令和6年12月、我国周辺での中露軍活動と我国/同盟諸国の対応


2025年1月8日(令和7年) 松尾芳郎

令和6年12月は、我国および周辺で中露両軍は領空・領海の侵犯を含め、その活動を著しく増加している。これに対して我国および同盟諸国は以下に示す様々な軍事演習を実施、反撃姿勢を明確にした。

(Chinese and Russian military violation inside or around Japan’s territorial air and sea spaces are increasing unprecedented ever in December 2024. Japan and allies put various scale military maneuvers, responding such militant violations. Following are the details of major issues.)

防衛省統合幕僚監部、米第7艦隊、台湾国防部などが公表した12月における我が国周辺の中露両軍の軍事活動は以下に示すように17件に達する。特に沖縄本島と宮古島の間、宮古海峡の通過件数が著しく増え、今や中露軍の通常交通路になっている。これに関して我が国メデイアが報じたのはごく一部だけ、ビザなし渡航などで日中友好を囃し立て、中露軍が行う不法行為からは目を逸らす、国防意識の欠如は嘆かわしい。

以下に、「中露軍の主な活動」と「我が国・同盟諸国の対応」を列挙し、そのうちの注目すべき案件については最後に解説する。

中露両軍の主な活動

12月2日:11月29日~12月1日、中国海軍フリゲート1隻、対馬海峡経由東シナ海へ、他の1隻は28日~12月1日に宮古海峡を往復

12月3日:12月3日、露海軍キロ改級潜水艦1隻と救難曳船1隻が太平洋から与那国島-西表島間の海峡を通過東シナ海へ

12月4日:12月4日、中国海軍フリゲート1隻とミサイル駆逐艦2隻が宮古海峡を通過太平洋へ

12月6日:12月5日、中国海軍フリゲート1隻とミサイル駆逐艦2隻が大隈海峡を通過太平洋へ

12月9日:12月7日、中国海軍フリゲート1隻とミサイル駆逐艦1隻が宮古海峡を通り太平洋へ。12月8日には情報収集艦1隻が宮古海峡を通過太平洋へ

12月9日:12月9日、中国海軍Y-9哨戒機1機が東シナ海から宮古海峡を通過、太平洋に進出、往路と同じ経路で東シナ海へ

12月10日:中国無人機1機が東シナ海から与那国島と台湾の間の海峡を通り太平洋に進出、台湾東部海域を旋回した後、南方へ飛行

12月10日:12月9日、中国軍は台湾周辺に7つの「航空保留区」を設定、90隻の艦艇を投入、訓練を実施

12月11日、12月10日~11日、ロシア海軍フリゲート3隻および補給艦1隻が東シナ海から対馬海峡を通り日本海へ

12月11日:12月11日、中国海軍フリゲート1隻が太平洋から宮古海峡を通過、東シナ海へ

12月12日:12月12日、中国海軍小型フリゲート2隻が太平洋から宮古海峡を通り東シナ海へ。またこれとは別にミサイル駆逐艦2隻とフリゲート2隻が宮古海峡を通過東シナ海へ

12月16日:12月14日、露海軍キロ改級潜水艦1隻と救難曳船1隻が東シナ海から対馬海峡を通り日本海へ、(12月3日与那国島-西表島間の海峡を通過東シナ海へ、と同じ艦)

12月16日:12月15日、中国海軍ミサイル駆逐艦1隻およびフリゲート1隻が宮古海峡を通り太平洋へ出て12月19日には往路と同じ経路で東シナ海へ

12月20日:12月19日、中国海軍ミサイル駆逐艦1隻、フリゲート2隻および補給艦1隻が太平洋から大隈海峡を通過東シナ海へ

12月23日:12月22日、中国海軍フリゲート3隻が太平洋から宮古海峡を通過東シナ海へ

12月24日:12月23日、中国海軍情報収集艦1隻が太平洋から宮古海峡を通り東シナ海へ(12月8日宮古海峡を通過大平洋へ進出した艦と同じ)

12月30日:中国海軍海警局艦艇、尖閣諸島接続水域内航行は年間353日に達し年間最多を記録

我国および同盟諸国の対応

12月6日:日米比3カ国海軍は南シナ海で海上共同活動(Maritime Cooperative Activity)を実施

12月6日:12月6日、米海軍ミサイル駆逐艦1隻は南シナ海スプラトリー諸島近くで “航行の自由作戦(Freedom of navigation operation)を実施

12月6日:陸上自衛隊は、米陸軍、オーストラリア陸軍と3軍共同の共同指揮所演習「ヤマサクラ(YS)」を開始

12月6日:防衛省、敵の侵攻を早期・遠方で排除するスタンド・オフ・ミサイルの開発前倒しを決定

12月9日:海自航空団と米海軍第70機動団は相互電子戦攻撃能力を増強するため協定を締結

12月11日:12月10日、海自ミサイル駆逐艦1隻と米海軍ミサイル駆逐艦1隻はグアム島と周辺海域でMRBM(中距離弾道ミサイル)の捕捉・追尾の共同訓練を実施

12月12日:9月24日~11月23日の間、空自高射部隊と陸自高射特化部隊は、米本土で米陸軍高射部隊と共同射撃訓練を実施

12月14日:防衛省/航空自衛隊はF-15J戦闘機の近代化改修プログラムをボーイングに4億5千万ドルで発注契約

12月17日:12月16日、空自戦闘機13機は米空軍B-52爆撃機1機および海空軍戦闘機21機と、日本海・東シナ海・太平洋の空域で防空戦闘訓練を実施

12月17日:海自掃海母艦1隻と掃海艦1隻は1月4日~5月10日の間、米国主催国際海上訓練(IMX/CE25=International Maritime Exercise)に参加、インド大平洋諸国の歴訪を予定

12月3日:12月3日、露海軍キロ改級潜水艦1隻と救難曳船1隻が太平洋から与那国島-西表島間の海峡を通過東シナ海へ

2月16日:12月14日、露海軍キロ改級潜水艦1隻と救難曳船1隻が東シナ海から対馬海峡経由、日本海へ、(12月3日と同じ艦)

ロシア海軍の「キロ改級潜水艦」1隻と「イングル級救難曳船」1隻が12月3日に、沖縄県最南端の与那国島の南50 km の太平洋から与那国島と西表島の間の海峡を抜け東シナ海に向け航行した。その後両艦は北上して2月14日には対馬海峡を通過して日本海に入った。ロシア海軍の潜水艦が与那国島付近で目撃されたのはこれが最初である。

キロ級潜水艦は877型と呼ばれ1980年に就役が始まった。2014年からは改良型の「636.3型」が配備され、現在黒海艦隊で5隻、太平洋艦隊で5隻が運用中。そして6隻目となる「ヤクーツク」が2024年10月11日にサンクトペテルブルクで進水式を挙行、2025年には太平洋艦隊に配備する。(今回姿を見せたのはこれかもしれない)

キロ改級潜水艦(636.3型)は、通常動力型潜水艦で、高い静粛性を持ち、世界で最も静かな潜水艦の一つと言われる。黒海艦隊の配備された同型艦「ロストフ・ナ・ドヌー」は2024年8月3日ウクライナ軍の攻撃で破壊された。

図1:(統合幕僚監部)太平洋艦隊第19潜水艦旅団に配備されている「キロ改級潜水艦」。水中排水量3,950 ton、全長74 m、主機デイーゼル発電機2基、固定ピッチ・7翼ハイスキュード・スクリュー、水中速力25 kts。兵装は533 mm魚雷発射管6基、魚雷、長射程巡航ミサイル「カリブル」など計18本を搭載、また地対空ミサイル8本を搭載する。

図2:(統合幕僚監部)ロシア海軍イングル級救難曳船。

12月10日:中国軍は台湾周辺に7つの「航空保留区」を設定、90隻の艦艇を投入、訓練を実施

12月9日、台湾軍は「中国軍が台湾近くに7つの[航空保留区]を設置し、海軍と海警局艦艇を派遣した。これに対応して台湾軍は緊急対応センターを設置、警戒を強めた」と発表した。

これによると、中国海軍・海警局は台湾周辺、日本沖縄県南端の宮古・石垣・与那国島周辺、東シナ海、南シナ海に艦艇90隻を展開して台湾に対する圧力を強めた。これは台湾の頼清徳総統がハワイ、グアム、太平洋島嶼国3ヶ国を歴訪した件に対する抗議行動と見られる。

7つの[航空保留区]は台湾海峡に面する福建省と浙江省の東の海上に設定され、11日まで続いた。「航空保留区」とは、管制官の許可があれば外国機も通過可能だが、軍事など特定利用が優先される空域をいう。

台湾軍は「今回の中国軍の展開・配備の規模は、2024年に実施した「連合利剣2024A」および同「2024B」の両演習よりも大きい、彼等は日本、台湾、フィリピン、ボルネオを含む第1列島線に囲まれた区域全体の支配を目論んでいる」と指摘している。

これには、統合幕僚監部が発表した“中国軍の行動”次の4件が符合する;―

  • 12月9日:12月7日、中国海軍フリゲート1隻とミサイル駆逐艦1隻が宮古海峡を通り太平洋へ。12月8日には情報収集艦1隻が宮古海峡を通過太平洋へ

図3:(統合幕僚監部ルーヤン(旅洋)III級は「昆明級・052D型」駆逐艦で中国版イージス艦。満載排水量7,500 ton、全長157 m、VLSは前後に32セルのセットをそれぞれ配備、各級合わせて20隻が配備中で5隻が建造中。

図4:(統合幕僚監部)ジャンカイ(江凱)II級フリゲート(054)は、満載排水量4,000 ton、全長134 m32セルVLSを装備、対空・対潜ミサイルを搭載する。同型は40隻ほどが就役。

図5:(統合幕僚監部)「ドンデイアオ(東調)級情報収集艦 (815A)」は電子偵察艦と呼ばれ、9隻が就役中。満載排水量6,000 ton、全長130 m。中央に大型追跡レーダー/探知距離1,000 km、前部艦橋には小型レーダー、後部環境にはHF波からX波までの通信電波検出アンテナがある。

  • 12月9日:12月9日、中国海軍Y-9哨戒機1機が東シナ海から宮古海峡を通過、太平洋に進出、往路と同じ経路で東シナ海へ

図6:(統合幕僚監部)尾部に潜水艦探知用のMADブームを装備したモデル。

  • 12月10日:中国無人機1機が東シナ海から与那国島と台湾の間の海峡を通り太平洋に進出、台湾東部海域を旋回した後、南方へ飛行

図7:(統合幕僚監部)偵察攻撃用無人機だが機種不明。

  • 12月11日:12月11日、中国海軍フリゲート1隻が太平洋から宮古海峡を通過、東シナ海へ

図8:(統合幕僚監部)ジャンカイII級(江凱II級)フリゲートは2008年就役開始で37隻が配備中。満載排水量4,000 ton、長さ134 m、最大速力27 kts、32セルVLSを装備、対空ミサイルHQ-16および対潜ミサイルCY-3を搭載する。

12月31日:中国海軍海警局艦艇、尖閣諸島接続水域内航行は年間353日に達し年間最多を記録

12月31日、海上保安庁巡視船は沖縄県尖閣諸島周辺の接続水域で中国海軍海警局艦4隻が航行するのを確認した。海警局艦が尖閣周辺の領海・接続水域に現れるのはこれで43日連続。年間で355日となりこれまでの最多記録を更新した。来なかったのは台風接近で航行不能状態の期間だけである。

第11管区海上保安部(那覇)によると、4隻とも砲搭載の大型艦で「海保巡視船に対し領海に侵入しないよう」と警告した(なし崩し的に領有を主張している。

中国が尖閣周辺で示威行動を強めるのは、海底資源への関心だけでなく、台湾に対するの同じように領有権を主張するため既成事実化を進めているからである。海警局は2023年1月から公式サイト「微博」に「日本船が我が釣魚島の領海内を航行した」と繰り返し報ずるようになった。隙を見せれば占領する意図を隠さない。

海上保安庁は、石垣島に1,000 ton級の巡視船10隻と沖縄本島にヘリ搭載型の大型巡視船2隻を配備、尖閣諸島の警備に当たっている。海上保安庁の推計によると、中国海警局の全勢力は1,000 ton級が159隻、海保の75隻の2倍以上に達する。昨年6月には76 mm砲を搭載する1万トン級の[海警2901]が尖閣周辺に姿を現した。

海保は、令和4年閣議決定の「海上保安能力強化に関する方針」に基づき、無人機や巡視船の増強を進めている。その一つとして昨年8月には3万トン級の大型巡視船建造計画を発表した。

図9:(外務省)尖閣諸島の拡大図。

図10:(海上保安庁-管轄海域情報)領海・排他的経済水域等の模式図。

「領海」とは領土海岸線の低潮線から「12海里=22 km」以内、「接続水域」とは同「24海里=44.4 km」以内、「排他的経済水域(EEZ)」とは同「200海里=370 km」以内を言う。200海里以上離れた場所は「公海」。

図11:(笹川記念財団)尖閣諸島の位置を示す地図。台湾、沖縄本島を巡る戦略上の要衝であることが分かる。

図12:(海上保安庁)中国海警局の警備艦と並走する我が海保巡視船。年間を通じほぼ連日このような状況が繰り返されている。

12月6日:米海軍ミサイル駆逐艦1隻は南シナ海スプラトリー諸島近くで “航行の自由作戦(Freedom of navigation operation)を実施

12月6日米第7艦隊ミサイル駆逐艦「プレブル(USS Preble / DDG-88)」は南シナ海スプラトリー諸島(南沙諸島)海域で “航行の自由作戦 (FONOP= freedom of navigation operation)”を実施した。FONOPの実施箇所は公表していないが、下記「南沙諸島」に中国軍が開設した航空基地近傍と思われる。

図13:(防衛白書-南シナ海を巡る問題)中国軍は、南沙諸島・スプラトリー諸島のスピ礁、ミスチーフ礁、ファイアリークロス礁にはSu-27/30戦闘機、H-6爆撃機が離発着する長大な滑走路が設置済み。その他の諸島にはレーダー基地、船舶接岸設備、などが整備されている。

12月6日:陸上自衛隊は、米陸軍、オーストラリア陸軍と3軍共同の共同指揮所演習「ヤマサクラ(YS)」を開始

「ヤマサクラ (YS)」演習は「日米共同方面対指揮所演習」で、陸上自衛隊とアメリカ陸軍、同海兵隊で行う指揮所演習である。1982年以来、最近では年2回のペースで行われている。2023年にはオーストラリアとフィリピンが正式参加している。

令和6年度(2024年)は「YS-87」演習として、陸自、米陸軍、同海兵隊、オーストラリア陸軍が参して、12月2日-14日の間熊本県健軍駐屯地と東京都朝霞駐屯地で行われた。演習には3ヶ国から7,000名が参加した。内訳は;-

  • 陸上自衛隊から陸上総隊、東部方面隊、西部方面隊等役5,500名
  • 米軍から陸軍第1軍団、同第3海兵遠征軍、同第7歩兵師団等約1,350名
  • オーストラリア陸軍から第1師団、約250名

離島防衛を想定した水陸両用作戦が行われ、実戦に近い内容で実施された。

2025年3月発足予定の自衛隊統合作戦司令部や敵の射程外から攻撃する「スタンド・オフ・ミサイル(12式地対艦ミサイル/能力向上型)」の運用も組み込んでいる。

山根寿一陸上総隊司令官は「日米号の連携の強さを示す重要な訓練」と強調し、米太平洋陸軍パウル副司令官は「中国、北朝鮮。ロシアの脅威に対抗するため3ヶ国が団結して行動することが重要」と述べた。

図14:(朝日新聞・佐藤瑞季)2024年12月6日、ヤマサクラ87訓練開始式に臨む山根寿一陸上総隊司令官(中央)と

12月6日:防衛省、敵の侵攻を早期・遠方で排除するスタンド・オフ・ミサイルの開発前倒しを決定

防衛省は12月6日「我が国へ侵攻する敵を、敵の攻撃の及ばない遠方から迎撃・排除する「スタンド・オフ・ミサイル(stand-off-missile)」の開発・配備を従来の計画から前倒しすること決定した」と発表した。

2025年度(令和7年度)概算要求の概要(2024-8-30発表)によると「スタンド・オフ防衛能力」に9,700億円を投入し、以下の項目を促進する;―

  • RTX レイセオン(Raytheon)製「RGM-109トマホーク(Tomahawk) Block IV/V」の取得を2026年から2025年度に前倒しし、トマホーク運用のための海自要員の訓練を2024年3月~10月に実施。

Block IV/Vは射程1,600 km~3,000 km、米国政府は日本に「トマホーク巡航ミサイル400発(Bk IVを200発、Bk Vを200発)と関連装備一式を23億5000万ドル(3,500億円)で売却すると発表した(2023-11-17)。

「TokyoExpress 2022-11-21 ”反撃力のシンボルBGM-109トマホーク巡航ミサイル“に述べてあるので参照されたい。

  • ロッキード・マーチン(Lockheed Martin)製「AGM-158B JASSM (Joint Air-to-Surface Standoff Missile)」の取得を促進、F-15戦闘機改修型に搭載する。

AGM-158Bは射程1,000 km、2021年生産開始の新型で、米政府は日本に対し50発と訓練機材・諸経費込みで1億400万ドルで売却すると決定(2023-8-38)。

発射母体のF-15J戦闘機の改修は、近代化改修を終えた102機のうち単座型68機に対し行われ、レーダーの更新、JASSMの搭載、電子戦能力の向上、ミッション・コンピュータの更新等で6,500億円のコストを見込む。最初の改修ロットがボーイングに発注、契約を締結(Defense Industry Daily 2024-12-14)。

図15:(防衛省)F-15J近代化改修「J-MSIP」のあらまし。

「TokyoExpress 2014-02-27 “航空自衛隊、装備近代化へ大きく前進”にF-15Jnokinndaikakaishuu,F-15MJへ”および”F-2の近代化改修“が述べてある。また「TokyoExpress 2020-08-06改訂”空自F-15Jの近代化・F-15JSI改修で米側と合意/改訂版“に記述したので参照されたい。

  • ノルウエイ・コングスバーグ(Kongsberg Defense & Aerospace)製「JSM (Joint Strike Missile)」空対艦ミサイルの取得を促進(現契約では2026年度取得予定)、同社は2024年6月に新工場をオープンしたので納入が早まる予定。JSMはF-35A戦闘機およびF-35C戦闘機のウエポンベイに搭載できる唯一の巡航ミサイル、F-35Bは形が異なるので搭載できない。
  • 地上発射型の島嶼防衛用高速滑空弾は、2023年初頭に量産着手、2024年4月から事前発射試験を開始、2026年に配備予定。併せて「能力向上型」の開発を2023年に開始。
  • 12式地対艦誘導弾・能力向上型(地発型)の配備を1年前倒して2025年度から開始する。量産型の発射試験は2024年10~11月にかけて新島の航空装備研究所で5回実施された。新島は伊豆7島にあり、東京から南へ150 km。能力向上型の射程は1,000 km以上2,000 kmに達すると言われる。

12式地対艦誘導弾・能力向上型については「TokyoExpress 2022-08-15 ”12式地対艦誘導弾(能力向上型)開発の現況“」に述べてあるので参照されたい。

図16:(防衛省)防衛装備庁・航空装備研究所の新島ミサイル試射場で行った12式地対艦ミサイルの発射試験。

図17:(防衛省令和7年度概算要求の概要)各種スタンド・オフ・ミサイルで敵の脅威圏外から反撃、対処する方策。F-15改/JASSM、護衛艦/トマホーク、島嶼防衛用高速滑空弾、F-35A/JSM、12式地対艦誘導弾能力向上型、等が図示されている。

図18:(防衛省“スタンド・オフ防衛能力に関する事業の進捗状況について”/令和6年12月6日)12式地対艦誘導弾能力向上型の開発計画を示す新しい工程表。

終わりに

米国の新政権発足が近づき対中貿易制裁が現実味を帯びてきた。習近平主席は国内経済の不振問題を抱え、対米輸出に高関税を課せられると経済停滞が一層ひどくなる。これを恐れ国民の不満を外に向けるべく2027年と言われる台湾侵攻への動きが活発化している。それが沖縄本島―宮古島間の宮古海峡通過の増加となって現れている。これに対し、防衛省は沖縄に陸自第15旅団を配備し侵攻に備え、現在では与那国島、宮古島、石垣島に駐屯地を整備、12式地対艦ミサイルを配備を始めている。同旅団は令和8年度(2026年)には師団に格上げ強化される予定。遅れを取らないようしっかりやって貰いたい。

―以上―