令和6年9月、我国周辺での中露両軍の活動と我国/同盟諸国の対応



2024-10-5(令和6年)松尾芳郎

令和6年9月我国および周辺で、中露両軍は領空・領海の侵犯を含め、その活動を著しく増加した。これに対して我国および同盟諸国は、以下に示す様々な軍事演習で反攻姿勢を明確にした。

(Chinese and Russian military violation inside or around Japanese air space and territorial waters are increasing unprecedented ever in September, 2024. Following are the details of each cases. Responding the militant violations, Japan and allies put various scale military maneuvers.)

1ヶ月間の中露両軍の主な活動は次の通り。各表題の冒頭に示した数字は、「図18」日本地図に「赤字」で示した数字の場所に対応している。

  • :(1) 8月26日:中国軍Y-9情報収集機、長崎県男女群島付近で領空侵犯

図1:(統合幕僚監部)「Y-9JB」。機首・胴体側面の前・後にアンテナを装備する、尾部の潜水艦探知用のMADブームはない。

図2:(統合幕僚監部[Y-9]は男女群島南東の空域で旋回を繰り返しその中で領空侵犯をした。緊急発進した空自戦闘機は無線で警告したのみ。

  • :8月31日:中国海軍測量艦、鹿児島県口永良部島付近で領海侵犯

8月31日早朝、鹿児島県口永良部島の南西の我国領海内に測量艦が侵入、およそ2時間滞留後に領海を離れ南に立ち去った。海自哨戒機と掃海艇が監視にあたったが警告射撃はしていない。NHK報道によると、中国海軍の測量艦が日本の領海内を侵犯したのは2023年9月以来これで10件目、潜水艦や情報収集艦などの領海侵犯を含めると合計で13回目の侵犯、と言う。測量艦は、海底の地形、水深、海水の温度、などを調べ、潜水艦の航路資料を作成する。

これに対し、外務省の鯰博行アジア太平洋局長は駐日中国大使館の施泳公使に対し、電話で遺憾の意を表し抗議した。1年間で13回も領海侵犯されて “遺憾砲” だけで済ます国は日本以外にはない。

図3:(統合幕僚監部)シュパン級測量艦(Shupang class survey ship)はNATO 名、中国名は636A型海洋総合調査艦。排水量6,000 ton、長さ130 m、速力17.5 kts。8月31日に領海侵入をしたのは636A型「海洋25号」、防衛省では「艦番号25」と呼んでいる。同型艦は6隻が就役。

図4:(統合幕僚監部)口永良部島は屋久島の西12 kmにある島。中国海軍測量艦はトカラ列島との間の狭い海峡に2時間も居座り、海底などの調査をした。

  • :(3)9月18日:中国海軍空母「遼寧」およびミサイル駆逐艦1隻、与那国島と西表島の間の接続水域を通過、太平洋上・フィリピン海で9月22日〜26日の間、艦載機の離発着訓練を実施

空母「遼寧(16)」、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(123)の2隻は、9月17日・18日に東シナ海から尖閣諸島魚釣島西の海域を通り与那国島と西表島の海峡を通過、太平洋に進出した。同20日には宮古島南東1,360 km/フィリピン東方の太平洋上に進出。同26日まで沖ノ鳥島南西400~1000 kmの海域で、艦載戦闘機および艦載ヘリの発着訓練を実施、J-15戦闘機は250回、艦載ヘリは160回離着艦を行った。

その後、2隻は南西に進み、フィリピン南のミンダナオ島を迂回、南シナ海に向かった。

[遼寧]を護衛した「ルーヤン(旅洋)III級」ミサイル駆逐艦は「昆明」級・満載排水量7,500 ton「准南 (123)」で、いわゆる”イージス艦”後期分10隻の一つ、最新型艦である。

海自は佐世保基地第2護衛隊所属の「あさひ (DD-119)」6,800 tonを派遣、警戒監視にあたった。「あさひ(DD-119)」は、満載排水量6,800 ton、全長151 m、速力30 kts、2018年就役で最新装備を備える。同級艦は「しらぬい(DD-120)」がある。従来型護衛艦「DD」の整備はこれで終了、現在は次世代型フリゲート「もがみ(FFM-1)」級の大量配備に移行中である。

図5:(統合幕僚監部)9月20日フィリピン東方海上で艦載機の発着訓練を繰り返す中国海軍空母「遼寧(16)」。ロシア海軍用の未完成空母「バリヤーグ」を洋上ホテルにするという名目で購入(ウクライナから)、大連で7年かけて空母に仕上げたもの。満載排水量6万トン、全長304.5 m、スキージャンプ甲板を装備。J-15艦載戦闘機24~36機とヘリコプター10機程度を搭載する。

図6:(統合幕僚監部)空母「遼寧」が艦載機の発着訓練を行ったフィリピン東方の海域。

  • :(4)9月22日:中国海軍艦艇5隻とロシア海軍艦艇4隻、宗谷海峡を東進、オホーツク海で合同演習。

ロシア海軍は9月11日日本海、太平洋、北極海にまたがる大規模な演習を開始した。日本海では中国艦艇3隻と航空機15機が参加した。演習開始に先立ちプーチン大統領は「ロシア海軍にとりこの規模の演習は30年振りになる、緊張が高まる国際情勢の中、友好国との軍事協力は特に重要だ」と述べた。この演習は15日まで続いた。

中国海軍とロシア国防相は21日、第1段階は9月11日〜15日で終了、合同演習「北方連合2024」は第2段階に入ったと発表した。

第2段階では。9月22日早朝から、中国艦隊とロシア艦隊が日本海から宗谷海峡を通過し、一斉にオホーツク海に入った。

宗谷海峡を通過した艦艇は次の通り。

中国海軍艦艇はレンハイ級(南昌級/055型)ミサイル駆逐艦「無錫 (104)」、ルーヤン(旅洋)III級(昆明級/052型)ミサイル駆逐艦「西寧 (117)」、ジャンカイ(江凱)II級 (054型)フリゲート「臨淅 (547)」、フチ級(福池級(903型)補給艦「大湖 (889)」、ドンデイアオ級(東調級/815型)情報収集艦(艦番号794)の5隻。

ロシア太平洋艦隊艦艇はウダロイ級ミサイル駆逐艦(1155型大型対潜艦)「アドミラル・バンテレイエフ」と「アドミラル・トリプツ」(艦番号は548と564)、グリシャV級小型フリゲート/コルベット艦(艦番号332と375)の4隻。それに加えて7月18日にオホーツク海に入っていたビシニア級情報収集艦(208)も参加した。

これら9隻はオホーツク海で演習をしている。報道によると、中国・ロシアは2021年以来5回目となる太平洋での「合同パトロール」を行う、と発表しており、今回の動きはこれに関連したものらしい。去年(2023)8月には合同パトロール艦隊合計11隻がアリューシャン列島に接近、米海軍ミサイル駆逐艦4隻およびP-8A哨戒機が睨み合った事があった。

これらの動きに対し、海上自衛隊は、横須賀基地の護衛艦「ゆうぎり」、大湊基地の護衛艦「はまぎり」、余市基地のミサイル艇「くまたか」、八戸基地のP-3C哨戒機を出動させ、監視と情報収集にあたった。

また米国は、アラスカ警備を担当する北方軍を動員、中露艦隊がアリューシャン列島へ侵攻する場合に備え、ミサイル巡洋艦「レイク・エリー (USS Lake Erie / CG070)」、ミサイル駆逐艦「ステレット(USS Sterett / DDG 104)」など2隻をベーリング海に派遣、また陸軍3個部隊を同列島の空軍基地シェミア(Shemya)島に派遣して防衛態勢を固めた。

今回の「合同パトロール」に参加した中露艦艇の写真を以下に示す。

図7:(統合幕僚監部)レンハイ級(南昌級/055型)ミサイル駆逐艦「無錫 (104)。満載排水量13,000 ton、最大速力32 kts、全長180 mの大型艦、70口径130 mm単装砲、ミサイル垂直発射筒(VLS)は64セル+48セル、その他の装備を含め前級「昆明(052D)」より大幅に性能を向上させている。中国海軍最新のイージス艦、同型は8隻ある。

図8:(統合幕僚監部)艦番号117は「西寧」2017年就役、ルーヤン(旅洋)III級は「昆明級・052D型」駆逐艦で中国版イージス艦。満載排水量7,500 ton、全長157 m、VLSは前後に32セルをそれぞれ配備、各級合わせて20隻が配備中で5隻が建造中。

図9:(統合幕僚監部)ジャンカイ(江凱)II級フリゲート(054型)は、満載排水量4,000 ton、全長134 m、32セルVLSを備える。同型は40隻ほどが就役。

図10:(統合幕僚監部)フチ(福池)級補給艦「太湖 (889)」は[903A]型で、2014年就役。満載排水量23,000 ton、全長178.5 m、速力20 kts、補給用門型ポストを2基備え、前が燃料用、後ろがドライカーゴ用となっている。後部にはヘリコプター甲板/格納庫がある。同型艦は9隻。

図11:(統合幕僚監部)「ドンデイアオ(東調)級情報収集艦 (815A型)」は電子偵察艦と呼ばれ、9隻が就役中。満載排水量6,000 ton、全長130 m。中央に大型追跡レーダー/探知距離1,000 km、前部艦橋には小型レーダー、後部環境にはHF波からX波までの通信電波検出アンテナがある。

図12:(統合幕僚監部)ウダロイI級駆逐艦/1155型大型対潜艦は満載排水量8.500 ton、全長163.5 m、最大速力30 kts、対空ミサイル8連装VLS発射装置を8基、対潜ミサイル4連装発射機2基、などを装備、艦尾にはKa-27対潜ヘリ2機を搭載する。同型は13隻が就役中。

図13:(統合幕僚監部)前図の説明を参照。

図14:(統合幕僚監部)グリシャV級フリゲート/1124型小型対潜艦は満載排水量1,200 ton、全長71.6 m、速力34 kts。グリシャ級は1970年代から整備が始まり90隻以上が建造された。グリシャV級は、1985年から建造され28隻が就役中。主砲は口径76 mm単装砲に換装され、対空ミサイル4K33短SAM発射筒(20発)、対潜ロケット砲2基(96発)など、かなり強力である。

図15:(統合幕僚監部)前図の説明を参照。

  • :(5)9月23日:ロシア軍Il-38哨戒機、北海道礼文島付近で3回にわたり領空侵犯、空自戦闘機が警告のためフレアを発射

9月23日、ロシア軍Il-38哨戒機が北海道礼文島北の領海上空を3回に渡り領空侵犯した。これに対し航空自衛隊は戦闘機を緊急発進させ、警告のためフレアを発射した。林芳正官房長官は「領空侵犯に対する措置としてフレアを発射したのは初めてだ」と述べた。

Il-38哨戒機は、午後1時過ぎ、午後3時半過ぎ、午後3時40分過ぎ、の3回礼文島の領空を侵犯、空自北部航空方面隊の第2航空団(千歳基地F-15)および第3航空団(三沢基地F-35)の戦闘機が緊急発進、Il-38に対し無線による警告を行い、さらにフレア発射で明確な警告意思を伝えた。

林官房長官は「極めて遺憾、ロシア政府に厳重抗議した」と述べた。

木原防衛相によると、中露軍機による領空侵犯はこれまでに48件、従来は無線による警告のみだったが、今回初めてフレアによる警告を行った、という。

日米首脳会談や日米豪印4カ国首脳会議に出席中だった岸田首相は「領土・領海・領空は断固として守り抜く」と決意を表明し、関係閣僚に警告のためフレア発射を命じた。

ロシア外務省は、10月2日「日本が主張する領空侵犯はしていない、政治問題化するな」と反論している。

図16:(統合幕僚監部)9月23日、礼文島近くの領空を侵犯したロシア軍Il-38哨戒機。原型はIl-18ターボプロップ4発旅客機で、改造して対潜哨戒機とした機体。1970年から配備が進んだ。現在配備されているのは[Il-38N]型である。全長39.6 m、翼幅37.4 m、全微重量63.5 ton、4,250馬力ターボプロップ4基を装備する。

図17:(統合幕僚監部)9月23日の午後2時間に渡り礼文島近くの領空付近で滞空飛行を繰り返したIl-38哨戒機の航跡。この過程で3回の領空侵犯を行った。

図18:2024年8月末〜9月末の間、日本列島周辺で中露両軍による重大案件5件を示す図。図中「赤の数字」は、ここで記述した案件5項目の発生箇所を示す。

ベーリング海での動き

北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)発表によると、9月4日、6日、7日、11日、15日の5日間に渡りロシア軍機Tu-142対潜哨戒機、Il-38情報収集機等がアラスカ州防空識別圏(ADIZ)に侵入した。

9月15日には、ロシア海軍原子力潜水艦2隻を含む4隻の艦艇がアラスカ北西のチュクチ湾/チュコート湾(Chukchi Sea)を航行、一時アラスカ州のEEZ(沿岸から48 km)内に侵入した。

北米防衛を担当する「アラスカNORAD支部(ANR=Alaskan NORAD Region)」は、いずれの事例に対しても、アンカレッジ郊外のエレメンドルフ・ルチャードソン統合基地(Joint Base Elmendorf-Richardson)から第3航空団所属のF-22戦闘機を緊急発進させ、アラスカ州への侵入を防いだ。

図19:アラスカNORAD支部(ANR )はアンカレッジ近郊の「エルメンドルフ・リチャードソン統合基地にある。 ここには米空軍第3航空団F-22戦闘機が配備中。

図20:(American Military News 2024-9-21) 9月6日アラスカ州の防空識別圏(ADIZ=Air Defense Identification Zone)に侵入したロシア軍Tu-142長距離対潜哨戒機に対しF-22戦闘機が緊急発進、無線で警告し退去させた。

以上9月の中露軍の主な活動を述べたが、これに対し我が国・同盟諸国も共同訓練を繰り返し抑止力を示した。以下にその状況を述べる。

  • 9月10日、空自F-35A戦闘機は太平洋上で米空軍B-2爆撃機と共同訓練

9月10日空自三沢基地の第3航空団「F-35A」ステルス戦闘機4機は、太平洋上で米太平洋空軍(PACAF)所属「B-2」ステルス爆撃機と共同訓練を行った。訓練には要撃管制が任務の空自・北部航空警戒管制団レーダー、および米空軍KC-135空中給油機が参加した。訓練目的は、戦技向上と日米共同の有事対処能力の向上である。

太平洋空軍(PACAF)の発表によると、「B-2」スピリット(Spirit)爆撃機は、オーストラリア空軍のアンバリー航空基地(Amberley Air Force Base, Australia)から飛来した。同機は、ホイットマン空軍基地(Whiteman AFB, Missouri)第110遠征爆撃団 (110th EBS=Expeditionary Bomb squadron)所属の「B-2」で、現在3機がダーウイン(Darwin)近郊のアンバリー基地位派遣されている。ここを拠点として“インド太平洋での爆撃飛行訓練”を豪空軍などと実施中で、その中の1機である。空自F-35A戦闘機との共同訓練で、日本を含む地域の平和を守る意思を内外に示すことができた。

図21:(US Air Force photo by Senior Airman Samantha White) 9月10日太平洋上の空域で、美空軍の「B-2」爆撃機と編隊を組む空自「F-35A」戦闘機4機。

図22:(US Air Force photo by Senior Airman Samantha White) 9月10日、KC-135給油機から給油される「B-2」。給油機はハワイのエアナショナル・ガード所属機。B-2爆撃機はノースロップ・グラマン製で1987~2000年の間で21機を製造した。230 kg精密誘導爆弾Mk 82 JDAMを80発搭載できる。単価は10億ドル(1,100億円)、開発・試験・整備などを加えると単価は20億ドル以上になる。高度15,000 mで給油せずに11,000 kmを飛ぶ。2024年現在19機が配備中で、次期爆撃機「B-21 Raider」が配備される2032年まで使用される。

  • 9月9日-19日、海自護衛艦「ありあけ」は、オーストラリア・ダーウイン周辺海域でオーストラリア海軍主催の多国間共同訓練「KAKADU 2024」に参加

[KAKADU]演習は1993年から毎年開催され、今年は潜水艦を含む13隻の艦艇、10機の航空機、30カ国から3000人以上の兵員が参加して行われた。主な参加は次の通り。

オーストラリア海軍から;アンザック(Anzac)級フリゲートの「スチュアート (HMAS Stuart /FFH 153)」および「ワラムンガ (HMAS Warramunga /FFH 152)」

米海軍から:米海軍第7艦隊から第15駆逐艦隊(DESTRON 15)のミサイル駆逐艦「デユーイ (USS Dewey /DDG-105)」

海上自衛隊から:「むらさめ」級護衛艦9番艦で佐世保基地第1護衛隊群所属の「ありあけ (DD-109)」および厚木基地第51航空隊所属「P-1」哨戒機

図23:(海上自衛隊)「ありあけ」は満載排水量6,100 ton、全長151 m、兵装は、62口径76 mm単装砲、ハープーンなど対艦ミサイル4連装発射筒2基、対潜ロケット発射用VLS 16セル、対空ミサイル発射用 VLS 16セルなどを装備する。搭載機はSH-60K哨戒ヘリコプター2機。

  • 9月25日、海自護衛艦「さざなみ」は、オーストラリア、ニュージランド艦艇と共に台湾海峡を通過、26日に南シナ海で米海軍、フィリピン海軍と合流、多国籍訓練

9月25日、護衛艦「さざなみ」は、海自として初めて台湾海峡を東シナ海から南シナ海に向け通過、10数時間かけて「航行の自由作戦」を実行した。オーストラリア海軍ミサイル駆逐艦「シドニー(HMAS Sydney / DDG 42)」およびニュージランド海軍補給艦「アオデアロア (HMNZS Aotearoa/ A-11)」も同行した。

26日からは南シナ海フィリピンの排他的経済水域(EEZ)で行われた多国間訓練 (MCA=Maritime Cooperative Activity)に参加した。この「MCA」訓練については統合幕僚監部から28日付で「日米豪日新共同訓練の実施について」と題して発表された。訓練には、米第7艦隊ミサイル駆逐艦「ハワード(USS Howard, DDG-83)」、オーストラリア空軍「P-8A」哨戒機、フィリピン海軍フリゲート「アントニオ・ルナ (BRP Antonio Luna/FF151)」哨戒艦「エミリオ・ハシント (BRP Emilio Jacinto / PS 35)」が参加した。

台湾海峡は狭い部分でも幅130 kmある。沿岸国の主権が及ぶ範囲は沿岸から22 kmまでの領海で、その外の海域は国際水域となり、国際的に航行の自由が認められる。

自衛艦による初の台湾海峡通過は、頻発する領空侵犯・領海侵犯に対抗する意味を込めて岸田首相の指示で実施した、と報道された。これについて、複数の関係者は「遅きに失する。中国の顔色を窺い過ぎる」と指摘している。

不思議なことに、この台湾海峡通過について、官房長官・防衛相は「個々の艦艇の動向は秘密事項になる」として公式発表はしていない。これも中国政府の意向を忖度してのことか。

中国政府は「台湾独立」勢力に誤ったシグナルを送り、中国の主権に危害を及ぼす挑発行為だ、断固反対する」と述べた。

これより数日前の9月17日には、米第7艦隊所属の[P-8A]哨戒機が台湾海峡上空を通過「自由で開かれたインド太平洋を守る」飛行を行った。

図24:(海上自衛隊)台湾海峡を通過した護衛艦「さざなみ/DD-113」は「たかなみ」型の4番艦。満載排水量6,300 ton、全長151 m、最大速力30 kts、54口径127 mm単装砲、Mk.41 VLS 32セル、等を備える。

図25:(US 7th Fleet Photo)9月26日、南シナ海でのMCA訓練で、オーストラリア空軍P-8A哨戒機が、フィリピン海軍フリゲート「アントニオ・ルナ」と哨戒艦「エミリオ・ハシント」および海自護衛艦「さざなみ」と米駆逐艦「ハワード」、の上空を飛行する写真。

  1. 9月22日-25日、海自護衛艦は米海軍強襲揚陸艦と沖縄東方太平洋上で共同訓練を実施

海自ミサイル駆逐艦(イージス艦)「こんごう(DDG-173」」は米海軍強襲揚陸艦「ボクサー」と沖縄東方の太平洋上で共同訓練を行った。

図26:(海上自衛隊)並走する「こんごう」と「ボクサー」。ミサイル駆逐艦(イージス艦)「こんごう(DDG-173」は、満載排水量9,500 ton、全長161 m、速力30 kts、1993年就役の我が国初のイージス艦。兵装は、54口径127 mm単装砲、ハープーン・ミサイル4連装発射筒2基、Mk.41 VLS 90セルなどを装備する。佐世保基地第1護衛隊群に所属。

米海軍強襲揚陸艦「ボクサー (USS Boxer /LHD-4)」は、「ワスプ」級の4番艦、満載排水量40,700 ton、全長257 m、速力23kts、1995年就役、F-35B VTOL戦闘機6機、MV-22Bオスプレイ輸送機12機、CH-53シースタリオン・ヘリコプター4機およびLCAC揚陸艇3隻などを搭載する。上陸部隊約1,800名を輸送できる。

  • 9月23-28日、米国、オーストラリア、日本、3カ国海軍はオーストラリア北部チモール海で共同訓練を実施

9月23日〜28日のの間オーストラリア北部のアラフラ海(Arafura Sea)に隣接するチモール海 (Timor Sea)で日米豪3カ国海軍が共同演習を実施した。参加したのは、米海軍第7艦隊から第15駆逐艦隊(DESTRON 15)のミサイル駆逐艦「デウーイ (USS Dewey /DDG-105)」、オーストラリア海軍からフリゲート「スチュアート(HMAS Stuart /FFH-153)」、日本海自から駆逐艦「ありあけ(DD-109)」の3隻。訓練を通じて「自由で開かれたインド・太平洋」構想の強化を支援した。

図27:(US Navy Photo by Mass Communication Specialist 1st Class Greg Johnson)「ありあけ(DD-109)」(左)と「スチュアート(FFH 153)」(右)、米海軍「デウーイ(DDG 105)」から撮影した。日時は9月24日チモール海。

―以上―