2024(令和6年)-12-12 松尾芳郎
令和6年11月は、10月31日北朝鮮が新型ICBMを発射したのに加え、我国および周辺で、中露両軍は領空・領海の侵犯を含め、その活動を著しく増加している。これに対して我国および同盟諸国は、以下に示す様々な軍事演習を実施、反撃姿勢を明確にした。
(On top of North Korean‘s launching a new ICBM to Sea of Japan Oct. 31, Chinese and Russian military violation inside or around Japanese territorial air and water spaces are increasing unprecedented ever in November 2024. Japan and allies put various scale military maneuvers. responding such militant violations. Following are the details of major issues.)
11月・1ヶ月間の中露両軍の主な活動は次の通り。
10月31日、北朝鮮が日本海に向け新型ICBM火星19号を発射
11月1日、中国空母、遼寧、山東、2隻が南シナ海で演習
11月3日、中国海警局最大の1万トン級巡視艦、尖閣諸島へ
11月3日、中国軍偵察・攻撃型無人機、宮古海峡経由し太平洋を往復
11月4日、中国空母山東など3隻、バシー海峡で訓練
11月11日、ロシア海軍原潜を含む4隻が宗谷海峡を通過、日本海へ
11月15日、ロシア海軍情報収集艦が対馬海峡経由宮古海峡から太平洋へ
11月21日、ロシア軍情報収集機が日本海能登半島沖に飛来
11月27日、中国海軍駆逐艦が東シナ海から宮古海峡を通過太平洋へ
11月28日、中国海軍フリゲートが東シナ海から対馬海峡経由し日本海へ
11月28日、中国海軍フリゲートが東シナ海から宮古海峡経由し太平洋へ
11月29日、30日、中露軍爆撃機4機など多数が日本海・東シナ海・沖縄付近の空域で示威飛行
11月・1ヶ月間の日米および同盟諸国の対応は次のとおり。
10月31日、日本海上で日米空軍が共同訓練実施(北鮮ICBM発射に対応)
10月31日午後、韓国江原道太白射撃場で米韓空軍が大規模攻撃演習(Freedom Flag)を実施(北鮮ICBM発射に対応)
11月3日、東シナ海北部上空でB-1爆撃機を含む日米韓空軍が共同訓練(北鮮ICBM発射に対応)
11月6日、紀伊半島沖太平洋上で日韓両海軍が共同訓練実施
11月7日、中谷防衛相、海自及び米第7艦隊横須賀基地を視察、合わせて停泊中の韓国練習艦隊を訪問
11月12日、若狭湾で日仏海軍が共同訓練(Oguri-Verny 24-5)実施
11月13日、西太平洋上で米空母ジョージ・ワシントンを含む日米韓3カ国海軍等が共同訓練(Second Exercise Freedom Edge)を実施
11月17日、オーストラリア北部ダーウイン基地で、日米豪3カ国国防相が会談、共同訓練の継続実施で合意、有事の際の共同作戦遂行を目指す
11月18日、サンデイゴ沖で日米海軍が共同訓練実施
11月21日、米第7艦隊空母ジョージ・ワシントンが横須賀基地に帰還
11月25日、空自F-15戦闘機近代化改修プログラム、1億3000万ドルでボーイングが受注
11月26日、米第7艦隊P-8A Poseidon哨戒機が台湾海峡を通過/中国軍は戦闘機と艦艇で追尾
11月29日、米国政府、台湾に武器売却3億8500万ドルを決定
以下に、上記のうち主な項目について説明する;―
10月31日、北朝鮮が日本海に向け新型ICBM「火星19」を発射
図1:(朝鮮中央通信・共同)10月31日北朝鮮が行った新型ICBM「火星19」の発射実験。
北朝鮮メデイアは11月1日、同国が10月31日発射したのは新型のICBM「火星19」だと報じた。
防衛省によると、ICBMは高角度で発射され約1000 kmを飛翔し、北海道奥尻島の西約200 kmのEEZ(排他的経済水域)外に着弾、飛行時間は86分でこれまでの最長を記録した。飛行高度は7,600 kmに達し最高であった。
ロフテッド軌道でなく通常の軌道で打ち上げれば、射程は15,000 kmを超え北米の東海岸の到達する。発射は移動式発射台 (TEL=Transport Erector Launcher)、片側12輪の大型トレーラー、から垂直に近い角度で打上げられた。これは火星19が前身の火星18と同様、固体燃料ロケットであることを示す。弾頭が丸みを帯びているのは、将来多弾頭搭載型にするためと思われる。
これに対し直接脅威を受ける日米韓3カ国は、直ちに共同で対処訓練を実施し、北朝鮮に対する警告の姿勢を明確にした。すなわち;―
- 10月31日、日本海上空で日米空軍が共同訓練実施
航空自衛隊から第3航空団(三沢基地)F-35戦闘機4機、第7航空団(百里基地)F-2戦闘機4機、米空軍から第35戦闘航空団(三沢基地)F-16戦闘機4機、合計12機が参加、北朝鮮に近い日本海上空で各種戦闘訓練を実施し、万一攻撃があれば直ちに反撃できる姿勢を示した。
- 10月31日午後、韓国江原道太白射撃場で米韓空軍が大規模攻撃演習(Freedom Flag)を実施
Freedom Flagは10月21日から11月1日まで行われた訓練だが、韓国空軍からF-35A戦闘機、F-15K戦闘機、KF-16戦闘機、米空軍・海兵隊からF-35B戦闘機、F-16戦闘機、MQ-9リーパー無人攻撃機が参加し、延べ110機で行われた。江原道太白射撃場では、移動車両及び固定目標に対しGBU-12空対地誘導爆弾(250 kg)実弾を投下、破壊する訓練を行った。
- 11月3日、東シナ海北部の上空でB-1爆撃機を含む日米韓空軍が共同訓練
11月3日には日米韓3カ国空軍による共同訓練を北朝鮮に近い空域の九州西方の東シナ海北部上空で実施した。参加したのは、航空自衛隊から第8航空団(築城基地)のF-2戦闘機4機、米空軍から”全地球攻撃軍団(GSC= Global Strike Command)所属のB-1B爆撃機1機と三沢基地所属のF-16戦闘機3機、韓国空軍からF-15K戦闘機4機の合計12機である。
図2:(航空自衛隊)米空軍全地球攻撃軍団(GSC)所属のB-1B Lancer爆撃機を先頭に日米韓戦闘機11機が東シナ海北部で編隊飛行する様子。
図3:(航空自衛隊)B-1B Lancer爆撃機はRockwell製/現在はボーイングが整備・改修を担当。45機がGSCに配備されている。可変後退翼で最大離陸重量216 ton、機内ウエポンベイに34 ton、外部ハードポイントに23 tonの各種爆弾・ミサイルを搭載できる。
11月1日-4日の間、中国海軍空母「遼寧」「山東」の2隻、南シナ海で共同訓練
11月1日、中国空母、遼寧、山東、2隻が南シナ海で演習
11月4日、中国空母山東など3隻、バシー海峡で訓練
11月3日、中国軍TB-001偵察・攻撃無人機が宮古海峡を往復
中国海軍空母「遼寧」「山東」の2隻を含む2つの機動部隊が初めてバシー海峡から南シナ海の海域で共同訓練を行った。これは南シナ海で中国が不法占拠するスプラトリー諸島、スカボロー礁に対するフィリピン側の領有権主張を牽制する意味で行われたもの。新華社通信によると「実戦を想定した訓練を実施した」と言う。これでフィリピンを支援するアメリカやオーストラリア、日本に対抗する姿勢を示した。「遼寧」は今年9月に日本の接続水域に侵入したり、11月には台湾を取り囲む大演習にも参加している。また中国は3隻目の空母「福建」の建造も進めている。
11月3日には2個空母機動部隊の活動を支援する形で、中国軍TB-001偵察・攻撃無人機が東シナ海から宮古海峡を通過太平洋に進出した。南進してバシー海峡付近まで進出、反転して往路と同じ経路で東シナ海に戻った。
図4:(AFP)南シナ海の領有権で各国が主張する境界線を示す。中国は1953年から[9段線]と称して赤線で示す台湾を含む範囲の領有を主張し始めた。これに対しハーグ常設仲裁裁判所が「法的根拠がなく国際法に違反する」と裁定した。フィリピンは黄色線で示すスプラトリー諸島、スカボロー礁を含む範囲を自国領とし、中国と争っている。フィリピンの立場を支援しているのは、アメリカ、日本、オーストラリア、台湾その他の西側諸国。
図5:(新華社/陳夢㬢)空母「山東」/左、「遼寧」/右、を含む艦隊と上空を編隊飛行するJ-15B艦載戦闘機。空母に随伴するのは、052D型駆逐艦5隻、055型駆逐艦3隻、054A型フリゲート1隻、901型補給艦2隻の大艦隊である。
図6:(新華社/蒲海洋)空母「遼寧」機動部隊。
図7:(統合幕僚監部)TB-001偵察・攻撃無人機は双胴機で、主翼下面のハードポイントに各種ミサイル1トンを搭載できる。全長10 m、翼幅20 m、航続時間は35時間とされる。今年7月10日にも同じ経路を飛行した。
ロシア海軍原潜を含む4隻が宗谷海峡を通過、日本海へ
11月11日にロシア海軍原子力潜水艦ヤーセン、ウダロイ級フリゲート(543)、マルシャン・ネデリン級ミサイル観測支援艦(331)、バクラザン級救難曳船の4隻がオホーツク海から宗谷海峡を通過し日本海に入った。このうちヤーセン級原子力潜水艦は海上自衛隊として初めて確認した。
ロシア太平洋艦隊の原潜基地は、カムチャツカ半島の南端・太平洋に面したビリュチンスク(Vilyuchinsk)にある。ここにヤーセン級原潜の3番艦「ノボシビルスク(K-573)」および「クラスノヤルスク(K-571)」が配備されているので、いずれかが初めて日本海に入ったようだ。
ヤーセン級原潜は、極めて静粛で探知が難しい。2017年8月のNATO演習で、当時試験中だったヤーセン級原潜“カザン”がNATO艦隊を追尾する事件があった。NATO側は “カザン”を捕捉するのに苦労し、延べ20機の哨戒機を動員したと言われる。ヤーセン級原潜の搭載ミサイルは、超音速巡航ミサイルP-800オニックス、3M54Kカリブルなどで、わが国安全保障上最大の脅威の一つとなり得る。早急な対策が必要である。
詳しくは「TokyoExpress 2017-09-23 “ロシア次世代型原潜ヤーセン級2番艦[カザン]、NATO演習を偵察“」を参照されたい。
図8:(統合幕僚監部)
図9:(統合幕僚監部)
図10:(統合幕僚監部)
図11:(統合幕僚監部)ヤーセン級原潜は885型原子力潜水艦、2014年就役が始まり、北方艦隊に2隻、太平洋艦隊に2隻、計4隻が配備中。現在追加3隻を建造中。水中排水量13,800 ton、全長119-139 m、OK-650V加圧水型原子炉で蒸気タービン1基を駆動、水中速力31 kts、533 mm魚雷発射管10門とミサイル垂直発射装置VLS を8セル装備する。
11月7日、中谷防衛相、海自及び米第7艦隊横須賀基地を視察、また停泊中の韓国練習艦隊を訪問
11月7日、中谷 元 防衛相は、海上自衛隊横須賀基地、在日米海軍横須賀基地、を訪問視察した。併せて来訪中の韓国海軍練習艦隊を訪問、歓迎行事に参加した。
これに先立ち前日の6日は、紀伊半島沖の太平洋上で、海自練習艦「はたかぜ/TV-3520」5,900 tonは、韓国海軍の練習艦隊:揚陸艦「マラド(馬羅島)」同「チョンジャポン(天子峰)」、補給艦「デチョン(大清)」と戦術運動及び通信訓練を行なった。これら3隻は訓練終了後に横須賀基地に入港した。
中谷防衛相は、日本の防衛の要と言うべき横須賀基地を視察し、高い使命感を持って任務に精励する日米隊員の姿を間近で確認、激励した。その後、来泊していた韓国海軍練習艦隊揚陸艦「マラド(馬羅島)」満載排水量19,000 tonに乗艦、歓迎行事に参加した。
図12:(乗り物ニュース)横須賀基地に寄港した韓国海軍揚陸艦「マラド(馬羅島)LPH-6112」。2021年6月就役の新造艦で竹島の韓国名「独島」級の2番艦。満載排水量19,000 ton、全長200 m。上陸部隊700名、戦車6両、水陸両用車7両、LCACエアクッション艇2隻を搭載する。甲板上には大型ヘリ発着スポット5箇所が設けてある。
横須賀基地は旧帝国海軍鎮守府が置かれていた我国最大の海軍基地、これを継承して海上自衛隊基地としている。しかし敷地面積の3割を使用しているに過ぎず、7割は米海軍第7艦隊が使っている。
横須賀基地配備の海自艦艇部隊は空母「いずも」を含む第1護衛隊群と潜水艦「じんりゅうSS-507」「しょうりゅうSS-510」を含む第1潜水隊群、などで構成されている。
横須賀基地を母港とする米第7艦隊は、第5空母打撃群/CSG-5、この中には空母「ジョージ・ワシントンCVN-73」(配備は今年11月22日以降)、第15駆逐艦隊(DESRON 15)、それに揚陸指揮艦「ブルー・リッジ(LCC-19)」、強襲揚陸艦「アメリカ LHA-6」などを含む第11水陸両用戦隊(FHIBRON 11)などの大艦隊で構成されている。
11月13日、西太平洋上で米空母ジョージ・ワシントンを中心日米韓3カ国海軍等が共同訓練(Second Exercise Freedom Edge)を実施
米空母ジョージ・ワシントン CVN-73は横須賀基地に赴任する途中、日米韓3カ国海軍は11月13日に太平洋上?東シナ海北部?で第2回目となる共同訓練「フリーダム・エッジ/Freedom Edge」に参加した。2023年8月にキャンプ・デイビット(Camp Davit)で行われた3カ国首脳会議で決定した覚書に基づく訓練である。3カ国の国防相は、北朝鮮が核戦力と弾道ミサイルの増強を続ける中、3カ国が連携して抑止力を高めるために行う共同訓練と位置付けている。
参加部隊は次の通り。
- 日本:ミサイル駆逐艦(イージス艦)「はぐろ/DDG-180」満載排水量10,250 ton、P-3哨戒機、F-35戦闘機、F-15戦闘機、F-2戦闘機、E-767早期警戒管制機、
- 米国:空母ジョージ・ワシントン(USS George Washington/CVN-73)、ミサイル駆逐艦ヒギンズ(USS Higgins/DDG-76)、同マック・キャンベル(USS Mc Campbell/DDG-85)、同デユーイ(USS Dewey/DDG-105)、P-8哨戒機、F-35戦闘機、F-18戦闘機、KC-135給油機、
- 韓国:ミサイル駆逐艦ソエ・ユ・ソンニョン(西厓柳成龍/DDG-993)、チュンムゴン・イ・スンシン(忠武公李舜臣/DDH-975)、P-3C哨戒機、F-35戦闘機、F-15戦闘機、
訓練は、3カ国から第5世代戦闘機F-35が参加し、陸海空3軍の領域(マルチドメイン領域という)で最先端の防空能力を実証し、さらに弾道ミサイル対処訓練、対潜水艦訓練、対水上艦訓練など、合同部隊の活動能力を高めるべく実施され成果を収めた。
図13:(U.S. Navy 7th Fleet)米空母ジョージ・ワシントン CVN-73を中心に3カ国海軍ミサイル駆逐艦6隻で編成する艦隊。第2回フリーダム・エッジ共同訓練は11月13日、北朝鮮の攻撃開始を阻止するため、朝鮮半島南部の海域で実施された。訓練海域は公表されていない。
11月26日、米第7艦隊P-8A Poseidon哨戒機が台湾海峡を通過/中国軍は戦闘機と艦艇で追尾
11月26日、米第7艦隊のP-8Aポセイドン(Poseidon)哨戒機が台湾海峡の台湾側の公海上空を通過、「自由で開かれたインド太平洋」にコミットする意味で“航行のの自由作戦”を行なった。
これに対し、中国軍は戦闘機を発進、艦艇を派遣してP-8A哨戒機を監視・追跡した。中国政府は、台湾に関しては中国vs米国で意見が異なり対立があるので立ち入りを拒みたい、と述べた。
米国は台湾にとり、最大の支援国でかつ武器の供給国である。そして米国の艦艇と航空機は定期的に台湾海峡の通過をして、台湾の自治を守っている。
図14:(U.S. Navy/MCS2 Caitlin Flynn)11月26日、台湾海峡の公海上空を飛行する米第7艦隊P-8Aポセイドン哨戒機。
11月29日、30日、中露軍爆撃機4機など多数が日本海・東シナ海・沖縄付近の空域で示威飛行
台湾の頼成徳総統は11月30日、就任後初めての外国訪問に出発した。往路はハワイで下院議長ぺロス氏と電話会談、現地政府高官と会見などをし、太平洋上のマーシャル諸島、ツバル、パラオを訪問、帰路はグアム島に立ち寄り帰国、6泊7日の外遊を終えた。
米国政府は、頼総統の出発の前日29日に、台湾にF-16戦闘機改修に必要な新型レーダーや部品など3億8500万ドル(約600億円)の売却を決め、その旨議会に通告した。バイデン政権下での台湾への武器売却は今回で18回目になる。
中国が今回の訪問に反対して台湾周辺での軍事演習を強化すると予想されていた。台湾では空軍が防空演習を行うなど警戒を強めている。
頼総統外遊に時期を合わせ、11月29日、30日の両日に中国軍機とロシア軍機はそれぞれ個別にあるいは編隊を組んで日本海、東シナ海、太平洋上で大規模な演習を行なった。
29日には、午前に中国H-6爆撃機2機及び同Y-9情報収集機1機が東シナ海から日本海に飛行、この際中国軍J-16戦闘機2機が護衛のため同行した。午後には同じH-6爆撃機2機とロシアTu-95爆撃機2機及びロシアSu-35戦闘機1機が日本海から東シナ海に向けて飛行した。
図15:(統合幕僚監部)11月29日、ロシアTu-95爆撃機、中国H-6爆撃機などの飛行航路。
11月30日には午前から午後にかけて、中国H-6爆撃機2機及びロシアTu-95爆撃機2機が共同で東シナ海から宮古海峡を通過太平洋に進出、しばらくして反転、往路同じ経路で東シナ海に戻った。当該4機の爆撃機が太平洋西に進出する際には中国軍J-16戦闘機4機と型式不明の1機、それに中国軍Y-20空中給油機1機が同行した。そして4機の爆撃機が東シナ海に戻る際にはJ-16戦闘機2機が護衛に当たった。他の機は別れてバシー海峡を通り本土に戻ったようだ。
この爆撃機4機の飛行に先行して中国軍Y-9情報収集機2機が宮古海峡を通過太平洋に出ている。
ロシア軍Tu-95爆撃機2機は、中国軍H-6爆撃機2機と東シナ海で別れた後、宮古海峡を数回往復して航続性能を誇示し、対馬海峡経由でシベリアに戻った。
29日、30日の中国軍機ロシア軍機の行動で、両軍の連携が一層緊密になったことが示されている。また、中国軍のY-20空中給油機が姿を現したこと、Y-9情報収集機の最新型が出現した事などが目新しい。
図16:(統合幕僚監部)11月30日、Tu-95、H-6爆撃機など多数機が宮古海峡を通過、太平洋を南下したのち大半は往路と同じ経路で東シナ海に戻るも、一部はバシー海峡経由して台湾を回り中国本土に戻った。
図17:(統合幕僚監部)同じく30日、Tu-95爆撃機は中国軍H-6と別れた後、再び宮古海峡海域を往復して日本海に戻った。
以下に、緊急発進領空侵犯を防いだ空自戦闘機が撮影したこれら中国ロシア空軍機の写真を例示する。
図18:(統合幕僚監部)11月29日、中国軍H-6爆撃機。H-6はロシアTu-16のライセンス生産機。改良してH-6Kとなり、翼下面にDF-26D巡航ミサイル6発を搭載する。乗員4名、長さ35 m、翼幅33 m、最大離陸重量76 ton、爆弾搭載量9 ton、航続距離6,000 km、エンジンはロシア製ソロビヨフ・ターボファン推力10 tonを2基。
図19:(統合幕僚監部)11月29日、中国軍Y-9情報収集機
図20:(統合幕僚監部)11月29日、中国軍J-16戦闘機。ロシア製Su-30K2をベースに、瀋陽航空機で開発した多目的戦闘機。国産のAESAレーダー、WS-10AエンジンA/B時推力3万ポンドを2基装備。作戦行動半径1500 km。
図21:(統合幕僚監部)11月29日、ロシア軍Tu-95爆撃機
図22:(統合幕僚監部)11月29日、ロシア軍Su-35戦闘機。スーホイが開発、KnAAPO航空機工場が製造する長距離多用途戦闘機。2014年から配備開始、110機ほどが使われている。最大離陸重量34.5 ton、サトールン117SターボファンA/B時推力32,000lbsを2基装備、航続距離3,600 km(高空)、最大速度マッハ2.25(高空)、兵装は各種ミサイル等8 tonを搭載可能。
図23:(統合幕僚監部)11月30日、中国軍H-6爆撃機
図24:(統合幕僚監部)11月30日、中国軍Y-20空中給油機とJ-16戦闘機
図25:(統合幕僚監部)11月30日、中国軍J-16戦闘機
図26:(統合幕僚監部)11月30日、中国軍Y-20空中給油機。Y-20輸送機を給油機にした機体。YY-20Bと呼ぶこともある。エンジンをロシア製から瀋陽航空機(AVIC)製WS-20ターボファンに換装、2023年3月に就航したばかり。最大離陸重量220 ton、給油燃料は90 ton搭載可能という。
図27:(統合幕僚監部)11月30日、中国軍新型Y-9情報収集機。Y-9LG電子戦機らしい。早期警戒機KJ-200と似た“平均台”型ジャミング用アレイアンテナを搭載する。このアンテナで複数の目標に対し遠距離から電子攻撃をする。2023年に配備された模様。
図28:(統合幕僚監部)11月30日、ロシア軍Tu-95爆撃機。1956年から配備開始、一旦生産を中止したが1983年から改良型Tu-95MS爆撃機が製造された。乗員7名、長さ49.5 m、翼幅51.1 m、最大離陸重量188 ton、航続距離15,000 km、エンジンはクズネツオフ製ターボプロップ出力15,000 SHPを4基。胴体内に6連装巡航ミサイル・ランチャーを備え、翼下面のパイロンに同ミサイル10発を携行できる。
図29:(統合幕僚監部)11月30日、Y-9情報収集機。
―以上―