GA-ASIとAndurilが開発中の無人戦闘機/CCAの現況


2025-7-31(令和7年) 松尾芳郎

図1:(U.S. Air Force)手前が GA-ASI社製 YFQ-42A無人機、奥がAnduril社製YFQ-44A無人機。いずれも今年夏に初飛行予定。

2025年7月18~20日、イギリス空軍フェアフォード(Fairford, Gloucestershire)基地で「The Royal International Air Tattoo (RIAT) 2025」(王立国際航空ショー)が開催された。ここでジェネラル・アトミックス社(GA-ASI=General Atomics Aeronautical Systems Inc.)は、米空軍向けに開発を進めている「共同戦闘無人機 (CCA= Collaborative Combat Aircraft)「YQF-42A」をヨーロッパでも生産する、と発表した。(General Atomics Aeronautical System Inc. (GA-ASI) announced that, they plan to develop European-build uncrewed loyal wingman based on the YFQ-42A, which is developing for USAF’s Collaborative Combat Aircraft (CCA). The announcement released at the Royal International Air Tattoo (RIAT) July 18. 2025.)

図2:(GA-ASI) 2025年7月18日、イギリス空軍フェアフォード(Fairford, Gloucestershire)基地で開催の「The Royal International Air Tattoo (RIAT) 2025」(王立国際航空ショー)で展示されたGA-ASI社製 YFQ-42A無人機。エンジン・インレットは胴体上、尾翼はV字型。

図3:(Anduril / Global Data, John Hill) 2025年6月18日、パリ航空ショーで展示されたアンドウリル(Anduril)社製YFQ-44A無人機(Fury)。エンジン・インレットは機種下側、尾翼は3舵式。

背景

米空軍は無人機プログラムを重視、将来1.000機配備を目標にしている。第1段階としてGA-ASI製YFQ-42Aとアンドウリル製YQF-44Aの2機種を合計で100機調達するべく2026会計年度予算で8億700万ドル(1200億円)を計上、共同戦闘無人機(CCA)の研究・開発を進めている。空軍は大量生産を急いでおり、それに対応すべくGA-ASI社は日産1機のペースでの国内生産を準備している。

ヨーロッパ各国は将来有人戦闘機計画(第6世代戦闘機計画)として、日英伊3カ国の「GCAP」(2037年配備開始目標)とやや遅れて独仏スペインの「FCAS」’2040年目標)の開発に取組んでいる。いずれも、随伴して戦闘に参加する無人機を必要としている。先行する米空軍のCCA計画が、ヨーロッパ側の要件を受け入れて現地で大量生産し供給することは十分可能と思われる。

GA-ASI製「YFQ-42A」

「YFQ-42A」は現在地上試験を繰り返している段階。いわゆる“オープン・システム(open system)”のモジュール構造のプラットフォームである。偵察・監視、対空戦闘、対地攻撃など様々な要件に応じて、搭載システムを変更したり、別のサプライヤーからの装備品に交換できる設計になっている。自動車業界で行われている”同じシャーシーを使う多種類モデル“に相当する。

YQF-42Aは後述するXQ-67Aを基本とした機体で、車輪・装備アビオニクス・ソフトはそのまま受け継ぎ、主翼を細く後退角を増やし胴体を伸ばし、高速化して飛行性能 (maneuverability)の俊敏化を図っている。

ヨーロッパで生産するに際し、ヨーロッパ国防当局やアメリカ政府の秘密保持機関の許認可が必要な事は前提条件。「GA-ASI」は、ヨーロッパの生産拠点としてドイツ・ミュンヘン(Munich)近郊にある系列会社「ジェネラルアトミックス・エアロテック(GA-ATS= Bavarian GA Aerotec Systems GmbH)」を使う。

「エアロテック」社は設立40年でヨーロッパの航空産業に貢献してきた企業。2020年にGA-ASIの傘下に入り「GAエアロテック」となった。そこで短距離離着陸旅客機「ドルニエ(Dornier) 228」の製造権をRUAG社(ドイツ)から取得、製造している。さらにNATOが次期汎用ヘリコプターとして採用したNH-90の改良、整備、支援事業にも名乗りをあげている。

王立国際航空ショー「RIAT」

RIATはイギリス空軍の全面的な支援で実施される軍事航空ショー。今年(2025年)のテーマは「Eyes in the Skies(空の眼)」。ショーでは、航空監視(aerial surveying)、早期空中管制(airborne early warning)、洋上監視(maritime patrol)、探索救助(search and rescue)、探索(reconnaissance)、電子信号探知(signal intelligence) および監視(surveillance)、に関わる案件が展示された。

「アンドウリル (Anduril)」

GA-ASI製「共同戦闘無人機 (CCA)」YFQ-42Aの競争相手は「アンドウリル(Anduril)」製のフューリイ(Fury)「YQF-44A」で、米空軍が2024年4月にCCA候補機としてYFQ-42Aと共に選定した。1ヶ月前に開催された2025年パリ航空ショウ(Paris Air Show)で公開、展示している。

YQF-44Aは、ノースカロライナ州の「ブルー・フォース・テクノロジー(Blue Force Technologies)」が仮想敵(aggressor)用として開発した無人機。2023年9月にアンドウリルがブルー・フォース・テクノロジーを買収し、これをベースにCCA(共同戦闘無人機)候補とした。2024年4月米空軍のCCAプログラムにYFQ-42Aと共に選定された。

YQF-44Aは、F-16戦闘機のほぼ半分のサイズ。後退角付き主翼、エンジン・インレットは機首の下側、尾翼は3舵式。高度50,000 ftでマッハ0.95で飛行する。エンジンはWilliams FJ44-4Mターボファン1基推力4,000 lbs、離陸重量は5,000 lbs (2.3 ton)、兵装はAIM-120 AMRAAM中距離空対空ミサイルを2発、それと翼下面ハードポイントが2箇所ある。

アンドウリル(Anduril Industries)は、米国の国防産業企業で2017年に投資家パルマー・ラッキー(Pulmer Lucky)氏等によって設立された。本社はコスタメサ(Costa Mesa, Orange County, Calif.)、支社はボストン、アトランタ、シアトル、ワシントンDC、ロンドン、シドニーにあり、従業員は3,500人。主な顧客は国防総省で、人工頭脳(AI=artificial intelligence)、ロボットを含む無人航空機システム(UAS=unmanned aerial Systems)、小型偵察無人機システム(semi-portable autonomous surveillance systems)、およびネットワーク化したコマンド&コントロール・ソフト(networked command & control software)、を納入している。

同社の製品には、「アルテアス(Altius)」無人偵察攻撃機、「アンビル(Anvil)」無人4ローター偵察攻撃機、「バラクーダ(Barracuda)」巡航ミサイル(射程160-800 km)、「ボルト(Bolt/Bolt M)」ISR用小型無人機、[コッパーヘッドUUV(Copperhead UUV)]無人潜水艦(Dive-LDなど)から発射する無人水中ミサイル、「ゴースト(Ghost)」地上軍発射用無人機、その他など多数ある。

図4:(Anduril) バラクーダ巡航ミサイル、写真は大型の「バラクーダ500」射程は900 km、C-17やC-130輸送機に搭載、飛行中投下して発射する。低価格(15万ドル)、大量生産に適した構造で従来型ミサイルに比べ30 %ほど安くできる。

図5:(Anduril)バラクーダ巡航ミサイル系列の概念。右から小型でヘリ搭載用の[-100]、中型で戦闘機搭載用の[-250]、そして大型で輸送機ランプから投下発射する[-500]。数字はいずれも射程をマイルで表している。

GA-ASI

「GA-ASI(General Atomics Aeronautical Inc.)」は、次世代型原発開発などを手掛ける「ジェネラル・アトミックス」の系列企業。1992年9月サンデイゴ(San Diego, Calif.)でリンデン・ブルー(Linden P Blue)氏が兄(Neal Blue)と共同で設立した企業。当時は無人機は空軍の主流から離れた存在だったが、衛星利用のGPS航法システム、通信システムの活用が始まったことから無人機の将来性に着目、その開発に専念することを決めた。最初に作ったのがプリデーター・ドローン(Predator Drones)、これが海兵隊、空軍、さらに国境警備を担当するCIAに採用され事業発展のきっかけとなった。

後継機はMQ-9 リーパー(Reaper)で、2007年から米空軍に納入が始まりこれまでに300機以上が生産された。系列機の一つにMQ-9B Sky Guardian/Sea Guardianがある。これは我国の海上保安庁で5機配備、海上自衛隊は2028年~2038年に23機を導入することを決めている。いずれもハニウエル製TPE331ターボプロップ900 hp付き、AI遠隔操縦方式である。

こうしてGA-ASIは世界最大の無人機製造会社に成長し、30年間に世界各国に1200機以上を納入している。Predatorから始まってMQ-9A Reaper、MQ-1C Gray Eagle、MQ-20 Avenger、MQ-9B Sky Guardian/Sea Guardian、の合計飛行時間は900万時間を超えている。

図6:(USAF /Lt. Col. Leslie Pratt) アフガニスタン上空を飛ぶMQ-1プリデーター、両翼パイロンにAGM-114ヘリファイヤー・ミサイルが見える。地上操縦型で長さ8.23m、翼幅14.8 m、エンジンは水平対抗ピストン115馬力。1995-2018年で360機を製造した。

GA-ASIが現在製造する自律飛行できる戦闘用無人ジェット機は次の3機種である。

MQ-20 アベンジャー(Avenger):

地上遠隔操縦方式だが自律飛行もできる、 P&WC PW545Bターボファン推力5,000 lbs装備、翼幅20 m、後退角17度、長さ13 m、離陸重量8.3 ton、性能は巡航速度650 km/hr、航続時間18時間、爆弾・ミサイル2.9 ton搭載可能。初飛行は2009年4月、9機製造、空軍研究所 (Air Force Research Lab.)など政府機関が保有、AIソフトの研究などに使われている。合成開口レーダー(synthetic aperture radar)、電子光学目標捕捉装置(EOTS= electro optical targeting system)、ALERTと呼ぶ先進目標捕捉装置、などを装備する。

図7:(GA-ASI) MQ-20 アベンジャー無人攻撃機。社内ではプリデーター(Predator) Cと呼ぶ。飛行高度50,000 ftで対空時間は20時間以上。

XQ-67A:

有人戦闘機の前方に進出、取得した情報を有人戦闘機に伝える「OBSS=Off-Board Sensing Station」任務を遂行する無人機”CCA”として開発された。初飛行は2024年4月28日。低価格、用途に応じ部品・装備品の変更が可能、かつ量産向けのプラットフォームである。AI遠隔操縦方式で、最近カリフォルニア州の砂漠で行われた飛行試験で政府基準の自律性(autonomous Systems)と戦術データリンク通信システム(Tactical Datalink Communication)の認証を取得した。これであらゆる場面で有人機との連携行動がシームレス(seamless interoperable)で実行できることが立証された。

YFQ-42A:

MQ-20はCCAとしては航続時間が長すぎる反省を踏まえ、「YQF-42A」はXQ-67Aを基本とし、車輪・装備アビオニクス・ソフト等はそのままで、主翼を細く後退角を増やし胴体を伸ばし、高速化して飛行性能 (maneuverability)を有人機と同等にしている。

米空軍は、2024年選定のCCA候補無人戦闘機に、2025年3月3日に正式名称を交付、GA-ASI製は「YFQ-42A」、アンドウリル製は「YFQ-44A」とした。”Y”は正式プログラムが始まる前の初期型、”F”は戦闘機の頭文字、”Q”は無人機を意味している。本格生産が始まると”Y”がなくなる。

「YFQ-42A」に関するその他の説明は既述の通り。

図8:(GA-ASI) YFQ-42Aは、MQ-20アベンジャー、XQ-67A、の経験を継承し完成度を高めた無人戦闘機となる。

図9:(GA=ASI) GA-ASI製の無人ジェット機、上から下へ、MQ-20アベンジャー、XQ-67A、YFQ-42A。YFQ-42A は、XQ-67A を基本とした機体で、XQ-67A初飛行の僅か18ヶ月後に飛行する予定。

終わりに

米空軍は、2026年度予算でGA-ASI製とアンドウリル製の共同戦闘無人機を100機、合計1,200億円で取得することを決めた。我国令和7年度予算では「無人アセット防衛能力」向上策の1項目として「SUBARU遠隔操作型支援機研究」を入れている。「無人アセット防衛能力」にはMQ-9B シー・ガーデイアン 取得費などを含め総額1,100億円だが、SUBARU無人機開発に充当する費用は少額にとどまる。

GA-ASI製は無人ジェット戦闘機として試作した2機種を基本にして開発したもの、アンドウリル製は仮想敵機として開発した機体をCCA向けに改良したもの、2025年夏から空軍で実戦を想定した評価試験が行われる。関係情報を総合すると、GA-ASIは、無人機専門企業のためかYFQ-42A開発に社運を賭けている様子がうかがえる、一方アンドウリルはYFQ-44Aを多種類の国防受注項目の一つとして捉え冷静に取組んでいる。どちらが高評価を得るか今後を注目したい。

―以上―

本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。

  • Airforce Technology July 21, 2025 “General Atomics plan to deliver European CCA” by John Hill
  • General Atomics News July 17, 2025 “A New Transatlantic Partnership for European CCA
  • General Atomics News May 19, 2025 “GA-ASI moves into Ground Testing of New YFQ-42A CCA”
  • General Atomics News Jul. 16, 2024 “XQ-67A Demonstrates Autonomy and Datalink Interoperability During High Desert Flight Test”
  • TokyoWxpress 2024-2-24 “ミッチェル報告「米中戦わば」によると、米空軍は無人機CCAを多数投入して対抗”
  • Tokyoexpress info 2024-06-23 “米空軍、有人戦闘機に随伴する無人機開発に2社を選定“
  • Tokyoexpress info 2024-10-17“アンドリル低価格巡航ミサイル”バラクーダ“を発表”
  • Tokyoexpress info 2024-11-21 “防衛省、海自用滞空型無人哨戒機にGA-ASI製MQ-9B Sea Guadianを選定”
  • Defense News May 2, 2025 “Air Force starts ground testing Anduril collaborative combat aircraft” by Sephen Losey
  • Air Force News March 3, 2025 “Air Force designates two Mission Design Series for collaborative combat aircraft”
  • Wikipedia “Anduril YFQ-44”