空自、入間基地・航空戦術教導団へ「RC-2」電波情報収集機を配備


2020-10-25(令和2年) 松尾芳郎

 df-elint_1_japanese-air-self-defense-force-promo

図1:(航空自衛隊)空自入間基地「航空戦術教導団」へ配備された「RC-2」電波情報収集機(機体番号202)。今後、2021年、2022年、に各1機、合計3機が配備される。機体各所に大型のアンテナ・ドームが配置されているので、航続距離は「C-2」輸送機の7,600 km (20 ton搭載時) から5,700 kmに減っている。しかし、現用の電波情報収集機・「YS-11EB」の2,200 kmや海自が運用する「EP-3」の4,400 kmに比べて、はるかに行動範囲は広がる。巡航速度はマッハ0.8 ( 890 km/hr )。

スクリーンショット 2020-10-25 16.12.41

図2:(YouTube) 2018-02-06に空自岐阜基地を離陸、初飛行する「RC-2」電波情報収集機。原型「C-2」輸送機は、最大離陸重量141 tonの大型機、容積が大きいので多種の大型測定装置を搭載できる。現用機の最大離陸重量は、「YS-11EB」が24 ton、「EP-3」が56 ton.

スクリーンショット 2020-10-23 14.28.54

図3:(航空自衛隊)2020年10月1日、入間基地「航空戦術教導団」で「RC-2」電波情報収集機の配備記念式典が行われた。RC-2電波情報収集機202号機の前に整列した関係幹部。向かって前列左から4人目が航空幕僚長の井筒俊司空将。

 

令和2年10月1日(木)、航空自衛隊は、入間基地「航空戦術教導団」に「RC-2」電波情報収集機を配備する式典を挙行した。式典では航空幕僚長の井筒俊司空将から「RC-2」配備の意義の説明があり、これに応える形で航空戦術教導団司令の寺崎隆行空将補が運用に向け要員の養成に万全を期し、早急の戦力化を目指す旨、答申があった。

 

航空自衛隊では「RC-2」配備に関連して次のように説明している。「現在の戦闘様相は、技術の進展を背景に、陸・海・空といった従来の領域のみならず、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域を組み合わせたものになっている。「RC-2」の配備は電磁波領域で優勢を確保し、領域を横断する作戦を遂行する上で大きな意義がある。今後運用に向け、試験及び要員の養成を行う。」

「RC-2」電波情報収集機は、2017(平成29年)年度予算で3機分の取得経費が計上済みで、今回配備の202号機は「C-2」輸送機の2号機を改修した機体である。202号機の初飛行は2011年1月であった。その後「YS-11EB」電子情報収集機の後継機として「C-2」202号機に防衛装備庁(当時の技術研究本部)が開発する「将来電子測定器搭載システム(ALR-X)」を搭載することが決まった。2016年から改修に入り、2018年には各種アンテナ、電子機器が搭載された。

防衛省の事業事後評価報告によると、本機は『高度に自動化したシステムを搭載し、敵が発するあらゆる情報とデータを収集・処理・伝送する。また、機首、胴体上面と側面、垂直尾翼頂部のフェアリング内に各種アンテナを配置し、遠距離から広周波帯信号を捕捉・遮断し、敵目標の方位を探知する能力を持つ』と記されている。

つまり敵の「電磁気信号の収集 (collection of electromagnetic signals)」機能だけでなく、電子信号を妨害する「ジャミング(jamming)」機能も備える、と言うことだ。

搭載する電子機器システムは、防衛装備庁が三菱電気(レーダー類)、東芝(電子機器)、日本電気(データー・リンク)、および「C-2」のメーカー川崎重工(レドーム類)、などの協力で開発した「新電子戦システム」。このシステムには、各種変調方式に対応できるソフトウエア受信技術、アンテナ配置を最適化し、広帯域電波の受信を可能とする技術、低被探知化された敵の信号を短時間で検出する分析処理技術、などを含んでいる。

今回の納入の後、2021年度、2022年度にそれぞれ1機ずつ、合計3機が入間基地に配備され、現在入間基地に配備されている「YS-11-EB」電子情報収集機4機と交代する。

「YS-11EB」は1995年から使われていて、ELINT (Electronics Intelligence)機材を搭載、敵の電波・通信を傍受、レーダーを探知・分析する能力を備える。速度480 km/hr、航続距離2,200 km。

「RC-2」電波情報収集機には続きがあり、2020年(令和2年)から2026年(令和8年)完成を目指して「スタンド・オフ電子戦機」への性能向上をすべく、新しい開発がスタートしている。“スタンド・オフ”とは、敵から受ける攻撃の射程外から“電波情報収集”と“電磁波攻撃”を行うという意味。

防衛装備庁の「スタンド・オフ電子戦機」開発事業に関わる「令和2年度政策評価書(事前の事業評価)」には次のような記載がある。

「領域横断作戦」に必要な優先事項として電磁波に関する情報収集、分析能力、情報共有態勢、が必要とし、そのために現用機(海自が運用中のEP-3、UP-3D)の能力向上、と「スタンド・オフ電子戦機」、高出力の電子戦装備、高出力マイクロ波装置、などの研究開発を迅速化する。そして「スタンド・オフ電子戦機」の試作総経費は465億円、令和2年度から同7年度で試作、令和8年度 (2026年)までに飛行試験(費用は別途計上)を実施する。

海上自衛隊では、P-3C対潜哨戒機多数(100機前後)所有しており、この一部をEP-3電子偵察機(5機)とOP-3C画像情報収集機(5機)に改造・配備している。これらは岩国基地第81航空隊に配備、主として東支那海方面での中国海軍の活動の偵察任務に当たっている。

スクリーンショット 2020-10-24 13.50.41

図4:(防衛装備庁)「スタンド・オフ電子戦機」の試作スケジュール。

 

「スタンド・オフ電子戦機」の達成すべき目標として;―

・「データーリンク妨害技術の確立」、低出力、広帯域のデーター・リンク信号を受信可能にし、これを広帯域で妨害できる小型軽量な航空機搭載用の装置を開発する。

・「マルチ電子戦プラットフォーム技術の確立」、電子戦装備のサイズ、電源、冷却、通信、ソフトウエア等の規格化を進め、大規模な改修をせずに新装置の取り付けを可能にする技術を確立する。

スクリーンショット 2020-10-22 16.49.04

図5:(防衛省・令和2年度防衛白書)防衛省発行の「令和2年度防衛白書」に示された「スタンド・オフ電子戦機」(イメージ図)。今回空自入間基地の「航空戦術教導団」に配備された「RC-2」(202号機)とはドーム形状や位置が異なることに注意。2026年に完成する予定。

 

―以上―

 

本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。

 

航空自衛隊ニュース2020-10-01 “RC-2配備記念式典について“

「令和2年防衛白書」第II部 「我が国の安全保障・防衛政策」“防衛力整備の主要事業”

第IV部「防衛力を構成する中心的な要素など」中の「第2章防衛装備・技術に関する諸施策」

令和2年度 政策評価書(事前の事業評価) 防衛装備庁プロジェクト管理部事業管理官(航空区担当) 評価実施時期:令和元年8月

Fly Teamニュース2020-10-03 “航空自衛隊、入間基地にRC-2配備“

TokyoExpress 2018-05-18 “防衛省、新型電子戦情報収集機の開発に取り組む”

お願い:”TokyoExpress.info”への記事投稿者を募集しています。特に「航空・宇宙・防衛」分野に関わる記事の作成に無償でご協力頂ける方を探しています。この分野の記事作成は現在2名で行っていますが、私は90歳になり今後どの位続けられるか判りません。ご協力頂ける方は下記にご連絡ください。投稿要領などをお伝えします。

松尾芳郎 y-matsuo79@ja2.so-net.ne.jp