12式地対艦誘導弾能力向上型、開発完了で配備開始


2026-2-18(令和8年) 松尾芳郎

2025年12月19日、防衛省は開発中の「12式地対艦誘導弾能力向上型」の第2次発射試験を行い、開発完了の目処がついたと発表した。2026年3月までに生産に入り、熊本県建軍駐屯地にある第5地対艦ミサイル連隊から配備を開始する。

(Japan’s Ministry of Defense (MOD) announced , that the development of Type 12 anti-ship & land cruise missile, enhanced performance version, has been finished by December 19, 2025. The missile will be deployed Army’s Anti-ship & land missile regiments in western Japan.)

図1:(motor-fan )2025年秋開催の防衛装備庁主催の技術シンポジウムで展示された「12式地対艦誘導弾能力向上型」。長距離飛行のため大きな展張式主翼を持つ。

図2;(防衛装備庁)「12 SSM能力向上型」試作仕様書。上側は「能力向上型」の要求寸法で、全長9 m以下、胴体幅1 m以下、主翼展張時の幅4 m以下。説明の上は左から(テレメータ、トランスポンダー、指令受信装置等)、(胴体部・総合弾用)、(主翼)、(分離装置)、(ブースター部)、下側は左から(誘導部)、(燃料タンク)、(推進装置部)、(操舵翼)を示す。図下の枠線は発射筒(ランチャー)の内側寸法(長さ9.1 m幅1.2 m、高さ1 m)を示す。

図3:(防衛省)新旧の「12式地対艦誘導弾(ブースター付き)」比較。「12式」は円筒形、エンジンはターボジェット。「能力向上型」は[RCS]低減のステルス形状、長大な主翼とターボファン付き。

図4:(防衛省・陸上幕僚監部)「地対艦ミサイル連隊の配置状況(令和5年度末)」を新情報を基に改訂した図。当時の5個連隊編成が現在は8個連隊に増強される。

「地対艦ミサイル連隊」の編成の例

本部管理中隊に「指揮統制装置1基、捜索評定レーダー12基、中継装置12基を装備し、併せて「地対艦ミサイル中隊」4個中隊で編成される。

1個中隊は、3.5 tonトラック搭載の「射撃統制装置」1輌。8輪駆動重装輪車「発射機」 4輌、誘導弾装填車4輌で編成されている。。

配備する地対艦ミサイル

我国はこれまで陸自に2種類の地対艦ミサイルを配備してきた。「88式地対艦誘導弾」と2012年配備開始の「12式地対艦誘導弾」である。88式は主にロシアの脅威に備えるため北海道や東北地方に配備し、12式は中国の侵攻に備えるために九州・沖縄へ配備中である。

「12式地対艦誘導弾能力向上型」の種類

「12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)」は、2025年末に熊本県建軍駐屯地第5地対艦ミサイル連隊に、2027年に静岡県富士駐屯地特科教導隊、大分県湯布院第8地対艦ミサイル連隊、沖縄県勝連の第7地対艦ミサイル連隊にそれぞれ配備される。

同「(艦発型)」は、2027年末に改修済み護衛艦「てるづき(DD-116)」に搭載・運用を開始する。

同「(空発型)」は、2027年末に茨城県百里基地・第7航空団の「F-2能力向上型」戦闘機(約40機)で運用開始する。

「12式地対艦誘導弾能力向上型」とは別に「島嶼防衛用高速滑空弾」の開発も進行中。2025年〜2026年夏で国内および米国で発射試験を完了、2025年に富士駐屯地・特科教導隊に配備、2026年度中に運用開始する。北海道上富良野駐屯地および宮崎県えびの駐屯地に運用部隊を新編し配備する予定。

「12式地対艦誘導弾」は円筒形の胴体に小型翼を備えたのに対し、「能力向上型」はレーダーに探知され難い鋭角面で構成する[RCS極小化]胴体になり、主翼は長距離飛行のため細長い形状になる。エンジンは「12式」がターボジェットであったのに対し、「能力向上型」は燃費の少ない長距離飛行に適した新設計の「ターボファン」になっている。

これで射程は「12式」の約200 kmから「12式能力向上型」では、当初約1,000 kmから将来1,500 kmに伸ばす。1,000 kmとは東京から九州南端までの距離、あるいは熊本から北京、上海の距離に相当する。

この長距離を飛行するのは1時間以上かかる。移動する敵艦を攻撃するには、目標の位置を時々刻々把握、修正しながら飛行しなければならない。このため誘導システムは「慣性誘導(I N S)」、「GPS誘導」、それに「衛星経由データ・リンク」システムで構成され、正確に目標近くまで飛行する。終末航程は「Active Radar Homing」方式、すなわち自機レーダーで目標を捕捉して着弾する。最終段階では敵の防空システムを回避するため回避飛行をしながら突入する。

「12式地対艦誘導弾能力向上型」の種類

  • 地発型(地上発射型) 固体燃料ブースター付き、2026年初めに配備開始
  • 艦発型(艦艇発射型) 固体燃料ブースター付き、2027年に配備開始
  • 空発型(航空機発射型) 固体燃料ブースター無し、2027年に配備開始

「12式地対艦誘導弾能力向上型」の発射試験

(地発型)と(艦発型)の発射試験は国内と米国で実施された。

  • 2024年12月6日 防衛省発表:東京都新島にある航空装備研究所・新島支所で2024年10月〜11月に5回(艦発型2回を含む)の試射を実施、予定通りの成果を収めた。
  • 2025年12月19日 防衛省発表:米国カリフォルニア州(ポイント・マグー試射場?)で2025年10月〜11月に7回の試射を実施、予定の成果を収め開発完了の目処が得られた。

図5:(防衛省)12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)、2025年12月、カリフォルニア州(ポイント・マグー試射場?)で行われた発射試験の様子。

図6:(防衛省)12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)、レーダー反射面積(RCS)を少なくする形状、エンジン・エアインテイク、ブースターなどが良くわかる。

図7:(防衛省)12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)、2025年12月、カリフォルニア州での発射試験。

図8:(防衛省)12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)、2024年10月〜11月の航空装備研究所・新島支所での発射試験。発射直後は主翼は折畳み、固体燃料ブースターで飛翔開始。

図9:(防衛省)12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)、新島支所での発射試験の2枚目の写真。やや不鮮明だが主翼が展張されブースターが投棄されていることが分かる、ターボファン・エンジンで飛行を開始したところ。

エンジンは川重製ターボファン

エンジンは、川崎重工・航空宇宙システムカンパニーが試作するXKJ300ターボファン、推力365~400 kg、重量90 kg、エンジン直径35 cm、全長85 cm、の2軸式、これを「12 式地対艦誘導弾・能力向上型」用に改良して2022年初めから三菱重工に納入している。

後述する「新SSM」に基づき「KJ300」を改良したのが「XKJ301-1」ターボファン、推力を10 kN以上に増強し、高圧軸(HP shaft)と低圧軸(LP shaft)に内蔵発電機を組込み発電能力を100 kWにしている。「12式地対艦誘導弾能力向上型」の後期モデル、射程1,500 kmプラス型にはこれが使われよう。

図10:(防衛装備庁)川崎重工が「新SSM」プログラムで開発したターボファン「XKJ301-1」。ファンは後退角付きワイドコード型。

図11:(防衛装備庁)川崎重工製ターボファン「XKJ301-1」のカットビュー。2軸式で、低圧系(LP system)は:ファン1段・コンプレッサー1段+タービン1段。高圧系(HP system)は:遠心コンプレッサー1段+タービン1段。燃焼機は逆流式。

島嶼防衛用新対艦誘導弾(新SSM)の要素技術の研究

「12式地対艦誘導弾。能力向上型」とは別に防衛装備庁では「島嶼防衛用新対艦誘導弾要素技術の研究」を8年前(2018年)から始めている。主契約は川崎重工。

これは将来の対艦誘導弾に必要なバレルロールを含む高機動化技術、生残性を高めるためのステルス技術、高性能ターボファンなど長射程化に必要な技術、などの研究を行い、装備化に向けての要素技術を確立する。即ち「新対艦誘導弾(新SSMと略す)」は「量産」ではなく、「12式地対艦誘導弾」などの量産型誘導弾に使う要素技術の開発をするが目的である。

「新SSM」の特徴は次の通り。

  • 大型主翼で翼面荷重を低減し敵の迎撃を回避する高機動性を実現する。
  • 機体形状は極めて高いステルス性を持つ。
  • 「XKJ301-1」ターボファンで低燃費、長射程を実現する。
  • デユアルシーカや赤外線画像誘導シーカで地上/海上目標を識別、精密誘導する。
  • 双方向通信に対応したデータリンク装置で誘導弾同士で協調行動をする。
  • オープン・アーキテクチャ設計を採用、機体の共通部分をそのままにして用途に応じたモジュールを組込み、多様な派生型ミサイルの製造を可能化する。
  • 2027年発射試験予定の「新SSM」2号機は、供試体Aと供試体Bの2種類がある。A型は赤外線シーカを搭載する誘導弾型で、胴体長さが1号機の1.3倍。B型は目標情報収集型でEO/IIRシーカ・モジュールを搭載するので長さが1.6倍になる。

図12:(防衛装備庁)2025年秋に実施した「新SSM」1号機の飛行試験の姿。大型の主翼、機首のシーカを収納する部分の形が分かる。

図13:(防衛装備庁)「新SSM」1号機・飛行試験用機体。主翼は二重折畳み構造になっている。

図14:(防衛装備庁)「新SSM」1号機・試験飛行用機体の概要図。胴体下部のエア・インテークから長い湾曲したダクトで「XKJ301-1」ターボファンにエアを供給する。これはステルス性を高めるための構造。

終わりに

主題の「12式地対艦誘導弾能力向上型」は開発完了して、2026年初めから「地発型」の配備が始まっている。続いて2027年から同「艦発型」、「空発型」の配備が開始される。「地発型」を装備する陸自「地対艦ミサイル連隊」は8個連隊に増強され、1個連隊は、キャニスター6個搭載の発射機16輌程度を運用、ミサイル弾数で言えば128発を常時発射できる状態にすることになる。8個連隊合計では1,024発になる。一部報道では当面2,000発を急ぎ調達、としているが、これは1〜2回の斉射で打ち尽くすことになる。

中国、ロシアからの我国/第1列島線に加わる脅威は、圧力の度合いを強めている。これを抑止するには強力な反撃能力を示す必要がある。その一つとして「12式対艦誘導弾能力向上型」の配備の一層迅速化が肝要、同時に更なる性能向上も必須と考える。

―以上―

本稿作成の参考にした記事は次の通り。

  • 防衛省 令和7年12月19日“スタンド・オフ防衛能力に関する事業の進捗常用について”
  • 防衛省 令和7年8月29日 “国産スタンドオフ・ミサイルの早期整備等について”
  • Yahoo Japan News 2025/12/19 “12式地対艦誘導弾能力向上型の第2次発射試験を実施、開発完了の目途” by JSF
  • Motor-fan 2025-12-21 “12式地対艦誘導弾能力向上型・開発完了!これまでのミサイルとは全く異なる凄い能力とは”by綾部 剛之
  • 防衛装備庁長官官房装備開発官 2025-12-13 “島嶼防衛用新対艦誘導弾の要素技術の研究”
  • TokyoExpress 2021-1-10 、2022-08-15、2023-10-19に関連記事があるので参照されたい