令和6年10月、我国周辺での中露軍活動と我国/同盟諸国の対応


令和6年10月、我国周辺での中露軍活動と我国/同盟諸国の対応

2024(令和6年)-11-1 松尾芳郎

令和6年10月我国および周辺で、中露両軍は領空・領海の侵犯を含め、その活動を著しく増加した。これに対して我国および同盟諸国は、以下に示す様々な軍事演習を実施、反攻姿勢を明確にした。

(Chinese and Russian military violation inside or around Japanese air space and territorial waters are increasing unprecedented ever in October, 2024. Following are the details of major issues. Responding the militant violations, Japan and allies put various scale military maneuvers.)

1ヶ月間の中露両軍の主な活動は次の通り。

  • 10月14日、中国軍、台湾を囲み大規模演習

図1:(時事通信/東部戦区微信)14日に中国軍東部戦区が発表した台湾周辺での演習区域。台湾本島周辺6箇所と、台湾が実効支配する蓮江県、金門島、馬祖島付近を含む。

中国軍・東部戦区は、10月14日台湾を取り囲む形で大規模な軍事演習を行った。同様な演習は今年5月に実施して以来2回目となる。東部戦区司令部は「台湾独立行動への強力な警告だ」と主張した。

台湾の頼清徳総統が10月10日の台湾独立記念日双十節式典の演説で「中国には台湾を代表する権利はない、中国は台湾の人々の祖国にはなり得ない」と語った。この演習はこれを牽制する狙いがあり、台湾政府は強く反対した。

演習は「連合利剣2024B (Joint Sword 2024B)」と名付けられ、東部戦区所属各軍の連携技量を向上させる事を目的として1日だけ行われた。

東部戦区の主席報道官は次のように語った。

「陸・海・空・ロケット各軍が台湾本島に対し、東西南北の各方面から、協力して上陸に向かい、主要な港湾を封鎖して、台湾軍の地上目標を攻撃、崩壊させる事を想定して訓練を行った。これには空母「遼寧」も参加した。この演習は中国の主権と統一を守る当然かつ必要な行動である」。

中国政府が発表した演習区域は、台湾の周囲6箇所と台湾が支配している中国本土沿岸の3つの小さな島々付近の海域である。

中国国防軍組織の一つである海警局(海上保安庁に相当)は4隻の艦艇でこれら沿岸の3つ海域でパトロールを行い、台湾漁船の監視にあたった。

台湾政府の国防部(国防省)はこれに対し「中国軍の挑発行為に強烈な非難を表明する」と批判。頼総統は「我々は国家を守る自信と能力がある」と述べた。

台湾国防部によると、演習は1日で終了したが、その間に中国軍機110機が台湾に接近、艦艇26隻が周辺海空域で活動した。

中国軍は今年5月、頼清徳総統の就任演説に反対して今回と同様な大規模演習「連合利剣 2024A」を2日間にわたって行っている。今回は期間は短かくなったが、演習区域を台湾の近くに設定して威圧した。

これに対し軍事専門家N氏は「中国側の報道は誇大、国内向けではないか」と指摘している;―

台湾周辺には通常でも1日あたり10隻近い艦艇が確認されている。今回演習に新たに加わったのは16隻程度、演習海域6ヶ所に分けると、1ヶ所あたり2隻に過ぎない。もし戦争になれば台湾軍は直ぐに対艦ミサイルで撃沈できる。実際には海上封鎖する動きはなかった。台湾に向け上陸作戦を行う陸戦隊が上陸演習を行なった形跡もない。対艦巡航ミサイルCJ-10射程2,000 kmを東部戦区に展開し、台湾支援にあたる外国艦艇の攻撃演習を実施した、としているが、ウクライナ戦争で示されているように、ロシアの同級ミサイルは90 %が迎撃されている。その他。

このような事で「中国軍は台湾を威嚇するだけでなく、中国国内に向け“命令があればいつでも実行する”とアピールし、国内に高まっている経済的不満をそらす意図があったのか、と想像する。

次項「10月15日、中国海警局艦艇、尖閣周辺で日本側と対峙」でも似たような自国内向けの報道操作が行われた。

図2:(時事通信/AFP)台湾空軍新竹(Hsinchu)基地のミラージュ(Mirage) 2000ジェット戦闘機、2024年10月14日撮影。台湾空軍はミラージュ2000を53機、F-16 Block 70を66機(追加66機を発注中)、その他を保有し、かなり強力だ。

10月26日、米国国防総省は、台湾に対し総額20億ドル(約3000億円)の武器輸出を決定したと発表した。これには最新型の防空ミサイル・システムで「NASAMS」(National Advanced Surface-to-Air Missile Systems)とレーダー・システムを含んでいる。

NASAMSは2022年11月からウクライナ軍で供用開始、来襲する敵ミサイルをほぼ100 %撃墜している強力な防空システム。ウクライナ軍では6連装ランチャー、16システムが稼働している。

今回台湾に供与されるのは,最新型のNASAMS 3で、3システムとそれから発射するAIM-120 AMRAAM-ER対空ミサイル123発を含む。

NASAMSは、ノルウエイのコングスバーグ(Kongsberg Defense & Aerospace)が設計、米国のレイセオン(Raytheon Missile & Defense)と共同で生産中の地対空防空システムである。射程は50 km、付属レーダーの探知距離は120 km。

これに対し中国外務省は「中国の主権を侵害する行為だ、抗議する」と声明を発表した。

台湾への武器売却に対抗して中国軍は、10月27日にSu-30戦闘機を含む19機が、午前から中国海軍艦艇とともに台湾周辺で「協同戦闘即応哨戒」と名付けた演習を開始、台湾周辺の領空領海にに侵入した。

  • 10月15日、中国海警局艦艇、尖閣周辺で日本側と対峙

図3:(八重山日報/仲間均氏撮影)10月15日尖閣諸島周辺海域で日本漁船「鶴丸」の近くを航行する中国「海警2501」。5,000 ton級、艦首にH/PJ 26H型76 mm速射砲、マストには対空捜索警戒レーダーを装備する。同型4隻を配備中。浙江省温州市に隣接する東部戦区玉環海軍基地を母港にしている。ここから尖閣諸島までは僅か345 kmなので容易に往復できる。

第11管区海上保安庁によると、尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域では10月21日現在中国海警局の「海警2501」、「海警2203」の2隻が航行していた。これらは10月4日以来17日間連続で接続水域を航行している。

海警局は17日、尖閣諸島で操業中の日本漁船について「中国領海に不法侵入した日本漁船を追い払った」と発表した。この漁船に乗っていた石垣市市会議員の仲間均氏は、「追い返された事実はない」と反論している(10月25日)。仲間氏と山下義雄竹富町議など3人は漁船「鶴丸」に乗船し、15日と16日の両日、尖閣諸島の南小島周辺で操業していた。

その際、「海警2501」、「海警2204」の2隻が領海に侵入し「鶴丸」に近づく動きを見せた。しかし大きく距離をとって並走するだけだった。「鶴丸」は操業を終え16日に石垣島に戻ったが、海警局艦艇は距離を保って途中まで追尾してきたが反転した。海保の巡視船は終始鶴丸の護衛にあたり中国艦艇を近付けないようしていた。

海警局は17日に鶴丸について「日本漁船を追い払った、日本側に対し尖閣周辺での漁業活動を中止するよう要求した」、と発表をした。これは明らかに海警局が日本に対し如何に強硬な姿勢で対峙しているかを、国内向けに宣伝したものに他ならない。

  • 10月7日〜24日、中露連合艦隊、合同パトロールで日本列島を一周

統合幕僚監部は10月7日から24日までの3週間の中国海軍およびロシア海軍艦艇の動向を発表したが、10月は10件を超えこれまでになく活発だった。中国軍は10月14日に台湾周辺で大規模演習を実施しており、これと呼応する目的もあったようだ。この中には日本列島周回と無関係の航行も含まれるが、それにしても多い。すなわち;―

・10月7日:ロシア海軍フリゲート3隻と補給艦が対馬海峡から与那国島―西表島海峡を通過太平洋へ

・10月7日:小型フリゲート1隻と掃海艇2隻が宗谷海峡を抜けオホーツク海へ

・10月14日:中国海軍ミサイル駆逐艦2隻とフリゲート1隻と補給艦、ロシア海軍駆逐艦2隻、合計6隻が太平洋上の沖ノ鳥島―沖大東島―宮古海峡―東シナ海へ

・10月14日:中国海軍空母とミサイル駆逐艦1隻が与那国島南太平洋上で艦載機発着訓練を実施

・10月15日:ロシア海軍フリゲート1隻が宗谷海峡を通過オホーツク海へ

・10月15日:中国海軍ミサイル駆逐艦2隻とフリゲート1隻と補給艦が宮古海峡を太平洋から東シナ海へ

・10月15日:中国海軍情報収集艦が太平洋から大隈海峡を抜け東シナ海へ

・10月15日:中国海軍ミサイル駆逐艦1隻とフリゲート1隻が尖閣諸島から与那国島―台湾の海峡を経由・太平洋に出て反転、宮古海峡を通り東シナ海へ

・10月15日:中国海軍空母とミサイル駆逐艦2隻が与那国島南で艦載機発着訓練をし、その後台湾の南バシー海峡を通過、南シナ海へ

このうち日本列島1周「合同パトロール」をまとめると;―

海上自衛隊は10月11日から同14日にかけて、沖ノ鳥島、沖大東島付近の太平洋上を西に向かう中国およびロシア艦艇6隻を発見した。

中国艦艇は4隻、レンハイ級ミサイル駆逐艦(104)、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(117)、ジャンカイII級フリゲート(547)、フチ級補給艦(889)。これら4隻は、9月7日〜8日に東シナ海―津軽海峡を通り日本海に入り、それから宗谷海峡―オホーツク海―太平洋と航行を続けて、沖ノ鳥島北方水域に出て来た艦隊である。

ロシア艦艇は2隻、ウダロイI級駆逐艦(548および564)は、9月22日~23日に小型フリゲート2隻(332) (375)を伴って中国艦隊と合流し、日本海から宗谷海峡―オホーツク海へと航行、ここで小型フリゲートと別れ、2隻は中国艦隊と共に太平洋に進出、沖ノ鳥島へ向かった。2隻はそれから補給艦と合流、宮古海峡を通り東シナ海へ入り、10月22日~23日に対馬海峡を通過、日本海に入った。

これが中露海軍当局が云う「太平洋の合同パトロール」である。

TokyoExpress 2024-10-5「9月、中露軍の活動」5ページでも本件について述べた。今年9月での動きで、米国北方軍は、これら艦隊がアリューシャン列島に侵攻することを警戒、陸海軍部隊を展開・対応した。しかし中露艦隊はアリューシャン列島には向かわず、南下して日本列島周回にしたものである。

以下に“統幕”が発表した中露海軍艦艇6隻の写真を掲載するが、説明は前月の報告「9月、中露軍の活動」に記述済みなので参照されたい。

図4:(統合幕僚監部)統幕が発表した中露艦隊の航跡図に、分かりやすいように加筆した。

  • 10月20日、中国軍情報収集機と爆撃機、宮古島沖で旋回飛行

10月20日昼間、中国Y-9情報収集機とH-6爆撃機それぞれ1機が東シナ海から飛来、沖縄本島と宮古島の間、宮古海峡を通過し太平洋に進出、石垣島南方の空域で旋回飛行をしたのち、再び往路と同じ航路で東シナ海に立ち去った。

図5:(統合幕僚監部)10月20日、宮古海峡を通過太平洋に出たY-9、8月26日に男女群島で領空侵犯した機体と同じ?

図6:(統合幕僚監部)H-6はロシアTu-16バジャーのライセンス生産機。改良してH-6Kとなり、翼下面にDF-26D巡航ミサイル6発を搭載する。乗員4名、長さ35 m、翼幅33 m、最大離陸重量76 ton、爆弾搭載量9 ton、航続距離6,000 km、エンジンはロシア製ソロビヨフ・ターボファン推力10 tonを2基。

図7:(統合幕僚監部)10月20日、Y-9情報収集機とH-6爆撃機の飛行経路。

  • 10月23日、ロシア軍爆撃機2機、護衛戦闘機2機、日本海本州沿岸に接近

ロシア国防省は10月22日午前、ロシア空軍爆撃機Tu-95MS型機2機が日本海の公海上を10時間にわたって飛行したとして映像を公開した。この飛行にはSu-30SM戦闘機2機が護衛に当たった。

Tu-95MSはRaduga Kh-55巡航ミサイル(射程2,500 km)など各種ミサイル15 tonを携行するプラットフォーム機。エンジンは出力15,000馬力ターボプロップ4基を搭載、最大離陸重量188 ton、プロペラは8枚羽2重反転式。

統合幕僚監部は、同日午前、Tu-95爆撃機2機と護衛戦闘機2機が大陸方面から我が国領空に向けて飛行、石川県能登半島沖で変針、旋回を繰り返した後、立ち去った。そして同日午後再び4機が我国領空に向けて飛来、青森県西から北海道西に飛行したのち立ち去った、と発表した。

これに対し航空自衛隊中部方面隊等の所属戦闘機が緊急発進、領空侵犯に備えた。

図8:(統合幕僚監部)10月22日、Tu-95MS爆撃機2機と護衛のSu-30 SM戦闘機2機の航跡。

図9:(ロシア国防省)ウクラインカ(Ukrainka)空軍基地を離陸するTu-95MS戦略爆撃機。詳しくは「TokyoExpress 2021-3-16 “3月11日、ロシアTu-95MS戦略爆撃機を含む9機、防空識別圏に侵入“」を参照されたい。

図10:(Google)第37航空軍(37th Air Army)326重爆撃機師団に所属する「Tu-95MS」戦略爆撃機は、旧満州国とロシアの境界を流れる黒龍江(アムール河)の北東、ハバロフスク地方の「ウクラインカ空軍基地」に配備されている。ここはスポポドヌイ(Svobodny)市近郊にあり、長さ3,500 m滑走路を持つロシア最大の戦略空軍基地。スボボドヌイ市には他にICBM基地と大規模な核弾頭貯蔵施設がある。

図11:(ロシア空軍)Su-30SMは多目的戦闘機でロシア空軍で130機使用中。複座のSu-27戦闘機が原型で、カナード付きとし2013年から配備開始。エンジンはSaturn AL-31Fアフタバーナー付き低バイパス比ターボファン推力27,600 lbs を2基装備、航続距離3000 km、最大速度マッハ2。翼下面12箇所のハードポイントに8 tonの各種ミサイルを装備する。

  • 2024年度上半期での緊急発進

2024年度上半期、4月1日から9月30日の期間、における空自戦闘機の緊急発進は358回で、昨年度同期の424回に比べ70回ほど減少した。

緊急発進の対象は中国機が67 %、ロシア機が32 %であった。

空自の方面隊別では、北部航空方面隊が90回、中部航空方面隊が12回、西部航空方面隊が45回、沖縄の南西航空方面隊が211回、の緊急発進を行った。

上半期での特異事項は、8月の中国Y-9情報収集機による長崎県男女群島沖の領空侵犯、9月のロシアIl-38哨戒機による北海道礼文島沖の領空侵犯、さらにロシア哨戒機が本州を周回飛行したこと、および中国空母が太平洋で艦載戦闘機などの1000回以上に及ぶ離発着訓練を行ったことなどがある。

図12:(統合幕僚監部)2024年度上半期における緊急発進の対象になった中国軍機・ロシア軍機の飛行パターン。期間中の内訳は、中国機に対しては241回、ロシア機に対しては115回の緊急発進であった。

  • 日米共同統合演習[Keen Sword 25]

「キーン・ソード」は我国防衛のため日米両軍の統合運用を実働訓練を通じて検証し、その維持・向上を図る演習で、今年は17回目で最大規模。

期間は10月23日~11月1日、主な訓練場所は、自衛隊施設、在日米軍施設および区域、民間空港、港湾、奄美大島、徳之島、沖永良部島、我国周辺の海

空域、を含む。

主な訓練項目は、主要部隊司令部の指揮活動、対艦戦闘、上陸作戦、空挺作戦、防空ミサイル訓練、島嶼防衛、海上交通の安全確保、補給、通信システム、領域横断作戦、等の向上。

参加部隊は;―

日本から:統合幕僚監部、陸上・海上・航空各幕僚監部、自衛隊サイバー防護隊、陸・海・空・3自衛隊(水陸機動団を含む)

米軍から:インド太平洋軍、太平洋陸軍、太平洋艦隊、太平洋空軍、太平洋海兵隊第3海兵遠征軍(III MEF)、在日米軍、インド太平洋宇宙軍、

同盟国から:オーストラリ軍およびカナダ軍

演習に参加するのは:―

自衛隊:人員約33,000名、艦艇約30隻、航空機約250機

米軍 :人員約12,000名、艦艇約10隻、航空機約120機

演習開始前、10月22日に日米指揮官が長崎県佐世保に停泊するアメリカ海軍ドック型揚陸艦「サンデイゴ」で共同記者会見を行った。中国艦艇の領海侵入などを例に挙げ、「武力による現状変更の試みは認めないと強い意志示す、この演習にはこうした戦略的意義がある」と強調した。

図13:(N B C長崎放送)ドック型揚陸艦「サンデイゴ:の艦上で記者会見をする吉田圭秀統合幕僚長(右)とステファン・ケラー(Stephan T. Koehler)太平洋艦隊司令官(左)。吉田陸将・統合幕僚長は東京大学工学部出身、陸上自衛隊第8師団長、陸上幕僚長を経て2023年3月統合幕僚長に就任。ケラー海軍大将はF-14やF/A-18戦闘機のパイロット、第9空母打撃群司令官などを歴任、今年4月に太平洋艦隊司令官に昇進した。

図14:( US Navy Photo)ドック型揚陸艦「サンデイゴ(USS San Diego / LPD-22)」は「サン・アントニオ(USS San Antonio)」級揚陸艦の6番艦、今年9月19日から佐世保に配属。満載排水量25,000 ton、全長208.5 m、CH-46 ヘリ4機またはMV-22B を2機搭載、上陸艇LCAC 2隻を搭載する。これで上陸兵員700名を輸送する。同型艦は計画26隻、就役済みは15隻。佐世保には同型艦[USS New Orleans / LPD 18]、[USS Green Bay/LPD 20]を含め3隻が常駐している。

図15:(US Forces Japan) 10月24日、北海道矢臼別演習場で陸自部隊は、米第3海兵師団・第12海兵沿岸旅団、陸軍第17砲兵旅団と共同でHIMARS(高機動ロケット砲システム)の実弾射撃演習を実施した。射程70 km 、GPS誘導のGMLRSが発射される様子。6発が搭載できる。海兵隊C-130輸送機で矢臼別演習場の計根別飛行場に空輸、HIMARSを展開した。

図16:(KyoidoNews)10月23日、航空自衛隊宮崎県新田原基地に着陸した米空軍F-22戦闘機。太平洋空軍には、F-22配備部隊としてElmendorf AFB, Alaskaの第3航空団、Hickam AFB, Hawaii の第15航空団がある。巡回配備としてしばしば嘉手納基地に来ている。

図17:(南海日日新聞社)10月28日午後、奄美空港でタッチ・アンド・ゴウ訓練を繰り返す空自F-15戦闘機

図18:(宮崎日日新聞)10月30日、宮崎空港に海自哨戒機P-1が飛来、燃料補給後飛び去った。

日米統合共同演習「キーン・ソード25」に対抗して中露両軍は新たな動きを見せた;―

  • 中国軍機3機が沖縄本島-宮古島の間を通過、往復

10月28日、Y-9情報収集機、Y-9哨戒機、BZK-005偵察型無人機、各1機が東シナ海から飛来、沖縄本島-宮古島の間を通り大平洋に進出、反転して東シナ海に戻った。

図19:(統合幕僚監部)10月28日撮影のY-9情報収集機

図20:(統合幕僚監部)同じくY-9哨戒機、こちらは尾部に潜水艦探知用のMADブームがついている。

  • ロシア軍、オホーツク海で戦略核戦力演習を実施

10月29日、ロシアのプーチン大統領は、戦略核戦力の演習を開始したと発表した。敵の攻撃に対する「大規模核攻撃」を想定した演習で、陸海空の「核の3本柱」演習である。着弾目標地点は北海道に面したオホーツク海。核弾頭搭載可能な大陸間弾道弾(ICBM)や巡航ミサイルを発射し、戦力を誇示した。

プーチン氏は「地政学的な緊張の高まり等を考慮すると、最新式な常時使用可能な核戦略部隊を保有することが重要」と述べた。

原子力潜水艦から潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)「ブラワ」を発射した。

ロシア北西アルハンゲリスク州プレセック宇宙基地からカムチャッカ半島に向けてICBM「ヤルス」を発射した。

戦略爆撃機Tu-95から巡航ミサイル(Raduga Kh-55/射程2,500 km)を発射した。

ペロウソフ国防相は演習の目的を「敵の核攻撃に対する大規模な反撃」を想定したもので、すべてのミサイルは目標に着弾した、と語った。

図21:(ロシア国防省)10月29日、プレセック宇宙基地からカムチャッカ半島に向けてICBM「ヤルス」を発射した。

図22:「RS-24ヤルス」は2010年から戦略ロケット軍に配備中のICBMで固体燃料ロケット、重量50 ton、長さ22.5 m、直径2 m、弾頭に搭載する核弾頭は300-500 ktの場合は3-6発、150 ktの場合は6-10発になる。

図23:「R-30ブラワ(Bulava)」は2018年からボレイ型原子力潜水艦7隻に配備中のSLBMである。3段式固体燃料ロケット、重量36.8 ton、長さ12 m、直径2.1 m、弾頭には150 kt核弾頭(MIRV) 6発を搭載する。射程は8,300 km。ボレイ型原潜(水中排水量24,000 ton)にはR-30ブラワSLBMを16発搭載可能。

終わりに

2024年10月は、記載の相当する事案が多くあったが紙面の都合で紹介しなかったものが多くあった。すなわち;―

  • 15日〜25日行われた「陸自水陸機動団が参加した米比海兵隊との実働訓練(カマンダグ24)」、
  • 8日公表のハワイでの「JPMRC 25-01 / Joint Pacific Multinational Readiness Center」演習に陸自北海道美保路駐屯地の第6即応機動連隊が参加したこと、8日~18日インド洋での日米印豪共同訓練「Malabar 2024」に海自艦が参加したこと、
  • 北朝鮮が4日、31日に日本海に向けて弾道ミサイルを発射したこと、

最後に10月16日「文集オンライン」に掲載された「中国の台湾侵攻2027年説に強まる警戒心」by布施哲氏、の意見は注目に値する。

―以上―