日米英空母を含む6カ国14隻の艦隊が西太平洋上で共同訓練


2025-8-23(令和7年) 松尾芳郎

8月5日、海上幕僚監部は西太平洋上で、[自由で開かれたインド太平洋]の実現に向け各国との連携を強化するため、6カ国軍と共同訓練をすると発表した。期間は8月4日〜12日。参加艦艇には、英空母「プリンス・オブ・ウエルズ(R09)」、米空母「ジョージ・ワシントン(CVN-73)」、米強襲揚陸艦「アメリカ(LHA-6)」、海自護衛艦「かが(DDH-183)、の4隻の空母型艦が参加した。

(Aug. 5th 2025, Japan’s Maritime Staff Office announced, Japan’s Naval Force will held multinational exercise with U.K., Australian, Norwegian, Spanish, and U.S. Navies, on Aug. 4~12. aiming to maintain “Free and Open Indo-Pacific ”. The drill participated by four large Carrier vessels, including “Price of Wales (R09)” of U.K., “George Washington(CVN-73)” and “America (LHA-6)” of U.S., and “Kaga (DDH-183)” of Japan.)

図1:(Royal Navy)西太平洋での6カ国訓練に先立ち香港に寄港したイギリス海軍空母「プリンス・オブ・ウエルズ(HMS Prince of Wales/R09)」、満載排水量88,800 ton、長さ284 m、速力25 kts、航続距離1万浬(18,500 km)、F-35B戦闘機24~36機を搭載。スキージャンプ方式甲板から発艦する。

各国軍の参加部隊は次の通り;―

  • 海上自衛隊3隻:空母「かが (DDH-184)」26,000 ton/呉基地第4護衛隊所属、護衛艦「てるずき(DD-116)」6,800 ton、潜水艦(艦名非公表)1隻、
  • イギリス海軍4隻:空母「プリンス・オブ・ウエルズ(HMS Prince of Wales /R09)」、ミサイル駆逐艦「ドーントレス(Type 45 Destroyer [Dauntless /D33) ]」9,400 ton、フリゲート「リッチモンド(Type 23 Frigate {Richmond /F239)} 4,900 ton、給油艦「タイドスプリングス(A Replenishment Oiler) RFA Tidespring (A136)」、39,000 ton、(いずれも[CSG25]空母打撃群に所属)

[CSG 25]が西太平洋に航行中、F-35B戦闘機1機が油圧系統故障でインド・ケララ(Kerala)空港に非常着陸(6月14日)したが、修理完了の後7月23日に6,400 kmを飛び、シンガポール寄港中の「プリンス・オブ・ウエルズ」に帰還した。「6カ国共同訓練」中の8月10日、別のF-35B戦闘機1機が故障、鹿児島空港に非常着陸をした。こちらは目下修理中でまだ艦隊に復帰していない。

  • アメリカ海軍4隻:空母「ジョージ・ワシントン(USS George Washington /CVN-73)」104,000 ton、ミサイル巡洋艦「ロバート・スモールズ(USS Robert Smalls/CG-62)」9,500 ton、ミサイル駆逐艦「シュープ(USS Shoup/DDG-86)」9,600 ton、強襲揚陸艦「アメリカ(USS America/LHA-6)」45,700 ton、(「アメリカ/LHA-6」には海兵隊も乗艦、いずれも[CSG5]空母打撃群に所属)
  • オーストラリア海軍1隻:ミサイル駆逐艦「ブリスベン(HMAS Brisbane /DDG-41)」7,000 ton、
  • スペイン海軍1隻:フリゲート「メンデス・ヌニエス(Mendez Nunez/F-104)」6,300 ton、
  • ノルウエイ海軍1隻:フリゲート「ロアル・アムンゼン(KNM Roald Amundsen/F 311)」5,100 ton、

このようにして「6カ国訓練」は8月4日から10日間、九州・四国からフィリピン東方の太平洋上の海域で、空母型艦4隻を含む14隻の艦艇とF-35B、F-35Cなど航空機が参加して実施された。東アジア地域で進行中の力による現状変更を許さない、との日米豪など同盟国および英国などNATOの決意を示した演習となった。

これに関連して中国軍は次の動きで対抗した。すなわち;―

  • 8月4日、中国海軍ジャンカイII級フリゲート(578)、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(156)が宮古海峡を通過太平洋に進出。
  • 8月5日、中国海軍ドンデイアオ級情報収集艦(798)が宮古海峡を通過太平洋に進出。
  • 8月7日、中国軍無人機1機が東シナ海から与那国島―台湾の海峡を抜け太平洋上で旋回飛行、往路と同じ経路で戻る。
  • 8月9日、中国軍は台湾海峡で各種艦艇6隻と海警局艦2隻、航空機54機を動員、台湾海峡で台湾威圧の行動を行った。

6カ国訓練(8月4日〜12日)の間とその前後で次の訓練等が行われた。すなわち;―

  • 7月13日〜8月4日の間米豪主催19ヵ国参加の演習「タリスマン・セイバー25(Talisman Sabre 25)で、米空母「ジョージ・ワシントン(CVN-73)」、英空母「プリンス・オブ・ウエルズ(R09)」、海自ヘリ空母「いせ(DDH-182)」19,000 ton、などが共同訓練を実施。
  • 7月31日〜8月4日の間、フィリピン東方の太平洋上で、スペイン海軍フリゲート「「メンデス・ヌニエス(F-104)」と海自空母「かが (DDH-184)」、護衛艦「てるずき(DD-116)」が対潜水艦戦を含む共同訓練を実施。
  • 8月6日、7日の両日、築城基地および九州周辺の空域で、英海軍空母「プリンス・オブ・ウエルズ」搭載の空軍所属F-35B VTOL戦闘機4機と空自第9航空団F-2戦闘機3機が共同訓練を実施。
  • 8月7日、8日の両日、ニュージランド西方海域でニュージランド海軍多用途船「カンタベリー」と海自ヘリ空母「いせ(DDH-182)」、護衛艦「すずなみ」が共同訓練を実施。
  • 8月17日、「第5空母打撃群(CSG 5=Carrier Strike Group 5)の旗艦・空母「ジョージ・ワシントン(CVN 73)」と巡洋艦「ロバート・スモールズ(CG-62)はグアム島海軍基地に、そして駆逐艦「シュープ(DDG 86)はサイパンに移動・到着。

米第7艦隊(US Seventh Fleet)

アメリカ海軍から参加した4隻はいずれも第7艦隊に所属し、ハワイ・ホノルルに司令部を置く太平洋艦隊の指揮下にあり、インド洋から太平洋の日付変更線の西側の区域を担当している。旗艦/司令部は、横須賀が母港の揚陸指揮艦「ブルーリッジ(USS Blue Ridge/LCC-19)」19,000 tonにある。

第7艦隊は、原子力空母「ジョージ・ワシントン(CVN-73)」と搭載の「第5空母航空団(CVW-5=Carrier Air Wing Five)」を中心とする米海軍最大の艦隊である。第5空母航空団は、固定翼機(F-35C戦闘機等)は岩国基地、回転翼機は厚木基地を本拠にする。

「任務部隊(Task Force)」は「CTF=Commander Task Force」と呼び70番台がつけられる。

第70任務部隊(CTF-70)は空母「ジョージ・ワシントン」に司令部を設置。護衛にはミサイル巡洋艦「ロバート・スモールズ(USS Robert Smalls/CG-62)」と第15駆逐艦隊(DESRON 15)所属の駆逐艦2隻が就く。(今回駆逐艦は「シュープ(USS Shoup / DDG-86)」1隻のみが参加)

図2:(海上自衛隊)空母「かが (DDH-184)」満載排水量26,000 ton、長さ248 m、最大速力30 kts。兵装は対空防御用として20 mm機関砲[S|CIWS] 2基および艦対空ミサイル[Sea RAM]2基を備える、対艦/対潜兵装はない。F-35B戦闘機の搭載機数は未公表だが10~20機と推定。写真はF-35B運用のため第1期工事完了(2024年3月)後の写真。

図3:(Royal Navy) 空母「かが (DDH-184)」に着艦するイギリス空母「プリンス・オブ・ウエルス(R09)」艦載のF-35B VTOL戦闘機。

図4:(U.K. Royal Navy photo)2025年7月18日撮影。米空母「ジョージ・ワシントン(CVN-73)」には[攻撃戦闘機中隊(VFA=Strike Fighter Squadron) 147]所属の F-35C戦闘機、英空母「プリンス・オブ・ウエルズ(R09)」はF-35B VTOL戦闘機18機を搭載する。

終わりに

8月15日「横須賀軍港クルーズ」に参加、暑い日だったが汐入桟橋を11時に出発、右手にアメリカ海軍横須賀基地・左手に吾妻島を見ながら航行、まず右の楠ガ原岸壁に海自潜水艦が2隻、米海軍基地12号バースには「プリンス・オブ・ウエルズ」が停泊、甲板にはF-35Bが並んでいた。それから日米が共同使用する倉庫群施設がある吾妻島(補給基地)を迂回すると海自横須賀基地の船越地区に入る。ここでは、海自潜水艦3隻と潜水艦救難艦「ちよだ/ASR-404」7,100 tonが停泊。続いて最新のミサイル駆逐艦「まや/DDG-179」10,250 ton、フリゲート「もがみ/ FFM-1」5,500 ton、それと護衛艦「あまぎり/DD-154」4,900 ton、の3隻が停泊していた。新井堀割水路を通り海自の吉倉桟橋付近に来ると、手前にノルウエイ海軍フリゲート「ロアル・アムンゼン(KNM Roald Amundsen/F 311)」5,100 ton、その後ろに英海軍ミサイル駆逐艦「ドーントレス(HMS Dauntless/D33)」5,800 ton、が並んでいた。艦首側面には艦番号はなく「ウエルズ」の象徴“赤い竜”が描かれていた。そして12時前に汐入桟橋に帰着。

海自横須賀基地は大東亜戦争までは帝国海軍横須賀鎮守府が置かれていたが、敗戦後米海軍が接収。1952年海上自衛隊が発足し、旧海軍跡地の3分の一を使っている。

海自横須賀基地に配属中の艦艇は次の通り;―

第1護衛隊:「いずも(DDH-183)」、「まや(DDG-179)」、『むらさめ(DD-101)」、「いかづち(DD-107)」、

第6護衛隊:「きりしま(DDG-174)」、「たかなみ(DD-110)」、「おおなみ(DD-111)」、「てるづき(DD-116)」、

第11護衛隊:「ゆうぎり(DD-153)」、「あまぎり(DD-154)」、「もがみ(FFM-1)」、「くまの(FFM-2)」、

潜水艦隊司令部(船越地区)隷下に次の艦が配備されている。

第2潜水隊群:救難艦「ちよだ(ASR-404)」、第2潜水隊3隻、第4潜水隊4隻、第6潜水隊3隻、第11潜水隊1隻(たいげい/SSE-6291)、

軍港クルーズで判ったことは、米第7艦隊および海自護衛艦隊の主力はいずれも出航して不在、「6カ国共同訓練」終了後も休まず新任務に就いたり、訓練に当たる様子が伺えた。その後「かが(DDH-184)」/呉基地所属 は横須賀に来航、「プリンス・オブ・ウエルズ(R09)」と共に、8月23日に石破総理・中谷防衛相の視察を受けた。

図5:横須賀軍港第12パーズに停泊中のイギリス海軍空母打撃群[CGS25]の旗艦空母「プリンス・オブ・ウエルズ」、艦上にはF-35B STOVL戦闘機が並んでいる。

図6:横須賀軍港船越地区に停泊する海自鑑定。右から左へ、ミサイル駆逐艦「まや/DDG-179」10,250 ton、フリゲート「もがみ/ FFM-1」5,500 ton、護衛艦「あまぎり/DD-154」4,900 ton、

図7:吉倉桟橋に停泊するノルウエイ海軍フリゲート「ロアル・アムンゼン(KNM Roald Amundsen/F 311)」5,100 ton(左)と、英海軍ミサイル駆逐艦「ドーントレス(HMS Dauntless/D33)」5,800 ton(右)

―以上―

本稿作成の参考にした記事は次の通り。

  • 2023年12月14日Gov. UK “UK Carrier Strike Group to visit Japan in 2025”
  • USNI News July 14, 2025 “U.S.,Australia Kick Off Talisman Sabre 2025” by Dzirhn Mahadzir
  • 8月5日海上幕僚監部発表 “日英米豪西諾6カ国共同訓練について”
  • 8月5日海上幕僚監部発表 “日スペイン共同訓練について”
  • 8月5日海上幕僚監部発表 “日豪新共同訓練について”
  • 8月5日乗りものニュース“空母化進む巨大護衛艦が戦闘!ついに超珍しい艦隊が実現まるで機動部隊?”
  • 8月6日乗りものニュース“6カ国14隻の壮大な艦隊日本近海に出現!空母化した護衛艦でF-35B戦闘機の発着訓練あるか?”
  • 8月8日防衛省発表 “英空母打撃群による日本寄港の日程について”
  • 8月11日乗りものニュース“英軍最新鋭ステルス戦闘機 F-35Bが海自護衛艦かがに初着艦 共同訓練で” by 髙橋浩佑
  • Wikipedia “UK Carrier Strike Group”