2018-04-14(平成30年) 松尾芳郎
図1:(Airbus) エアバスが、傘下の“テステイア”社と共同で開発した旅客機検査用のドローン・システム。今年秋にEASAの認証取得を目指す。
航空機の機体検査にドローンを使えば、検査にかかる時間を大幅に短縮でき、コストも節減できることがわかってきた。ドローンを使う検査手法は送油パイプとかガスパイプラインの検査に使われ始めている。エアラインの整備部門でも、これを定期的な検査手法の一つとして導入しようとしている。
エアバスでは、ハンガー内で機体検査にドローンを使う手法を近くマニュアル化する。ドローンを使うことで、これまで外観検査を目視で丸一日かかっていたのを3時間に短縮できる。
エアバスは、エアフランスなどの機体でドローン使用の検査を実証済みで、今年秋から欧州航空安全庁(EASA=European Aviation Safty Agenncy)の認可を得て、航空機整備の手法として取り入れる予定だ。
ドローン・システムには、カメラ、衝突防止センサー、検査対象機毎の飛行計画のソフト、エアバス設定の検査解析ソフト、などが組み込まれている。特に胴体上面の検査は、従来はアクセスが難しく大型のプラットフォームが必要だったが、ドローン・システムが実用化されれば極めて容易に検査できる。
エアバスのドローン検査法は、エアバス傘下の非破壊検査の専門子会社“テステイア(Testia)”社と共同で開発した。
この検査ドローンは、エアバスが考えている“将来のハンガー(Hangar of the Future project)”の一部となる。このプロジェクトは、航空機整備に自動検査を取り入れ、自動データ収録を行い、整備員が装備する端末に情報・指示を与え、さらにはインターネットを通じて業界全体で情報を共有し、整備コストの低減と安全性の向上を目指す、と云う構想である。
図2:(Airbus)2016年6月の英国のファンボロー・エアショーでエアバスが実施したインテル・カメラ(Intel RealSense camera)搭載のドローン(AscTec Falcon 8)によるエアバスA350 XWB型旅客機の検査の様子。写真左上にドローンが写っている。A350を確定31機、オプション25機発注している日本航空では、同機を2019年から導入する予定だが、その整備に“ドローン検査システム”がお目見えするかもしれない。
図3:(Airbus) 試作したドローン・システムの例。作業員が一人で扱える大きさである。
図4:(Airbus)エアフランスの機体を検査する試作ドローン。
エアバス傘下の“テステイア(Testia)”社は、2013年10月にドイツのブレーメン(Bremen, Germany)に非破壊検査(NDT=Non-Destructive Testing)専門の子会社として設立された。同社はドローンだけでなくあらゆるNDT分野の装置開発、訓練、実施を業務としている。
図5:(TESTIA Germany)ブレーメンのテステイア社本社。
図6:(TESTIA Germany) エアバス開発の電気飛行機”E-Fan” の非破壊検査を担当したのはテステイア社。”E-Fan”は全体が複合材製で、構造検査には特殊装置が必要である。”E-Fan”は2015年10月10日に英仏海峡横断に成功した。飛行時間は36分で、100年以上前の1909年7月に同じフランスの“ブレリオ(Bleriot)機”が行なった横断飛行時間と同じだった。
図7:(Airbus) “E-Fan”は2人乗りの電気飛行技術実証機で、翼幅9.5 m、離陸重量550 kg、エンジンは30 kw (40 hp)の電動モーター2基、最大速度は220 km/hr、動力源は主翼の内翼に収めた韓国製のリチウム・ポリマー・バッテリーで出力60 kw、これで1時間弱飛べる。さらに改良型が計画されている。
—以上—
本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。
Aviation Week Jan 19, 2018 “Aircraft Drone Inspection Technology” by Lindsay Bierregaaed
Aviation Week MRO-Network.com Apr 10, 2018 “Airbus Unveils Drone for Inspecting Aircraft in Hangars” by Ann Shay
Intel Newsroom July14, 2016 “Intel and Airbus Demo drone Inspection of Passenger Airliners”
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