本稿は木村良一氏の寄稿です。映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』を観てきた。女性として世界で初めてエベレスト(8848メートル)の登頂を成し遂げた、登山家の田部井淳子さん(享年77歳)を描いた映画である。田部井さんの話は前回のメッセージ@pen11月号(「田部井淳子さんを偲ぶ」)でも取り上げた。
映画のストーリーは世界最高峰のエベレストの登頂までの挑戦と成功、登頂後の仲間との離反、長男の反抗、がんの闘病、夫婦の絆、子供たちとの家族愛、登山を通じた友情など田部井さんの半生そのものである。かつて田部井さんを取材し、1問1答形式の記事にまとめたことのある私にとって大半は直接、聞いた話だった。