Jr.) 氏は語っている。
図1:(Dorsal Aircraft) ロッキードC-130は、4発ターボプロップ輸送機で1954年初飛行以来60年以上に渡って生産が続いている軍用輸送機。2,500機以上が作られ最新型はC-130J。C-130H型の貨物室は、長さ40 ft(12.2 m)、幅119 inch(3 m)、高さ9 ft(2.7 m)。兵員64名または45,000 lbs (20 ton)の貨物を搭載できる。エンジンはアリソン(Allison T56-A 15軸馬力4,590 hpを4基、航続距離は3,800km。ドーサル社ではC-130H型機2機をコンテナ輸送機に改造することを提案している。
ドーサル社では「自社で設計する40 ft コンテナは、32,000 lbsの貨物を搭載可能、また20 ft コンテナは16,000 lbsを搭載できる。さらに、胴体幅を2倍にすれば40 ft コンテナを2個並列に搭載でき、真ん中の壁が不要になるので取り外せば大型貨物の輸送にも使える」と述べている。
標準型ISOコンテナの自重は5,500 lbsにもなるので、ドーサル・コンテナは飛行機の機体構造にも使えるよう、軽量、強靭、低価格で修理可能なアルミ合金製にする予定だ。そしてこのドーサル・コンテナは、現在の地上、海上輸送に使われているインターモーダル・コンテナと同じように扱うことができる。しかしアルミ製なので積み重ねの制限は2段までとなる。
(注):標準型ISOコンテナの外形は、幅8 ft(2.44 m)、高さ8 ft 6 inch(2.59 m)、長さは40 ft(12.19 m)と20 ft(6.06 m)型がある。また高さ9 ft 6 inch(2.9 m)とした40 ft high-cube型などがある。一般にスチール製が使われているが、アルミ製や複合材製のコンテナも存在する。
しかしこのアルミ合金製のフライト・コンテナは、地上、海上輸送に使うと損傷を受け易く、機体構造の一部としての耐空性保証を維持することが難しい。従ってコンテナ自身に損傷検知システムを組み込み、損傷発生時には検査が必要なことを通報する仕組みを用意しなくてはならない。
ドーサル社は、現在2機のC-130H輸送機をドーサル・コンテナ付き貨物機に改造し、同時にコンテナ・システムを開発するに必要な資金の調達に努めている。
旅客機を貨物機に改造する経験を持つサンデイゴ(San Diego, California)のワグナー・エアロノーテイカル(Wagner Aeronautical)社と協力して、約2年かけてC-130Hを改造、飛行試験、型式証明取得を目指している。
ドーサル社では、この貨物機は無人機にする考えだが、これだけの大型機の無人機化は前例がないので、当初はコクピットにモニター・パイロットを乗せて航空路を飛ばしたい、としている。
C-130H型機をコンテナ輸送機に変換する詳しい手順は、同社が作成した動画「youtu.be/_PCvSSTfJmk.webloc」にあるが、これから抜粋した写真を以下に順を追って示す。
図2:(Dorsal Aircraft)C-130H型機を分解、主翼、中央翼、尾翼、ランでイングギア、はそのまま再利用のため保存するが、胴体は廃棄する。
図3:(Dorsal Aircraft)新設計の胴体の基幹は背骨構造(Dorsal spine)となる。背骨は主翼の桁のような構造で、これにサイドパネル、後部ドア、ランデイングギア、底部ドアなどを取付ける支持構造を組み込む。
図4:(Dorsal Aircraft)サイドパネルと底部ドアの取付け状態。
図5:(Dorsal Aircraft) 次に後部ドアとらんでイングギア・ポッドを取付ける。
図6:(Dorsal Aircraft) コクピットと操縦系統は新規設計で、背骨構造に取付け、胴体部分が完成。そこに保管していた主翼、中央翼、尾翼、ランデイングギアを組み付ける。これで機体側は完成。
図7:(Dorsal Aircraft) 完成したコンテナ輸送機を、後部ドアを開いた状態で眺めた図。胴体下はドアが開いたままなのに注意。
図8:(Dorsal Aircraft) コンテナの搭載手順は、ますコンテナ同士を固定し、一体化する。この図では20 ft長さコンテナ3個を接続する様子を示している。接続用ブラケットはコンテナ間で4個ずつ、合計8個が必要になる。
図9:(Dorsal Aircraft) 一体化したコンテナを背骨構造の下に搬入、4箇所のホイストで懸架、背骨構造に固定、機体構造の一部として離着陸を含む飛行中の荷重を受け持たせる。
図10:(Dorsal Aircraft)ドーサル・コンテナ輸送機の完成図。無人輸送機としての完成を目指すが、法令の準備などが整備されるまでは、コクピットにモニター・パイロットが乗務する。
—以上—
Aviation Week Network The Week in Technology, March 19-23, 2018 “Cargo Aircraft uses Containers as Structure” by Graham Warwick
Dorsal Aircraft “Commercial Air Cargo Drone Systems”