元・文部科学大臣秘書官 鳥居徹夫
◆メーデーに政党代表の挨拶なし、連合からも、見放される野党
昨年10月の総選挙を機に、野党第一党の民進党が枝分かれしたことにより、労働団体の連合が支援する議員が、立憲民主党、希望の党、無所属の会、民進党、社民党とバラバラになった。
今年4月28日に都内で開催された連合メーデーに野党代表の挨拶はなかった。
挨拶したのは加藤勝信厚生労働大臣と小池百合子東京都知事ら。
これまで連合と支持協力関係にあった民進党(それ以前の民主党)の代表も、メーデー会場で連帯の挨拶を行っていた。
政党代表の挨拶がなく、壇上にすら上げないというのは、東日本大震災のあった2011(平成23)年だけで、きわめて異例なこと。
立憲民主、希望、民進の各党代表が、メーデーの挨拶で自党アピールを一方的に聞かされるとなると、メーデーに参加した一般組合員がドン引きすることは目に見えていた。
そもそも民進の枝分かれ・分裂は、政党間の勝手な事情である。
政党間のゴタゴタを連合組合員まで巻き込まないでほしいというのが、連合幹部の本音。連合幹部もウンザリしていたのではないか。
◆6野党の審議拒否がつづく国会
一方、国会では野党の審議拒否が目立ち、政府予算成立後の4月以降も断続的に続いている。
野党6党(立憲、民進、希望、共産、社民、自由)は、セクハラ疑惑で財務省事務次官が辞任したことを取り上げ、「麻生太郎財務大臣が辞任するまでは審議を拒否する」として、4月20日から国会を欠席。
またG20(20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議へ出席する麻生大臣の訪米にも反対し、国益のための外交まで人質に取った。
4月26日に衆院予算委員会で行われた集中審議では、与党と野党の日本維新の会とが出席し行われた。
欠席した野党6党に割り当てられた時間はそのまま。質問者不在で時間のみが経過するという、いよゆる「空回し」が2時間近く続いた。その間、安倍晋三首相ら閣僚らが手持ち無沙汰になる。
27日には衆院本会議では働き方関連法案が審議入りし、野党6党は引き続き欠席した。
この4月20日からの国会審議拒否に対し、「大型連休は最大9日間なのに、野党議員は17連休」との批判もされたが、連休明けも野党の審議拒否が継続しそうである。
一方で国会を欠席した野党は、衆院の控室で野党合同ヒアリングが活発に連日行っていた。
連休前の4月第4週(23~27日)だけで、「財務省セクハラ問題」「加計学園問題」「働き方改革虚偽データ疑惑」「イラク日報隠蔽疑惑」の4テーマで計12回。
最も多いのが財務省セクハラ問題で8回に及び、24日、25日、27日は1日に2回行われた。
テレビでも多く取り上げられているように、汚い言葉で官僚を悪者にして責め立てているのが野党である。
◆野党提出の法案審議を、野党が欠席
4月20日の厚生労働委員会は、政府提出の生活保護法改正案などと、野党6会派による対案の審議のため開催された。
6会派の対案は、立憲民主党、希望の党、無所属の会(衆議院民進党の会派)、社民党、共産党、自由党が共同提出。
この日からの国会欠席戦術で、野党6党は欠席。野党提出法案の答弁者(立憲民主党の池田真紀議員)だけが答弁席にいた。
ところが途中で答弁者の池田真紀議員までもが、予告もなく中座欠席した。自民党の質疑者に対する時は不在で答弁席にいなかった。
何と池田真紀議員は黒服に着がえ、野党の女性議員と集団でプラカードを持って財務省に押しかけ、セクハラ疑惑の財務省事務次官の辞任を求めるパフォーマンスを展開していた。
実際、自民党の質疑者に対し、野党は質問とりに来ていた、もちろん質問内容は通告済み。
◆支援団体の連合も、野党の審議拒否に憂慮
4月28日に都内で開かれた中央メーデーで、連合の神津里季生(りきお)会長は挨拶で、野党の国会審議放棄について「国民生活に密接に関わる法案審議がストップしている。国会の立て直しが必要だ」と訴えた。
それに先立つ4月19日の連合記者会見で、神津会長は「単にその委員会に出ないということだけで本当に達成できるのかどうか、国民からしっかりと見られている。委員会での審議につなげていくということは当然そこに向けた努力はされなければならない」「もちろん様々な事柄は、究明されるべきで、並行して進めるということが、なぜできないのかというのが率直な疑問」と、感覚のズレた野党の国会戦術を批判した。
また参考人として、24日の衆院厚生労働委員会に出席した大阪市の吉村洋文市長は「なぜ、維新以外の野党の国会議員がいないのか?」「不祥事追及は大切だが重要な法案審議は別の話で出席拒否は職務放棄」などと批判した。
自ら提案した法案に審議まで拒否することは、国会史上で初めてのことで、連合幹部も唖然としたという。
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