令和7年2月、我国周辺での中露軍活動と我国/同盟諸国の対応


2025年3月7日(令和7年) 松尾芳郎

令和7年2月の我が国周辺における中露両軍の活動は前年末までの状況に戻る。これに対し我国および同盟諸国は、警戒を緩めることなく抑止力強化に努めている。

(Chinese and Russian’s military maneuvers around Japanese territorial air and sea spaces got back to the state of last December. Japan and allies are putting up same level of defensive moves as previous. Following are the details of major issues.) 

防衛省統合幕僚監部、米第7艦隊などが公表した1月における我国周辺の中露両軍の軍事活動は以下の通り。注目すべき事案については後半に述べる。

中露両軍の主な活動

2月5日、ロシア海軍艦艇3隻、与那国島・西表島間を通過太平洋へ

2月6日、中国軍無人機2機、与那国島・台湾間を東シナ海・太平洋を飛行

2月10日、ロシア海軍情報収集艦、宮崎県日向灘海域を遊弋し、大隈海峡経由東シナ海へ(2月12日参照)

2月10日、中国海軍情報収集艦、東シナ海から宮古海峡経由太平洋へ

2月11日、中国軍Y-9情報収集機、東シナ海から宮古海峡を通過、沖縄本島南方上空を旋回、往路と同じ経路で東シナ海へ

2月11日、中国軍無人機、東シナ海から与那国島・台湾間を通過太平洋へ、往路と同じ経路で戻る

2月11日、ロシア軍情報収集機Il-20、京都府経ヶ崎沖に接近、反転して戻る

2月12日、ロシア海軍情報収集艦(2月10日と同一)、対馬海峡を通過、日本海へ

2月12日、中国軍艦艇7隻、東シナ海から宮古海峡通過、太平洋へ

2月20日、ロシア海軍情報収集艦、東シナ海から宮古海峡経由太平洋へ

2月26日、午前、中国軍無人機(BZK-005)が東シナ海から宮古海峡を経て太平洋奄美大島に接近、反転して同じ経路で戻る。午後に偵察・攻撃型無人機GJ-2が同じ経路を飛行

我が国、同盟諸国の対応

1月30日、防錆装備庁、ドローン群を無力化する高出力マイクロ波兵器開発を発表

2月6日、海自護衛艦「あきずき」台湾海峡を通過、南シナ海へ

2月6日、南シナ海で日米豪比4カ国共同訓練を実施

2月6日、2月10〜18日の間、フィリピン東方太平洋上で日米仏3カ国共同訓練(Pacific Steller)[Multi-Large Deck Event]を実施

2月12日、2月17日~4月3日の間、豪州方面派遣訓練にフリゲート「のしろ/FFM-3」を派遣

2月13日、日米統合弾道ミサイル防空訓練を全国基地と周辺で2月24~27日の間実施

2月13日、防衛省、CH-47JAヘリコプター17機を発注、ボーイング/川崎重工で生産

2月16日、海上自衛隊、機雷捜索用水中無人機[OZZ-5]を公開

2月18日、2月19日~3月2日、沖縄周辺海空域で日米共同揚陸艦訓練を実施

2月21日、日本海上空で日米空軍戦闘機部隊が共同訓練を実施

中露両軍の主な活動

  • 2月5日、ロシア海軍艦艇3隻、与那国島・西表島間を通過太平洋へ

ロシア海軍ステレグシチー級フリゲート2隻(339および343)およびドウブナ級補給艦の3隻が、2月3日に日本海から対馬海峡を通過、2月5日には東シナ海から沖縄県西端の西表島-与那国島間の海峡を抜け太平洋に進出した。

図1:(統合幕僚監部)

図2:(統合幕僚監部)

図3:(統合幕僚監部)

  • 2月6日、中国軍無人機2機、与那国島・台湾間を東シナ海・太平洋を飛行

2月5日、台湾南を迂回したと思われる中国軍無人機1機が太平洋から与那国島と台湾の海峡を通過、東シナ海に入った。同時間帯に別の無人機1機が与那国島-台湾付近を飛行した。

  • 2月10日、中国海軍情報収集艦、東シナ海から宮古海峡経由太平洋へ

2月8日午後中国海軍情報収集艦「ドンデイアオ」級(798)が東シナ海から沖縄本島-宮古島間の宮古海峡を通過、太平洋に進出した。

図4:(統合幕僚監部)

  • 2月11日、中国軍Y-9情報収集機、東シナ海から宮古海峡を通過、沖縄本島南方上空を旋回、往路と同じ経路で東シナ海へ

2月10日午後中国軍Y-9哨戒機が東シナ海から沖縄本島-宮古島間の宮古海峡上空を通過、太平洋に進出、しばらく旋回飛行をしたのち、往路と同じ航路で戻った。

図5:(統合幕僚監部)2月10日、中国軍Y-9情報収集機の飛行経路。

図6:(統合幕僚監部)2月10日撮影の中国軍Y-9情報収集機。

  • 2月11日および同12日、ロシア軍情報収集機Il-20、京都府経ヶ崎沖に接近、反転し戻る

2月11日午後、ロシア軍情報収集機Il-20がシベリアから飛来、日本海上空を南西に飛び京都府経ヶ岬沖に飛来、反転して立ち去った。

経ヶ岬には航空自衛隊分屯基地と在日米軍経ヶ岬通信所がある。ここにはマイクロ波を使うミ弾道サイル防衛用早期警戒レーダー「X波帯レーダーTPY 2」が配備されている。これで中国・ロシア・北朝鮮から飛来する弾道ミサイル情報をキャッチ、日米で情報を共有し直ちに対処する。

図7:(統合幕僚監部)2月11日と12日、経ヶ岬沖に飛来したロシア軍Il-20情報収集機の航跡。

図8:(統合幕僚監部)2月11日と12日、経ヶ岬沖に飛来したロシア軍Il-20情報収集機

経ヶ岬には、米軍の第94防空ミサイル司令部、第38防空歩兵旅団、第14ミサイル防衛中隊が駐屯中。

「TPY-2」レーダーは、米国が開発、米本国以外ではイスラエル、トルコ、それに我が国青森県の空自車力分屯地、および経ヶ岬分屯地の4ヶ所に配備されている。使用周波数は8GHz~12 DHzのXバンド。

図9:(防衛省)SPY-2レーダーのアンテナ部分。

  • 2月12日、ロシア海軍情報収集艦(2月10日と同一艦)、対馬海峡を通過、日本海へ

2月1日から10日にかけてロシア海軍ビニシア級情報収集艦(535)が、日本海から対馬海峡を抜け、東シナ海から太平洋へ出て、沖縄本島の南方海域から北上して宮崎県沖の日向灘でしばらく遊弋、それから鹿児島県沖の大隈海峡を通り、東シナ海、対馬海峡経由で日本海に戻った。このような行動は異例、付近で行われていた日本・同盟諸国軍の演習をモニターしていたものと思われる。その行動は海自護衛艦・哨戒機でで常時捕捉していた。

図10:(統合幕僚監部)2月1日-10日、ロシア海軍情報収集艦「ベネシア(535)」が航行した航跡。

図11:(統合幕僚監部)ビニシア級情報収集艦(535)は太平洋艦隊所属の「カレリヤ」。

  • 2月12日、中国軍艦艇7隻、東シナ海から宮古海峡通過、太平洋へ

2月10日夜半から11日にかけて中国海軍ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(155)、ジャンカイII級フリゲート(577)、フチ級補給艦(886)の3隻、およびルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(134)、ジャンカイII級フリゲート(530)、ユージャオ級揚陸艦(986)、ユーシェン級揚陸艦(33)の4隻、合計7隻の艦隊が、沖縄本島と宮古島の間、宮古海峡を通過して東シナ海から太平洋に出た。大型揚陸艦2隻を伴っており、2月18日から実施される「日米共同島嶼上陸演習」に対抗する意味を込めた動きと思われる。

中国海軍の島嶼上陸戦力は想像以上に強大化している。今回宮古海峡を通過したユージャオ(玉昭)級/071型揚陸艦、ユーシェン(玉申)級/076型強襲揚陸艦は、能力、隻数で米海軍を凌ぐ勢力に成長している。

図12:(統合幕僚監部)ルーヤン(旅洋)III級は「昆明級・052D型」駆逐艦で中国版イージス艦。満載排水量7,500 ton、全長157 m、VLSは前後に32セルのセットをそれぞれ配備、各級合わせて20隻が配備中で5隻が建造中。

図13:(統合幕僚監部)ジャンカイ(江凱)II級フリゲート(054)は、満載排水量4,000 ton、全長134 m32セルVLSを装備、対空・対潜ミサイルを搭載する。同型は40隻ほどが就役。

図14:(統合幕僚監部)

図15:(統合幕僚監部)

図16:(統合幕僚監部)

図17:(統合幕僚監部)ユージャオ(玉昭)級/071型揚陸艦は中国海軍初のドック型揚陸艦。満載排水量25,000 ton、Z-8輸送ヘリコプター2機と726型エアクッション揚陸艇4隻を搭載。搭載能力は、兵員最大800名、走行車両20台、人員、車輌の揚げ卸しのためサイドランプを備える。同型艦は8隻が就役済み。

図18:(統合幕僚監部)ユーシェン(玉)/076型強襲揚陸艦は米海軍の強襲揚陸艦「アメリカ(USS America/LHA-6)」46,000 tonに匹敵する大型艦で、同型は4隻就役中さらに4隻が建造中である。満載排水量41,000 ton、艦載ヘリコプター30機を搭載する。上陸用兵員は機械化大隊800名、空中強襲大隊400名。ウエルドックには726型エアクッション揚陸艇2隻を収容する。艦番号33は「安徽」2022年就役。

  • 2月26日、午前、中国軍無人機(BZK-005)が東シナ海から宮古海峡を経て太平洋奄美大島に接近、反転して同じ経路で戻る。午後に偵察・攻撃型無人機GJ-2が同じ経路を飛行

2月26日午前、中国軍偵察型無人機「BZK-005」が宮古島-沖縄本島間の宮古海峡を通り太平洋上で奄美大島沖まで飛行、反転し嘔吐と同じ経路で戻った。また、同時刻中国軍の偵察攻撃型無人機「GJ-2」が「BZK-005」とほぼ同じ経路で奄美大島沖まで飛行、反転して東シナ海に戻った。

 昨年(2024年)4月以降、防衛省の発表によれば宮古海峡を通過した中国軍無人機はこれで20回目、ますます無人機の活動が活発化している。

図19:(統合幕僚監部)

図20:(統合幕僚監部)洪都航空工業製で2018年4月に東シナ海の我国防空識別圏に飛来した多用途長時間滞空無人機。細長い後退翼、双ブーム・後端に尾翼、胴体尾部にプッシャー式ピストン・エンジンを装着、攻撃型では爆弾・ミサイル300 kgを搭載する。

図21:(統合幕僚監部)中国航空工業製で、GJ-2は、2014年珠海エアショーで公開されたGJ-1(翼竜1型)の改良型。滞空時間は20~40時間とされる。機首上面の膨らみは衛星通信アンテナ、下面にはEO/IRターレットを備える。尾部に100 HPピストン・エンジン。ミサイル・爆弾200 kg以上を搭載できる。

我が国、同盟諸国の対応

  • 1月30日、防衛装備庁、ドローン群を無力化する高出力マイクロ波兵器開発を発表

防衛装備庁は研究開発事業概要を示す「研究開発パンフレット」改訂版で「高出力マイクロ波(HPM=high power micro wave)」兵器の概念図を公開した。

防衛省ではウクライナ戦争でのドローンの活用状況から、今後の戦闘では大量のドローンが連携しながら攻撃する「ドローン・スオーム(drone swarm)」攻撃が脅威となり得るとしている。この対処のため、高コストな機関砲やミサイルなど実弾で迎撃するのではなく、高出力指向性エネルギー兵器が必要と判断、開発を進めている。これは多くの目標に対し瞬時に対応でき、電力が続く限り射撃できる。米海軍ミサイル駆逐艦「プレブル/DDG-88」に搭載したレーザーへ行っ機「ヘリオス」や防衛装備庁で試作・試験中の車載型レーザー・ガンなどがその例だ。

今回明らかにしたのは、これをさらに進めて大型平板アンテナから強力マイクロ波を発射、来襲するドローン群の電子装置を破壊、無力化しようと言う構想。2024年7月より米国と共同研究を行っている。米国内の試験場で、両国の高出力マイクロ波発生装置を持ち寄り、小型化、高出力化を進めている。

図22;(防衛装備庁)高出力マイクロ波兵器の想像図。車載型大型平板アンテナから強力なマイクロ波を発射、来襲するドローン群を無力化する。左はドローン監視用レーダー車両、右はマイクロ波発生用の電源車両と見られる。

  • 2月6日、海自護衛艦「あきずき」台湾海峡を通過、南シナ海へ

海自護衛艦「あきずき/DDG-115」は、2月5日、東シナ海から台湾海峡を通過、南シナ海に入り、日本・米国・オーストラリア・フィリピン4カ国が行う共同訓練に参加した。

海自艦による台湾海峡通過は、昨年9月のオーストラリア艦ニュージランド艦と同行したのに続き2回目。海自艦単独での通過はこれが最初である。

中国はほぼ毎月のようにその艦隊を沖縄本島と宮古島間の宮古海峡を通過させ、昨年末には、海軍艦艇3隻と海警局艦艇3隻が同海峡を共同通過するなど、挑発的な行動を増やしている。石破首相はこうした状況を勘案し、今回の「あきずき」による[航行の自由作戦]を了承したと言われる。台湾海峡は最も狭い箇所でも幅130 kmあり、中国の領海(沿岸から22 km)から大きく離れ国際的に「航行の自由」が認められる海域である。

図23:(海上自衛隊)「あきずき/DD-115」は2012年就航、僚艦防衛が主任務。満載排水量6,800 ton、全長150.5 m、速力30 kts。兵装は62口径5 inch砲、Mk.41 VLS  32セルに対空・対潜ミサイルを装備、対艦ミサイル4連装発射筒2基など。レーダーは窒化ガリウム半導体使用のFCS-3A。同型艦は4隻配備中。

「あきずき」は台湾海峡を通過後、2月6日に米国・オーストラリア・フィリピン3カ国海軍と共に、フィリピン沿岸南シナ海に面した排他的経済水域で、「自由で開かれたインド・太平洋の維持」のための共同訓練「多国間海上共同行動 (MCA=Multilateral Maritime Cooperative Activity) に参加した。

参加したのは;―

米海軍ミサイル駆逐艦「ベンフォールド(USS Benfold / DDG-65)」、第47哨戒機団(VP-47)所属「P-8Aポセイドン(Poseidon)」哨戒機1機、

オーストラリア海軍対空駆逐艦「ホバート(HMAS Hobart /DDG-39)」およびMH-60Rシーホーク(Seahawk)ヘリコプター1機

フィリピン海軍ミサイル・フリゲート「ホセ・リサール(BRP Jose Rizal /FF-150)」、

海上自衛隊駆逐艦「あきずき(DD-115)」およびSH-60Kヘリコプター1機

図24:(US Navy 7th Fleet)共同訓練MCAに参加した艦艇。手前からオーストラリア対空駆逐艦「ホバート」、日本海上自衛隊駆逐艦「あきずき」、フィリピン海軍フリゲート「ホセ・リサール」、米第7艦隊ミサイル駆逐艦「ベンフォールド」。

  • 2月12日、2月17日~4月3日の間、豪州方面派遣訓練にフリゲート「のしろ/FFM-3」を派遣

海自は2月17日~4月3日の間、フリゲート「のしろ /FFM-3」をオーストラリアおよびフィリピンに派遣、共同訓練を行っている。

オーストラリア海軍は次期フリゲート10隻/総額100億ドルの導入を検討中。目下最終選考段階にありドイツと日本が候補に残っている。今年末には決定する予定。日本が提案しているのは「もがみ/FFM-1」を改良した「新型FFM」三菱重工製。ドイツが提案しているのは「TKMS (Thyssenkrupp Marine System)」社製フリゲート。海自は「のしろ/FFM-3」を派遣、選考に協力する。

海自は、2022年以降多機能型護衛艦/フリゲート「もがみ/FFM-1」型12隻の配備を進めている。現在10隻が完成済み。満載排水量5,500 ton、全長133 m、速力30 kts、乗員60~90名、兵装;62 口径5 inch砲、Mk 41 VLS 16セル1基、Sea RAM 11連装1基、SH-60Kヘリ1機、機雷探知用自立航行型水中無人機 [OZZ-5]1基を搭載する。

「のしろ・FFM-3」は3番艦、2022年12月就役、佐世保基地第13護衛隊に所属している。

図25:(海上自衛隊)フリゲート「もがみ/FFM-1」。オーストラリア派遣は同型の「のしろ/FFM-3」。オーストラリアにはこれを改良した「新型FFM」満載排水量6,200 tonを提案している。

防衛省は、「もがみ」型12隻の後継として「新型FFM」12隻の建造を決定、2024年度予算で最初の2隻建造分として1747億円を計上した。

「新型FFM」は、満載排水量6,200 ton (「もがみ」は5,500 ton)、全長142 m (133 m)、Mk.41 VLS 32セル (16セル)、といずれも大きくなっている。特にVLSが32セルに倍増したことで対空戦能力が向上する。

図26:(防衛装備庁)オーストラリアに提案中の「新型FFM」の想像図。

  • 2月6日、2月10〜18日の間、フィリピン東方太平洋上で日米仏3カ国共同訓練(Pacific Steller)[Multi-Large Deck Event]を実施

2月10日~18日の間、フィリピン東方の太平洋海域で日本海上自衛隊、アメリカ第7艦隊、フランス海軍は大規模な共同訓練「パシフィック・ステラー (Pacific Steller)」を実施した。米国/カール・ビンソン、フランス/シャルル・ドゴール、日本/かが、の空母3隻が参加した。米第7艦隊は「マルチ・ラージデッキ・エベント(MLDE=Multi-Large Deck  Event)」と呼ぶ。

MLDE訓練の目的は、いかなる事態にも3カ国共同で対処する意思を示すとともに、3カ国の連携と共同運用の技量を高めるため。

3カ国艦艇は合計11隻、哨戒機3機、艦載機数十機が参加した。

これに対し、中国・ロシアは、既述のように3カ国艦隊の通信連絡、電子情報を収集すべく周辺海空域にに艦艇・航空機を派遣した。

米海軍からは、第1空母打撃群(CGS 1 =Carrier Strike Group 1)の空母「カール・ビンソン(USS Carl Vinson /CVN-70)」および第2空母航空団 (CVW 2)、ミサイル巡洋艦「プリンストン(USS Princeton /CG-59」、ミサイル駆逐艦「スタレット(USS Sterett/DDG-104)」、同「ウイリアム・P・ローレンス (William P Lawrence /DDG-110)」、「P-8A」哨戒機。第2空母航空団 (CVW 2)は、F-35C戦闘機、F/A-18E/F戦闘機、EA-18G電子戦機、E-2D早期警戒機、CVM-22オスプレイ、MH-60Rヘリコプターの9個中隊で編成されている。

フランス海軍からは、空母「シャルル・ドゴール(Charles De Gaulle/R91)」、多任務フリゲート(FREMM)「アルザス(Alsace/ D656)」、ミサイル駆逐艦「フォルバン(Forbin)」、ミサイル駆逐艦(FREMM)「プロバンス(Provence/ D652」、補給艦「ジャック・シュバリエ」、哨戒機「アトランチック」。空母航空団は、ラファエル(Rafale Marine(F-4))戦闘機14機、E-2C早期警戒機3機、およびドルフィン(Dauphin)、カイマン(Caiman)、パンサー(Panther)ヘリコプター等で編成されている。「シャルル・ドゴール(Charles De Gaulle」は、フランス海軍唯一の原子力空母、アングルド・デッキとカタパルト2基を備え満載排水量43,000 ton。

海上自衛隊からは、空母「かが」、ミサイル駆逐艦「あきずき」、哨戒機「P-3C」が参加した。

図27:(海上自衛隊)3カ国共同訓練「パシフィック・ステラー」の一コマ。

手前から、米ミサイル巡洋艦「プリンストン(USS Princeton /CG-59」、海自ミサイル駆逐艦「あきずき(DD-115)」、フランス海軍フリゲート(駆逐艦)「フォルバン(Forbin)」。

図28:(海上自衛隊)MLDE訓練で並走する空母3隻。手前から、米「カール・ビンソン」、日本「かが」、フランス「シャルル・ドゴール」。

  • 2月13日、防衛省、CH-47大型ヘリコプター17機を発注、ボーイング/川崎重工で生産

2月13日、防衛省は最新の大型輸送ヘリコプター「CH-47JA Block II」チヌーク(Chinook)17機をボーイング・川崎重工に発注した。

「CH-47JA Block II」型は、昨年7月から米陸軍に納入が始まった「CH-47F Block II」型と同じで日本向け仕様にした機体、川崎重工でライセンス生産される。平均単価は円安の影響もあり137億円になる。

CH-47はボーイング・バートル(Boeing Vertol)社が開発した輸送ヘリで1962年CH-47Aが米陸軍で就役、以後B型、C型と改良され現在は「CH-47F Block II」が生産されている。川崎重工は、1984年CH-47D型をベースにCH-47Jの生産を開始、1993年からは、燃料タンクを大きくしたCH-47JA型に切り替え、陸自第一ヘリコプター団、空自などに合計110機以上を納入している。

CH-47Fは、全長30.2 m、全幅18.3 m、全高5.7 m、回転翼径18.3 m、最大離陸重量22.7 ton、航続距離2,250 km。Block IIのエンジンは、ハニウエル傘下のギャレット・エアリサーチ社製「T55-GA-714C」ターボシャフト6,000軸馬力2基を装備。キャビンには、高機動車、1/2 tonトラックが搭載可能、兵員輸送の場合は標準で33名、最大で55名まで収容できる。吊り下げ輸送では12 tonまで可能。消火活動のためにはSEI Industries製5,000 リットル型バケットに水を入れ輸送、消火にあたる。

「CH-47F Block II」は、胴体を強化し、ドライブトレインを改良、燃料タンクを大型化、積載量と行動半径を増やしている。最大離陸重量はBlock I / 5万ポンド(22.5 ton)に対し、Block IIは5万4000ポンド(24.5 ton)に増加している。米陸軍は装備近代化の一環としてCH-47F Block II型を465機調達する計画で、2024年7月1日にその初号機をボーイングから受領した。

図29:(Boeing)CH-47F Block II 。防衛省発注の「CH-47JA Block II」17機は陸自用が12機と空自用が5機で内容・価格が異なる。米・英・カナダ・ドイツに続いて日本は5番目の導入国になる。

2月18日、2月19日~3月2日、沖縄周辺海空域で日米共同揚陸艦訓練を実施

海上自衛隊は2月19日~3月2日の間沖縄周辺の海空域で米海軍と島嶼防衛、島嶼奪回、機雷除去の共同訓練を実施した。

参加部隊は;―

海上自衛隊:輸送艦「くにさき/LST-4003」13,000 tonとエアクッション揚陸艇「LCAC」、掃海艦「あわじ/MSO-304」780 ton、掃海艇「ちちじま/MSC-605」660 ton

米第7艦隊:強襲揚陸艦「アメリカ(USS America/LHA-6)」46,000 ton、ドック型揚陸艦「ラッシュモア(USS Rushmore?LSD-47)」16,000 tonとLCAC、遠征用海上基地艦「ジョン・L・キャンリー(USS John L. Canley/ESB-6)」82,000 ton・CH-53大型ヘリ3機搭載、掃海艦「ウオーリア(USS Warrior /MCM-10)1,400 ton」

海自から参加する掃海艦「あわじ/MSO-304」780 tonは、全長67 m、乗員50名、磁気掃海具・音響掃海具などを装備する。船体は繊維強化複合材(FRP)製で、FRP製としては世界最大級の船となる。同型艦は9隻建造予定で、4番艦までが完成。

図30:(海上自衛隊) 掃海艦「あわじ/MSO-304」。

  • 2月21日、日本海上空で日米空軍戦闘機部隊が共同訓練を実施

2月20日、空自三沢基地第3航空団所属のF-35A戦闘機4機は、日本海上の空域で米空軍第35戦闘航空団所属のF-16戦闘機7機と各種戦術訓練を行った。これは北朝鮮が繰り返す弾道ミサイル発射や中国・ロシア軍機の日本接近飛行に警告する意味を込めて実施された、と理解される。

三沢基地は青森県東部三沢市にある飛行場、日本で唯一米空軍・航空自衛隊・民間航空の3者が使う飛行場。ランウエイ 10 / 28、長さ3,500 mを挟んで、東側(右)には軍用駐機場が点在、西側(左)には北から米海軍・空軍の施設、航空自衛隊施設が並び、最も下の白い四角が民間ターミナル。

空自は、第3航空団隷下に第301飛行隊、第302飛行隊(いずれもF-35A戦闘機)、北部高射群(PAC-3)、およびE-2C早期警戒管制機装備の第601飛行隊、CH-47装備のヘリコプター空輸隊、それに臨時偵察航空隊(RQ-4グローバルホーク)などを配備している。

米空軍は第35戦闘航空団隷下の第13および第14戦闘飛行隊(F-16CJ/DJ Block 50型機を装備)を配備、敵防空網制圧(SEAD)を主任務にしている。米海軍の飛行隊も駐留している。

図31:(国土交通省国土地理院)2024年撮影の三沢飛行場の写真。南北に配置された3000 m滑走路とその周囲に展開する施設。左側北半分は米軍施設、南側半分は自衛隊施設。南側の端に民間ターミナルがある。

終わりに

既述したように、中国海軍は2007年以降、島嶼侵攻用としてユージャオ(玉昭)級/071型揚陸艦、ユーシェン(玉申)級/076型強襲揚陸艦を次々と整備中、加えて4万トン級の075型強襲揚陸艦5隻も配備している。

これらは台湾・尖閣諸島への侵攻作戦を想定して始まったが、今では奄美大島を含む沖縄列島、大東島、南鳥島、小笠原諸島、米領グアムなどへの侵攻意図を隠そうとしない。

これに対する我国の防衛体制は、沖縄諸島の一部を除くと無防備に等しい。米領グアムの防衛には全く寄与していない。日米安保条約は、米国は日本を守る義務があるが、日本は米国を守る義務はない、片務性の条約だ。我が国防衛を米国に頼るだけで本当に良いのか。早急に改めるべきである。

2025年度の中国国防予算は前年比7 %増の36兆7600億円、日本の防衛予算は8兆7000億円で中国のわずか4分の1、海上保安庁費を入れてもGDP比で1.6 %に過ぎない。

今国会では高額医療費の問題で持ちきりである。数年前に「死期を迎えた老人を1ヶ月延命するのに投ずる費用は年間4兆円」との報道があった。これこそ無駄使いの最たるもの。筆者は94歳、人生最後を迎える時、無駄な延命治療は全てお断りする。

―以上―