2025-4-2(令和7年) 松尾芳郎
米空軍は3月21日「次世代制空戦闘機 (NGAD)」に関わる設計、製造、納入についてボーイングを選定した、と発表した。[NGAD=Next Generation Air Dominance)]は、飛行性能、生残性、攻撃能力、戦闘適応能力について世界に卓越した米空軍の次世代戦闘機となる。
(The U.S. Air Force has awarded Boeing a contract to design, build, and deliver its next generation fighter. This initiative, known as the Next Generation Air Dominance (NGAD) platform, which aims to advance the capabilities of USAF fighter in terms of range performance, lethality, and adaptability. )

図1:(U.S. Air Force)ボーイングが製造する米空軍用第6世代戦闘機F-47の想像図。
次世代制空戦闘機「NGAD」の選定を巡っては、ボーイングとロッキード・マーチンが激しく争ってきた、バイデン(Biden)政権では決定に至らなかったが、空軍当局は今年3月21日に「次世代制空戦闘機(NGAD)」はボーイングに発注、名称は、第47代大統領に因んで「F-47」と発表した。配備開始は2030年以降となる。
トランプ大統領は「試作機は5年前から極秘裏に試験飛行を続けている。この素晴らしい戦闘機の大部隊が私の政権下で実現する。」と発表した。
米空軍ニュースは次のように述べている;―
「F-47は他国のあらゆる戦闘機に比べて、遥かに先進的で性能・攻撃力に優れ、最新のステルス技術を採用した卓越した世界初の第6世代戦闘機になる。これまで5年間、Xプレーンとして極秘裏に先端技術を組込んだ機体で数百時間に及ぶ試験飛行を繰り返してきた。試作機で得た知見をまとめたのがF-47として姿を現した。F-47は、現在世界最強の戦闘機とされるロッキード・マーチン製F-22制空戦闘機 (air superiority fighter)の後継機で、飛躍的に性能を向上した次世代機として登場する。
F-22に比べF-47は、製造コストが安くなるので、将来の脅威に柔軟に対処できるため十分な数を揃えることが可能だ。F-47は、航続性能がずっと長く、先端的なステルス構造を備え、整備性に優れ、稼働率が向上する。さらに設計方式を“追加組み立て(build to adapt)方式”、つまり「モジュラー化」しているため、関連工数や配備に要する基盤整備がずっと少なくて済む。モジュラー化することで、後発の新技術の組み込みが容易になり、今後数十年間に渡り制空能力を維持できる。
空軍の任務は、米国の空の安全の確保と微動だにしない反撃態勢の維持にある。F-47により空軍力で敵の追随を許さず圧倒的な差をつけることで、世界中で我々の地位は一層強化されるだろう。」
トランプ大統領は続けて述べている;―
「F-47はすべてに卓越した制空戦闘機であり第1の任務は米国の国策遂行の力となることだ。このため同盟国への売却はあっても製造機数の10 %程度に止まるだろう。F-22の場合日本が導入を求めたが許可しなかった。今回も一部のヨーロッパ同盟国から導入打診があるようだが簡単に応じる事はない。」
ピート・へグセス(Pete Hegseth)国防長官のコメントは;―
「F-47を決定したことで、米国は同盟諸国に対し不動の立場にあること明確に示し、かつ、敵に対しては断固たる意思を示した。そして次の世代まで米国は世界に対し必要あらばその力を行使する意思があることを明確にした。F-47プロジェクトは、米国防軍と米工業界に対する歴史的な投資と言って良く、これは軍内部の士気高揚にも繋がる。」
米空軍長官デービッド・アルビン(David Allvin)大将は「この戦闘機は単なる(F-22の)後継機ではない。これで将来の戦闘様式を変えるぞ、と敵に警告する意味を含めたプロジェクトだ。F-47はNGADファミリーの中核となる存在で、随伴無人戦闘機 (CCA=Collaborative Combat Aircraft)と共に行う共同戦闘で、一層戦闘能力を向上できる。」と語っている。
米空軍は、有人戦闘機に随伴して戦闘に協力する無人戦闘機(CCA)の候補として、アンドリル社(Anduril)およびジェネラル・アトミックス社(General Atomics)の2社を選定、2029年までに約100機を製造、評価を行う(2024年4月30日発表)。その後2年ごとに契約を更新し、機数を増やしていく。
今回の競争相手ロッキード・マーチンは、F-35戦闘機プログラムで複雑な問題に遭遇、引渡し遅れの解消に努力を裂かれて来たため、NGAD受注への取組が遅れ、これが敗因になったようだ。反対にボーイングの防衛部門は、新戦闘機製造工場をミゾーリ州セントルイス(St Louis, Missouri)に新設するなど大規模な投資を行い、短期間のうちに引き渡しできる体制を整えてきた。
F-47担当に決まった「ボーイング防衛・宇宙・セキュリテイ部門(BDS=Boeing Defense, Space & Security)」は、今後1年以内にコスト、開発・生産スケジュールを作成することになる。BDS部門はこれと並行して、空軍向けのKC-46Aタンカー、T-7Aジェット練習機、VC-25B大統領専用機などの重要なプログラムに取組んでいる。
- KC-46Aタンカー:米空軍が89機発注し納入済み、15機を追加発注中。我が航空自衛隊は4機受領、2機を発注中。給油遠隔視認装置(Remote Vision System)の不調、機体構造の一部にクラック発生などの不具合解消に取組んでいる。
- T-7Aジェット練習機:サーブと共同開発したT-7 Red Hawk、2023年5月に初号機を空軍に納入した。米海軍は64機発注、航空自衛隊もT-4の後継機として発注を決定。ボーイングは全世界で将来2,700機の販売を見込んでいる。
- VC-25B大統領専用機:747-8Iジャンボ旅客機を基本に大統領専用機として必要な改造をする機体。2015年に破綻したロシアのトランス・エアロ社が発注した機体でボーイングが2機を保管していた。これを39億ドルの費用を掛けて改修する。完成は2026年になる見込み。改修内容は、通信システム、自機防御システム、その他を含む。
BDS部門社長ステーブ・パーカー(Steve Parker)氏は「米国のミッションを支える最も先端的なNGAD戦闘機の生産体制確立のため我社は歴史上最大規模となる投資を行い準備を整えてきた。これで今後長期に渡り生産を続けることになる。ボーイングBSDはこれまで1世紀以上に亘りP-51ムスタング、F-4ファントム、F-15イーグル、F/A-18ホーネットなど各種戦闘機を量産して来た経験がある。」とコメントした。しかし、NGAD戦闘機の技術的仕様やスケジュール上の詳細は秘密のまま、今後数年間これが計画遂行の障害になるかもしれない。

図2:(U.S. Air Force) 飛行中のF-47の想像図。

図3:(U.S. Air Force)F-47の全体像。これまで数種類の図が報じられたが、これが最も新しい。双発・単座・無尾翼、最新のステルス形状。エンジンは次世代型アダプテイブ・エンジン(NGAP=Next Generation Adaptive Propulsion)で、現在開発中のGE XA102またはPW XA103のいずれかになる。
Air Force Technology 電子版March 8, 2024は次のように報じている;―
F-22の後継となる第6世代戦闘機NGAD (F-47)は、2030年から配備が始まる。米空軍は、NGAD /F-47の初期ロットとして200機発注する、それに随伴する無人戦闘機CCA (collaborative combat aircraft)を1,000機発注したい、としている。すなわち、各NGAD/F-47用にそれぞれ2機ずつの400機と、現用300機のF-35戦闘機用に同様2機ずつの600機、合計で1,000機である。
エンジンに関わる最新情報としてThe Aviationist電子版Feb.22, 2025は大要次のように報じていいる。すなわち;―
F-47には空軍が主導する次世代型アダプテイブ・エンジン(NGAP=Next Generation Adaptive Propulsion)が装備される。
アダプテイブ・サイクル・エンジンとは、状況に応じて、推力を増強したり、燃料消費を節約したり出来るエンジンである。
アダプテイブ・サイクル・エンジンは空軍研究所(AFRL)が2007年から進めてきた「可変サイクル技術、3層空気流、アダプテイブ・ファン」の研究から始まった。すなわち、ファン空気流は、最も内側の層がコアに流れ、外側の層は二つに分かれてバイパス・ダクトを通る。離陸や攻撃回避など高推力が必要な時はバイパス・ダクトを絞ってターボジェットとして運転する。長距離巡航では燃費を節約するため2層のバイパス・ダクトを開けてファンエンジンにする。3層目(外側)のバイパス空気流はバイパス効果だけでなく、排気ガスを包みこみ冷却して、赤外線エミッションを減らしてステルス性を高める。可変サイクルのためのダクト開閉は、センサーを含むデジタル燃料管制装置で行う。

図4:(GE Aviation)GEが試作するアダプテイブ・サイクル・エンジン[GE XA100]および[GE XA102]の概念図。ファン・バイパス比、高圧系、低圧系の段数、性能等は公表していない。
空軍は2022年に、GEおよびP&Wの両社とNGAP開発契約を締結、GEがXA102、P&WがXA103、をそれぞれ開発している。P&Wエンジンが2024年2月に、GEエンジンが2023年12月に、それぞれ空軍の「詳細設計審査(DDR=Detailed Design Review)」に合格した。
P&W XA103;―
プラット&ホイットニー(Pratt & Whitney)は現在RTX社の傘下企業。XA103の詳細設計審査(DDR)に短期間で合格したのは、厳しい要件に関わるあらゆるデータおよびマテリアルに直ぐにアクセスできるソフト“最新のデジタル環境”によるところが大きい。DDRに合格したので、これから各部部品の製造を開始、地上試運転用の試作エンジンの製造に取り組む。完成目標は2020年代終わり頃になる。
これ以前に、空軍の「AETP=Adaptive Engine Transition Program」(アダプテイブ・エンジン向けの新技術開発プログラム)」契約で実施した「ファン、燃焼室、HPタービン等の改善」をF-35戦闘機に搭載しているF135エンジンの性能向上型「F135 ECU」に組込み、実証試験を完了した。[ECU]とは「エンジン・コア・アップグレード(Engine Core Upgrade)」の略。
F135はECU改修で、推力は7~10 %向上(アフタバーナー時で45,000 lbs)、燃費は5~7 %改善されるので航続距離が7 %伸びる。この改修は全てのF-35系列機に適用可能で、これでF-35は次世代制空戦闘機に近い機体に生まれ変わる。これが空軍の認めるところとなり、次期F-35戦闘機に搭載が決定した(2024年度国防予算)、配備は2026年末から始まる。
P&Wによると F135は1,200台以上が製造され、合計の飛行時間は100万時間を超えたと言う。

図5:(Pratt & Whitney)P&W F135エンジン。2軸式、アフタバーナー付きターボファン。低圧系はファン3段+タービン2段、高圧系はコンプレッサー6段+タービン1段、燃焼室は環状型、ファン・バイパス比は[0.57:1]。推力はA/B無しで28,000 lbs、A/B時43,000 lbs。
GE XA102 ;―
ジェネラル・エレクトリック・エアロスペース(General Electric Aerospace)はXA102エンジンが詳細設計審査(DDR)に合格したと2025年2月19日に発表した。GEはXA102の前身となるXA100の試運転を2023年11月に完了している。これは前述のアダプテイブ・エンジン移行計画(AETP)に基づいて試作したモデルで、F-35戦闘機のエンジンの更新計画で換装を目指した。しかし空軍は2024年9月にP&W製F135性能向上型「F135 ECU」の採用を決めたため敗れた。
XA102は、GEのエンジン史上初めての自社開発の設計手法「MBSE=Model-based Systems Engineering」を適用したエンジンである。MBSEは、当該システムの全使用期間中の運用を確実にし支援する“デジタル・モデリング&シュミレーション (digital modeling and simulation)”を使った新しいソフト。これで、部品・システムの実物を作る前に不具合箇所を特定、修正できる。GEはこの[model-based engineering]でエンジン開発が大きく進歩したと説明している(GE Aerospace副社長Dr. Steve Doogie Russell氏)。
次世代型アダプテイブ・エンジン(NGAP=Next Generation Adaptive Propulsion):―
既述したが空軍の「AETP=Adaptive Engine Transition Program」(アダプテイブ・エンジン向けの新技術開発プログラム)」に対応してGE・P&Wの両社は、F-35戦闘機用の燃料消費の少ないアダプテイブ・サイクル・エンジンの開発に取組んだ。これがGE XA100とP&W XA101である。そして改良されGE XA102、およびP&W XA103となり、「次世代制制空戦闘機 (NGAD)」用エンジンの候補として競合している。
既述のようにアダプテイブ・サイクル・エンジンとは、状況に応じて、推力を増強したり、燃料消費を節約したり出来るエンジンである。
GEは、[GE XA100]は、現在のPW F135エンジン対比で燃費は25 %節約でき、推力は10~20 %増やせる、と述べていた。
終わりに
米空軍は3月21日「次世代制空戦闘機 (NGAD)」に、ボーイングを選定、47代大統領時代に配備予定を目標にし[F-47]と名付けた。配備中のF-22ラプター(Raptor)戦闘機の後継機とされるが、性能、攻撃能力、整備性、価格、いずれの点でも格段に優れた制空戦闘機になる。[F-47]が完成配備されれば、米空軍は世界で圧倒的な力を持つことになる。これが米国の外交力の基盤となることに疑いの余地はない。

図6:(U.S. Air Force) F-22ラプター戦闘機は2005年末から運用開始、183機を運用中。アラスカ州エレメンドルフ基地第3航空団所属機が嘉手納基地に巡回駐留している。エンジンはP&W製 F119-PW-100推力A/B時35,000 lbsを2基。巡航速度マッハ1.82、航続距離外装タンク付きで3,000 km。
―以上―
本稿作成の参考にした記事は次の通り。
- Aviation Week Feb 24-Mar 9,2025 “ERR POWER” by Steve Trimble
- Air Force News March 21, 2025 “Statement by Chief of Staff of the Air Force Gen. David Allvin on the USAF NGAD Contract Award
- Air Force News March 21, 2025 “Air Force Awards Contract for Next Generation Air Dominance (NGAD) Platform, F-47
- Boeing Press Release March 21,2025 “U.S. Air Force Selects Boeing for Next Generation Air Dominance Fighter Platform”
- Air Force Technology March 8, 2024 “Next Generation Air Dominance Program”
- U.S. Naval Institute News Jan. 20 2025 “Report to Congress on U.S. Air force Next Generation Air Dominance Fighter”
- JANES 21, March 2025 “USAFF selects Boeing to build F-47 NGAD”
- 1945 March 22, 2025 “Boeing’s F-47 NGAD Fighter is a little bit of a Head Scratcher” by Robert Farley
- Aviation Wire 3gatsu22nichi, 2025 “米空軍のNGAD F-47、ボーイングが開発/世界初の第6世代戦闘機” by Tadayuki YOSHIKAWA
- Flight Global March 25, 2025 “Boeing’s F-47 fights way to NGAD victory: now it must deliver”
- Air & Space Forces Magazine Oct. 1, 2024 “Pratt & Whitney gets $1.3 Billion to Mature F-35 Engine Core Upgrade” by John A. Tirpak
- The Aviationist February 22, 2025 “Pratt & Whitney and General Electric complete Detailed Design Review for Next Generation Adaptive Propulsion” by Stefano D’Urso
- TokyoExpress 2016-07-04 “本格化する米空軍の第6世代炎銀開発[GE対P&W]”
- TokyoExpress 2023-04-20 “米空軍、F-35AエンジンにF135アップグレード(ECU)を採用―新型エンジンは採用せず“
- TokyoExpress 2024-6-23 “米空軍、有人戦闘機に随伴する無人機開発に2社を選定“