沖縄駐留の米海兵隊、新型の水陸両用戦闘車(ACV)を受領


3022-7-23(令和6年) 松尾芳郎

沖縄に駐留する米第3海兵遠征軍(III Marine Expeditionary Force)は新型の水陸両用戦闘車(ACV=Amphibious Combat Vehicles) を那覇軍港で受領した(6月29日)。この戦闘車(ACV)は8輪式装甲車で、1972年から使用してきた侵攻用水陸両用車「AAV」(Assault Amphibious Vehicle)の更新となる。

(The US Marine Corps’ III Marine Expeditionary Force received a shipment of Amphibious Combat Vehicles(ACVs) at Naha Military port on June 29, 2024. The ACV is an 8-wheeled armored personnel carrier newly designed to replace existing Marine Corps’ fleet of Assault Amphibious Vehicles(AAV), which has been in service since 1972.)

図1:(BAE Systems) BAEシステムズが設計・製造する水陸両用戦闘車「ACV」は8輪駆動式。写真は「ACV-30」でノルウエイ・コングスバーグ製30 mm機関砲ターレットを装備する。搭載砲はノースロップ・グラマン製[Mk44 Bushmaster II]口径30 mm 機関砲(chain gun)。「AVC-30」は自重 35 ton、積載量は3.3 ton。

[ACV]には次の4種類がある;―

  • 兵員輸送車 (Personnel Variant) [ACV-P]:乗員3名と海兵隊員13名、および2日間の戦闘に必要な装備物資を搭載する。
  • 戦闘指揮車 (Command and Control Variant) [ACV-C]:上陸部隊の戦闘指揮をする通信装置を搭載する。
  • 故障車輌回収車(Recovery Valiant) [ACV-R]:故障した車輌を回収するためクレーン等を搭載する。
  • 30 mm機関砲装備車(30 mm Gun Variant) [ACV-30]:ノルウエイ・コングスバーグ(Kongsberg)製の攻撃用30 mm 機関砲無人ターレットを搭載する。

2018年6月にBAE社と「少量初期生産(LRIP = Low Rate Initial Production)」として2019年秋までに30輌を生産する契約を締結。2020年9月から「量産体制 (FRP= Full Rate Production)」に入った。調達予定は、現在の侵攻用水陸両用車「AAV = Assault Amphibian Vehicle」の更新用として632輌を購入する。内訳は[ACV-P] が最も多く390輌、次いで [ACV-30]が175輌、[ACV-P] 33輌などとなっている。

BAE システムズは、英国発祥の国防企業だが、米国内のスタフォード(Stafford, Virginia)、サンノゼ(San Jose, California)、スターリング・ハイツ (Sterling Heights, Michigan)、エイキン(Aiken, South Carolina)、ヨーク(York, Pennsylvania)の各地の工場や施設を保有し、海兵隊発注のACVの生産・支援に取り組む。

新しい水陸両用戦闘車(ACV)は、40輌がキャンプ・シュワブに輸送され、これから完全武装海兵隊員の上陸作戦に使われることになる。第3海兵遠征軍( III MEF= III Marine Expeditionary Force)は予想される危機に対処するため、これからACVの運用・慣熟訓練を急ぐ。キャンプ・シュワブ(Camp Schwab)は沖縄本島の中央、名護市にある海兵隊の基地、総面積は20 km2である。

2,700 m滑走路のある普天間基地の移転先として現在埋立て工事が進む辺野古基地はキャンプシュワブの東側・太平洋に面した大浦湾にある。

図2:(BAE Systems) 8輪駆動の水陸両用戦闘車「ACV」は、水上航行性能、陸上走行性能、敵攻撃からの生残能力、輸送性能、さらに海兵隊要求に応じた改修の容易さ、など多くの点で、極めて優れた設計になっている。写真は「ACV-P」型、波消し用プレートはたたんでいる状態。

図3:(BAE Systems) 30 mm機関砲コングスバーグ(Kongsberg) MCT-30無人ターレットを装備した「ACV-30」。同じターレットは米陸軍の歩兵戦闘装甲車「ストライカー(Stryker)にも採用されている。コングスバーグ(Kongsberg)はノルウエイ企業だが、米国ジョーンスタウン(Johnstown, Pennsylvania)に工場がある。

図4:(BAE Systems)写真の水陸両用戦闘車「ACV-C」は上陸作戦部隊を指揮する指揮車(Command & Control)で10数本のアンテナが特徴。

図5:(US Defense News)「ACV」の後部の写真。両側に大型スクリューが装備され、これで水上走行をする。

図6:(Naval News) 胴体下部は地面からかなり高く、”V”字型で地雷に対する抗堪性を備える。

侵攻用水陸両用車「AAV =Assault Amphibian Vehicle」

侵攻用水陸両用車「AAV =Assault Amphibian Vehicle」は、海兵隊の上陸作戦に使う水陸両用の歩兵戦闘車で、フォード(Ford Motor)系列の旧ユナイテッド・デフェンス社(United Defense)、現在の「U.S. コンバット・システムズ 社(U.S. Combat Systems)」が開発製造し、1972年から50年以上に亘り使用されている。

2018年6月、海兵隊は「AAV」を、BAEシステムズが開発する次世代型の[ACV]に更新することを決めた。「AAV」は、米海兵隊が1,300輌保有するのを始めとし、我国陸自水陸機動団の58輌、台湾軍の90輌、タイ軍の36輌など世界各国で使われている。

図;(Wikipedia) 海兵隊が使用する侵攻用水陸両用車「AAV =Assault Amphibian Vehicle」。重量29 ton、長さ8 m、幅3.3 m、乗員3名+海兵隊員21名搭載可能、兵装はMk 19 40 mm擲弾用自動発射機 (automatic grenade launcher)と12.7 mm重機関銃。水上航続距離36 km、水上速力13 km/hr、エンジンはカミンズ(Cummins) 525馬力。

終わりに

我が国では「10式戦車」、「16式機動戦闘車」などの開発で培った技術を発展させ、現在の1,200馬力級デーゼル・エンジンを改良3,000馬力を目標に新エンジン開発に取組んでいる(防衛装備庁)。このエンジンが実用化できれば南西諸島に存在する珊瑚礁を克服する新型の水陸両用戦闘車が実現できる、と言う。このエンジンでキャタピラー(履帯)を駆動して接地走行し、水上走行時ではスクリューではなくウオータージェットで推力を出す仕組みが検討されている。

完成すれば「ACV」の性能を大きく超えることになり、米海兵隊も注目していると言う。

―以上―

本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。

  • Marines Media room 1 JUL 2024 “III Marine Expeditionary Force welcomes Amphibious Combat Vehicles to Okinawa”
  • USNI News March 19, 2024 “Report to Congress on Marine Amphibious Combat Vehicle” by US Naval Institute Staff
  • NavalToday.com July 11, 2024 “US Marine Corps welcomes amphibious combat vehicle in Okinawa” by Fatima Bahtic
  • NavalToday.com November 9, 2023 “US Marine Corps orders 40 additional amphibious combat vehicles” by Fatima Bahtic
  • BAE Systems 1 Feb. 2024 “BAE Systems delivers firepower to the Marine Corps with new Amphibious Combat Vehicle test variant”
  • European Security and Defense April 8, 2024 “BAE Systems contracted for more ACV-Ps and for ACV-R test vehicles” by Peter Felstead