2018-04-08(平成30年) 松尾芳郎
防衛省統合幕僚監部の発表によれば、4月5日(木)午前8時ごろ、中国海軍艦艇3隻が沖縄-宮古島間の宮古海峡で、宮古島の北北東130 kmの海域を航行し,東支那海から太平洋に向け南東に進むのを、海自護衛艦「じんつう」が発見、追尾した。
中国海軍艦艇は次の通り。
ジャンカイ(江凱) II級フリゲート 2隻
フチ(福地) 級補給艦 1隻
本件について我国のマスコミは一切報道していない。
マスコミは宮古海峡が「国際海峡」と誤解しているようだがこれは違う。海洋法条約によれば「国際海峡」とは「海洋法条約によって定義された国際航行を定められた範囲で自由に行える海峡のこと」である。我国では陸地から12海里以内(領海)で「国際海峡」とされる海域は、宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道、大隅海峡、の5カ所である。
「宮古海峡」は公海でも領海でもなく、日本の「排他的経済水域」(EEZ)である。主権は我国にあり、許認可権があるので他国による測量や人工島建設などは拒否できる。ただし軍艦などの船舶が通行することは可能である。
このため我国マスコミは中国軍の宮古海峡通過を黙認する。その結果、この海峡は今や中国艦隊と中国軍機の出入り口となっている。またマスコミは中国軍指揮下の海警局船舶による尖閣諸島の領海侵犯にもさしたる抗議の声を上げていない。
仮に、我が海自艦艇や空自戦闘機が黄海や渤海湾の公海上あるいは中国のEEZ内を航行し、演習をしたらどうするのだろうか。中国政府からの強硬な反対は当然予想されるが、我国ではマスコミのみならず野党等は一斉に“暴挙”と叫び自国の政府を非難、攻撃するだろう。
大多数のマスコミは、東支那海/西太平洋で繰り返す中国軍の威圧行動には目を背けるが、これに対する備えとなる沖縄辺野古への海兵隊基地移設や、オスプレイの配備増強については、相変わらず反対を唱えている。翁長雄志沖縄県知事と同じ態度だと言われても仕方がない。
「宮古海峡」は、中国軍の太平洋への出入り口であるとともに、「絶対に解放する」と宣言している台湾侵攻の後背地として重要な位置にある。このことを我々は忘れてはいけない。
図1:(統合幕僚監部)[江凱II] 054A型と呼ばれる次世代型ミサイル・フリゲートの24番艦とされる艦番号515「浜州」で、東海艦隊に所属。2016年1月就役の最新艦。同型艦は25隻になる。
満載排水量4,500 ton、速力27 kts。対空兵装はロシアの)M-38Mを改良した射程25-42 kmのHQ-16(紅旗16)を32セル垂直発射装置(VLS)に収めていて、僚艦防空能力を持つ。対艦、対潜水艦兵装にも優れており、フリゲートとはいえ4,000 tonを超える大型艦で航行性能が高く、遠洋航海を容易にこなせる。
図2:(統合幕僚監部)「江凱」II級フリゲート2番艦「徐州」で、2008年就役、東海艦隊に所属している。
図3:(統合幕僚監部)903型「福地」級補給艦の1番艦、艦番号886は2004年就役の「千島湖」。本格的な洋上補給艦で、空母打撃艦隊を支援するのが主任務、同型艦はすでに8隻が完成している。満載排水量23,000 ton、速力20 kts、甲板に、前方/燃料移送用、後方/ドライカーゴ用の門型ポスト2基を備えている。搭載補給物資は艦船用燃料7,900 ton。903型補給艦の充実で中国海軍の遠洋作戦能力は著しく向上した。
図4:(海上自衛隊)4月5日宮古海峡を通過、太平洋に向かう中国艦3隻を発見したのは佐世保基地第13護衛隊所属の護衛艦「じんつう」DE-230である。「あぶくま」型護衛艦6隻のうちの2番艦で1990年就役、基準排水量2,000 ton、速力27 kt。兵装は、76 mm単装砲1門、ハープーン対艦ミサイル4連装発射筒2基、74式アスロック対潜ロケット8連装発射機1基、20 mm CIWS対空機関砲1基、などである。
図5:(Google)赤線で示す4月5日木曜日の中国艦艇3隻の航跡。宮古海峡は沖縄本島と宮古島の間にあり、約270 kmある。そのうち90 kmが我国領海と接続水域、残りの180 kmが排他的経済水域になっている。
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