2017-04-14(平成29年) 松尾芳郎
防衛省統合幕僚監部の発表(29-04-13)によると、平成28年度(2016-04-01から2017-03-30)の航空自衛隊戦闘機による緊急発進(スクランブル)回数は1,168回に達した。他国機による領空侵犯を防ぐため緊急発進を開始した1958年(昭和33年)以降で、最多となった。
緊急発進の対象国は中国機が73% (851回)で最も多く、ロシア機が26% (301回)で、その他が1%であった。
方面隊別の状況は、北部航空方面隊(三沢基地)が265回、中部航空方面隊(入間・横田基地)が34回、西部航空方面隊(春日基地)が66回、それに南西航空混成団が803回、緊急発進を行なった。前年対比では北部と南西混が著しく増加した。北部方面隊ではロシア機に対する緊急発進が301回に増え、また南西航空混成団では中国機に対する緊急発進が803回と著増したのが特徴である。
中国機は、戦闘機による沖縄本島と宮古島間の往復や、爆撃機による対馬海峡の通過など、その能力向上の示威飛行が見られるようになった。
緊急発進業務が著しく増えた「南西航空混成団」とは;—
航空自衛隊には3個の航空方面隊と並んで、規模の小さい「南西航空混成団」がある。南西混の主たる任務は、沖縄本島及び南西諸島の防空である。その編成は、F-15戦闘機2個航空隊の計約40機からなる第9航空団と、PAC-3対空ミサイルを装備する第5高射群と固定レーダーサイトなどを運用する3個警戒隊を含む1個航空警戒管制隊、から構成されている。
平成29年度予算で「南西航空混成団」は「南西航空方面隊」と改称され、沖縄県と南西諸島の防空体制の一層の充実を目指すことが決まっている。
図1:(統合幕僚監部)赤字で示す平成28年度の緊急発進回数は1,168回に達し、冷戦時代のピーク、昭和59年度の944回を大きく上回った。理由は中国機の飛来件数が著しく増えたためだ。
図2:(統合幕僚監部)平成28年度の方面隊別の緊急発進回数の推移。ここで南西航空混成団の発進回数が803回で飛び抜けて多いことがわかる。
図3:(統合幕僚監部)緊急発進対象国別のチャート。平成27年、28年度で中国機の増加が著しい。
図4:(統合幕僚監部)中国機(赤色)及びロシア機(黄色)の我国周辺での飛行経路。両国の空海軍機の能力の誇示と我国に対する威嚇と受け止められる。
図5:(航空自衛隊)南西航空混成団ホームページ記載の、部隊配置図。一層の充実が緊急に望まれる。
—以上—