令和7年6月、我国周辺での中露軍活動と我国/同盟諸国の対応


                            2025年7月11日(令和7年) 松尾芳郎

令和7年6月、我が国および台湾周辺における中露両軍の活動は一段と活発化している。中国軍は、5月下旬から1か月間空母2隻を含む打撃艦隊を我国南方海域に展開威圧行動を行った。ロシア軍については、中谷防衛相が記者会見で、我国周辺で活発な軍事活動を継続し最新の装備を配備しつつある、と述べ警戒を呼びかけた。これに対し我国および同盟諸国は、警戒を緩めることなく抑止力強化に努めている。

China’s PLA and Russian Forces military drill around Japan and Taiwan are stepping up high in June 2025. Two Chinese Naval carrier strike groups extended sailing to western Pacific south of Japan, threatening Japan and allies. Defense Minister G. Nakatani pointed, Russian’s military maneuver are also stretch on Far East with modern armaments with vessels and aircraft,. Japan and allies are putting defensive move against both nations. Following are the details of major issues.)

図1:(統合幕僚監部)5月26日前後に沖縄県宮古島南の西太平洋上の海域で訓練を繰り返す中国海軍空母「遼寧(16)」。満載排水量59,000 ton、全長304.5 m、J-15艦上戦闘機など最大36機を搭載する。

防衛省各幕僚監部、米第7艦隊などが発表した6月における我国周辺の中露両軍の軍事活動および我国と同盟諸国軍の対応は以下の通り。発表日に発表機関の記載がないのは全て「統合幕僚監部」発表の案件である。

中露軍等の活動

6月2日発表:中国無人機、東シナ海から与那国島・台湾の海峡から太平洋に進出、台湾東方で旋回を繰り返し、反転し往路と同じ経路で東シナ海へ。

6月2日発表:中国空母「遼寧(16)」を含む艦隊が、5月25日から東シナ海・宮古海峡を通り、太平洋に進出、南下してフィリピン東方海域で演習。

6月5日発表:中国海軍レンハイ級ミサイル駆逐艦(102)とジャンカイII級フリゲート(550)が6月4日に東シナ海から大隈海峡を抜け太平洋に進出、別途ジャンカイII級フリゲート(538)およびフチ級補給艦(903)の2隻が東シナ海から宮古海峡を抜け太平洋へ。

図2:(統合幕僚監部)レンハイ級(南昌級/055型)ミサイル駆逐艦「拉薩(102) 2021年3月就役。満載排水量13,000 ton、最大速力32 kts、全長180 mの大型艦、70口径130 mm単装砲、ミサイル垂直発射筒(VLS)は64セル+48セル、その他の装備を含め前級「昆明(052D)」より大きく性能が向上した。中国最新のイージス艦で同型は8隻就役中、4隻追加する予定。

図3:(統合幕僚監部)ジャンカイ(江凱) II級フリゲート(054)は、満載排水量4,000 ton、全長134 m32セルVLSに対空・対潜ミサイルを搭載する。同型は40隻ほどが就役。写真は「灘坊/Weifang (550)20136月就役。

図4:(統合幕僚監部)写真は「煙台/Yantai (538)」2011年7月就役。

図:(統合幕僚監部)フチ(福池)級補給艦「可可西里湖 (Kekesilihu) 903」は[903A]型で、2019年7月の就役。満載排水量23,000 ton、全長178.5 m、速力20 kts、補給用門型ポストを2基備え、前が燃料用、後ろがドライカーゴ用となっている。後部にはヘリコプター甲板/格納庫がある。同型艦は9隻。

図5:(統合幕僚監部)中国軍艦艇4隻が相次いで6月4~6日に東シナ海から太平洋に進出した。

6月9日発表:ロシア海軍ビシニア級情報収集艦(208)が6月6日に島根県隠岐島北西の接続水域に入り北東に向け航行、礼文島の接続水域を経て宗谷海峡を東進、オホーツク海へ。

図6:(統合幕僚監部)ロシア名「864型2等中型偵察艦」、満載排水量3,400 ton、長さ94 m、1986-1987年にポーランドで建造、同型艦は7隻。写真は「クリルイ(SSV 208)」。.

6月9日発表:中国海軍空母山東(17)、レンハイ級ミサイル駆逐艦(107)、ジャンカイII級フリゲート2隻(571)(572)、およびフユ級高速戦闘支援艦(905)の計5隻が宮古島南東550 kmの太平洋海域を航行。

6月10日発表:中国海軍ドンデアオ級情報収集艦(794)が6月10日早朝東シナ海から大隈海峡を通過、太平洋へ。

6月11日防衛省発表:6月7日と同8日、太平洋上で中国空母「山東(17)」の監視をしていた海自哨戒機「P-3C」に対し「山東」艦載戦闘機「J-15」が接近、7日には水平距離45 m、8日には前方900 mを横切った。いずれも衝突の危険があり、外交ルート経由で中国側に抗議。

図7:(防衛省)空母「山東(17)」に監視に当っていた海自第5航空群所属(沖縄基地)の「P-3C」哨戒機。海自では2024年3月現在32機を配備中。川崎重工がライセンス生産で98機を製造したが順次「P-1」哨戒機へ更新が進んでいる。

図8:(防衛省)「P-3C」哨戒機の左舷45 mに接近した「J-15」戦闘機。「P-3C」の翼幅は30.4 m、「J-15」の翼幅は15 m

図9:(防衛省)「P-3C」哨戒機の前方900 mを横切った山東の「J-15」。「J-15」は2009年初飛行、2013年運用開始、空母艦載戦闘機として瀋陽飛機工業で100機ほど製造された。2001年ウクライナから入手したSu-33を元に作った「J-11B」を改良した機体。アビオニクスは4重デジタル・フライ・バイ・ワイヤを装備、エンジンはロシア製AL-31/WS-10ターボファン推力12.5 tonを2基、速度マッハ2.4、航続距離3,500 km、翼下面のハードポイント12箇所に、空対空ミサイル(PL-12等)、対艦ミサイル(Kh-31)を取付ける。

6月12日発表:ロシア海軍ステレグシチー級フリゲート2隻(333)と(335)、タランタルIII級ミサイル護衛哨戒艦(971)およびドウブナ級補給艦の計5隻の艦隊が12日早朝深夜に日本海から宗谷海峡を通過オホーツク海へ。

6月13日発表:ロシア海軍ステレグシチー級フリゲート2隻(339)と(343)およびドウブナ級補給艦の3隻が太平洋から与那国島・西表島間の海峡を抜け東シナ海へ。

6月16日発表:6月14日午後、ロシア海軍ウダロイI級駆逐艦(564)とウダロイIII級駆逐艦(543)が、日本海から宗谷海峡経由オホーツク海へ。

6月16日発表:ロシア海軍ステレグシチー級フリゲート2隻(339)と(343)およびドウブナ級補給艦が東シナ海から対馬海峡西側を通り日本海へ。(6月13日に与那国島・西表島間を通過東シナ海に入ったものと同じ)。

図10:(統合幕僚監部)ステレグシチー級フリゲートは[20380型警備艦]、改良型は[20381型]、沿海用汎用警備艦で2007年から配備が始まった。満載排水量2,200 ton、長さ105 m、速力27 kts、ステルス形状で先進閉囲型マストを装備する。電子装備、武器システムも近代化され、対艦兵器は[3M24ウラン]対艦ミサイル4連装発射筒2基を搭載、艦尾甲板にはKa-27PL哨戒ヘリ1機を搭載する。(339)は「アルダー・ツデンジャポフ」で2020年12月の就役。太平洋艦隊には次図 (343)を含み5隻が配備されている。

図11:(統合幕僚監部)( 343)は「レーズキイ」で20239月就役の最新艦。

図12:(統合幕僚監部)ドウブナ級補給艦は満載排水量11,500 ton、長さ130 m、燃料・食料など8,000 tonを積載、洋上補給が可能。4隻建造され2隻(イルクートおよびぺチェンガ)が太平洋艦隊に所属。

6月17日発表:6月2日「遼寧」および6月9日「山東」空母打撃群のその後の動向。

6月20日発表:「遼寧」および「山東」空母打撃群のその後の動向。

6月23日発表:中国海軍空母打撃群、「遼寧(16)」および「山東(17)」艦隊の1ヶ月に及ぶ太平洋での訓練は、「遼寧」艦隊が6月20日に宮古海峡を通過東シナ海へ戻り、「山東」艦隊は6月22日に台湾・フィリピン間のバシー海峡を通過し南シナ海海南島の母港に戻ったことで終了。

遼寧艦隊は硫黄島のはるか東方1,100 kmにある南鳥島接続水域に入り、また山東艦隊は硫黄島の南東720 kmにある沖ノ鳥島の接続水域に侵入、二手に分かれて戦闘演習を行った。これは中国海軍が、日本・グアム・インドネシアを結ぶ線(中国が言う第2列島線)をまたぐ初めての演習である。これで日本、アメリカに威圧を加えようとする試みだ。

これに対し海自は横須賀および呉基地から護衛艦むらさめ、いかずち、第5航空群所属のP-3C哨戒機を派遣、中国艦隊の動きを監視、数日置きに動向を発信し続けた。

図13:(Reuters)「遼寧(16)」は満載排水量59,500 ton、長さ304.5 m、飛行甲板最大幅75.5 m、速力30 kts。離着艦の方法は「STOBAR (Short Takeoff But Arrested Recovery)」、つまり、発艦は甲板前部の傾斜角14度のスキージャンプから、着艦はアングルド・デッキ上に12 m間隔で配置したアレステイング・ワイヤ4本にフックを掛け停止する方法。搭載機数はJ-15戦闘機24機とヘリコプター10機とされる。

図14:(統合幕僚監部)「山東(17)」は「遼寧(16)」と似ておりいずれもロシアの空母「クズネツオフ」を基本にしている、「遼寧」と比較して、艦橋/アイランド部分を10 mほど短く小型化、満載排水量67,000 yonに大型化、長さ315.5 mに延長、搭載機数はJ-15戦闘機36機などに増強。その他はほぼ同じ。

図15:(統合幕僚監部)「赤」が「遼寧」艦隊の動き、「薄青」および「青」が「山東」艦隊の動きを示す。中国海軍は2つの空母艦隊が太平洋上で、対抗演習を実施したと発表した。偵察、早期警戒、攻撃に対する防御、対艦攻撃、洋上防空、および艦載機の昼夜を分たぬ飛行訓練で技量向上した、と述べた。2つの空母艦隊が合同演習したのは今回が初めて、中国軍の技量が想想像以上に上達しているのが分かる。

図16:(時事通信/中国軍報道)20245月上海造船所が第1回の試験航海に出る空母「福建(18)」、2025年中に就役の予定。満載排水量80,000 ton、長さ317 m、艦載機5080機、速力30 kts以上、電磁カタパルト3基を装備する。

6月23日発表:中国海軍ジャンカイII級フリゲート2隻(538)と(550)、レンハイ級ミサイル駆逐艦(102)およびフチ級補給艦(903)の4隻が6月22日午後、太平洋から宮古海峡を抜け東シナ海へ。(6月4日と5日に大隈海峡、宮古海峡を通過、太平洋に出たものと同じ)。

6月26日発表:ロシア海軍ウダロイIII級駆逐艦(543)が宗谷海峡をオホーツク海から日本海に向け航行(6月14日に同海峡を東進した艦と同じ)。同日夜間タランタルIII級ミサイル護衛哨戒艇(971)、26日早朝ステレグシチー級フリゲート2隻(333)、(335)およびウダロイI級駆逐艦(564)が宗谷海峡から日本海へ(6月12日と14日に宗谷海峡を東進した艦と同じ)。

6月26日発表:中国軍無人機1機が東シナ海から与那国島と台湾の間を通過、太平洋上で反転、往路と同じ経路で東シナ海へ、また別の1機が台湾東海岸沖から与那国島・台湾の間を通過、東シナ海へ。

6月30日発表:中国海軍ドンデイアオ級情報収集艦(798)が6月28日夕刻、東シナ海から宮古海峡経由太平洋へ。

6月30日、Newsweek/タス通信記事:ロシア軍ミサイル巡洋艦ワリヤーグは日本海で対艦巡航ミサイルを発射、複数目標を攻撃、破壊に成功した。

これは「6月24日に陸自第1地対艦ミサイル連隊が北海道南岸の静内射撃場で「88式地対艦ミサイル」の実弾射撃演習を行ったことに対する報復だ」と述べている。

図17:( Blue force Hatena Blog) 2011529日、ロシア太平洋艦隊旗艦スラバ級ミサイル巡洋艦「ワリヤーグ(Bapar)/011」他2隻の舞鶴寄港時の写真。「ワリヤーグ」は、満載排水量11,500 ton、長さ192 m、最大速力32 kts、両舷にP1000対艦ミサイル/射程1000 km (SSM)連装発射筒を4基ずつ備える。同級は3隻、しかし2022414日ウクライナ軍攻撃で「モスクワ」が撃沈されたので現在は2隻。

6月30日発表:同日午後中国軍Y-9哨戒機1機が東シナ海から宮古海峡を通過太平洋上で旋回、再び東シナ海に戻る。これとは別にBZK-005偵察型無人機1機が東シナ海から宮古海峡経由太平洋へ、反転して戻る。

我が国、同盟諸国の動き

6月3日海上幕僚監部発表:6月1日に海自ミサイル駆逐艦(イージス艦)「はぐろ/DDG-180」はオーストラリア海軍ミサイル駆逐艦「シドニー/HMAS Sydney DDG 42」と、東シナ海で共同訓練「トライデント25/Trident 25」を実施。「シドニー」は「ホバート(Hobart)」 級ミサイル駆逐艦の3番艦で、スペインの造船会社「ナバンテイア(Navantia)」により2012-2020年に建造された。Mk.41 VLS x 48セルを装備するなど近代的ミサイル駆逐艦である。

図18:(海上幕僚監部)61日東シナ海で共同訓練をする海自ミサイル駆逐艦「はぐろ/DDG 180」(手前)満載排水量10,250 ton、とオーストラリア海軍ミサイル駆逐艦「シドニー/HMAS Sydney DDG 42(奥)満載排水量7,000 ton」、

6月3日海上幕僚監部発表:6月10日〜22日、海自掃海隊は硫黄島周辺海域で米海軍第5水中処分隊と実機雷処分訓練を実施、参加した海自艦艇は掃海母艦2隻、掃海艦1隻、掃海艇4隻。

6月8日日経発表;8日、陸自は東富士演習場で「富士総合火力演習(総火演)を開催。ここで反撃能力の主力となる「12式地対艦ミサイル能力向上型/12 SSM」(射程1,000 km以上)を初めて一般に公開した。本稿19−20ページ掲載の「88式地対艦ミサイル」の発射機の外観が丸型キャニスターであるのに対し12式では角形キャニスターに変わっている。

「12式地対艦ミサイル」は、陸自西部方面隊隷下の熊本県建軍駐屯地に第5地対艦ミサイル連隊、沖縄県勝蓮駐屯地に第7地対艦ミサイル連隊、そして大分県湯布院駐屯地に第8地対艦ミサイル連隊にそれぞれ配備されている。

図19:(日経.com)12式地対艦ミサイル能力向上型」は三菱重工製の長射程ミサイルで射程1000 km以上。202410-11月に5回試験しいずれも成功、2025年度(令和7)予算で、地発型2セットと艦発型の取得費、空発型搭載のため[F-2]戦闘機8機分の改修費が計上された。2025年度中に湯布院駐屯地「第8地対艦ミサイル連隊」から配備が始まる。

19A:熊本県建軍駐屯地「第5地対艦ミサイル連隊」に配備する「12式地対艦ミサイル能力向上型」の射程範囲を示す図。

6月9日海上幕僚監部発表:6月8日、海自補給艦「ときわ/AOE 423」/12,000 tonは日本南方の太平洋上で、アメリカ沿岸警備隊カッター「ストラットン」(USCGC Stratton/WMSL-752)/4,500 tonに洋上給油訓練を実施。

図20:(海上幕僚監部)右アメリカ沿岸警備隊カッター「ストラットン」(USCGC Stratton/WMSL-752)/4,500 tonに給油する左海自補給艦「ときわ/AOE 423/12,000 ton

6月11日海上幕僚監部発表:6月10日海自舞鶴基地所属の護衛艦「せとぎり/DD-156」5,000 ton、ミサイル艇「はやぶさ/PG-824」240 tonは、海保巡視船「ほたか/PS-202」220 ton、「だいせつ/PL-62」1,300 tonおよび中型航空機「MA738」と若狭湾海空域で海自・海保連携強化のための共同訓練を実施。

6月11日海上幕僚監部発表:海自護衛艦「はるさめ/DD-102」6,100 tonは6月8日〜10日マレーシアのクアンタンに寄航、その後南シナ海でマレーシア海軍哨戒艦「トレンガヌ(Terengganue / F174)」と共同訓練を実施。

哨戒艦「トレンガヌ」はドイツのブローム・ウント・フォス(Blohm & Voss)社製MEKO型フリゲートの最も小さい型、「MEKO A-100」で、マレーシア海軍では同型6隻を運用している。基準排水量1,659 ton、長さ90 m、76 mm口径レオナルド製速射砲、30 mmマウザー機関砲を備え、英国製哨戒ヘリ1機を搭載する。

図21:(海上幕僚監部発表)海自護衛艦「はるさめ/DD-102」6,100 ton(手前)とマレーシア海軍哨戒艦「トレンガヌ」。

6月12日海上幕僚監部発表:6月19日、三菱重工マリタイム・システムズ玉野工場で建造した海自フリゲート「FFM-8/ゆうべつ」の引渡式、自衛艦旗授与式を実施。

6月12日共同通信報道:海自護衛艦「たかなみ/DD 110」6,300 tonは南シナ海でフィリピン海軍と共同訓練をするため、東シナ海から台湾海峡を10時間かけて通過し南シナ海へ。海自艦艇の台湾海峡通過は2024年9月、2025年2月に続きこれが3回目となる。6月7,8両日の中国戦闘機の海自P-3C哨戒機に対する異常接近事件に対抗する意味で実施。

図22:(海上自衛隊)「たかなみ/DD 110」満載排水量6,300 ton」、長さ151 m、速力30 kts127 mm速射砲、20 mm CIWS 2基、対艦ミサイル8基、垂直ミサイル発射装置VLS 32セル、SH-60K哨戒ヘリ最大2機搭載。同型艦は5隻。以後は「あきずき」型になる。

6月15日発表:台湾海峡を通過南シナ海に入った海自護衛艦「たかなみ/DD 110」は、6月14日にフィリピン海軍フリゲート「ミゲル・マルバー(Miguel Malver) / FFG 06」3,200 tonと[海上共同活動(Maritime Cooperative Activity)]と呼ぶ共同訓練を実施。「ミゲル・マルバー」は韓国蔚山の現代重工製。訓練海域はルソン島西岸沖のスカボロー礁に近いフィリピンEEZ内で実施された、中国軍艦艇2隻が接近してきた。

図23:(統合幕僚監部)614日南シナ海ルソン島西方の南シナ海、スカボロー礁近海で、台湾海峡を通過した護衛艦「たかなみ/DD 110」満載排水量6,300 ton」(奥)はフィリピン海軍フリゲート「ミゲル・マルバー(Miguel Malver) / FFG 063,200 ton」と共同訓練を行った。

6月16日 海上幕僚監部発表:海自令和7年度インド太平洋方面派遣(IPD25)部隊は、6月9日〜13日の間ソロモン諸島海上警察とソロモン諸島ガダルカナル島にある首都ホニアラ(Honiara)近海で、立入検査訓練、舟艇整備訓練を実施。

6月16日 陸上幕僚監部発表:陸自第1空挺団は、6月23~25日、習志野演習場及び米空軍横田基地で米空軍機からの降下訓練を実施。

6月18日 航空幕僚監部発表:6月18日、空自第8航空団(築城基地)F-2戦闘機2機と西部航空管制警戒団レーダーは、米空軍F-16戦闘機4機および韓国空軍F-15K戦闘機2機と九州西方東シナ海の空域で共同戦術訓練を実施。

6月19日 海上幕僚監部発表:6月18日海自掃海艇「あおしま/MSC 689」590 tonはチリ海軍練習帆船「エスメラルダ(Esmeralda, BE-43」と大阪湾・紀伊水道海域で友好親善のため共同訓練を実施。

図24:(海上幕僚監部)「エスメラルダ(Esmeralda, BE-43」はスペイン海軍練習艦としてスペインのカデイスで起工されたが1954年6月に完成すると同時にチリ海軍に引渡しされた。排水量3,754 ton、長さ113 m、檣長(マストの高さ)48.5 m、の大型帆船である。チリ海軍の練習艦として使われ同時に「浮かぶ大使館」として世界の300以上の都市に寄港している。我国への寄港は、1975年沖縄国際海洋博覧会、1983年大阪世界帆船パレード、2002年海上自衛隊50周年記念観艦式、令和の即位礼正殿の儀、などがある。

6月24日 陸上自衛隊発表:本件は「令和7年5月、我が国周辺での中露軍活動と我が国/同盟諸国の対応」12ページに「5月13日陸幕監部発表」として紹介済み、6月24日、北海道新日高町静内射撃場で88式地対艦ミサイル1発の実弾射撃訓練を行い、沖合の標的船に命中した。29日にもう1発の射撃を予定していたが、24日で十分な成果が得られたため中止になった。発射は、北千歳駐屯地の「第1特科団・第1地対艦ミサイル連隊」が担当した。「静内射撃場」は北海道苫小牧市と襟裳岬の中間にあり太平洋に面している。

「88式地対艦ミサイル」は航空自衛隊の「80式空対艦ミサイル/ASM-1」を地発型に改良したモデル、三菱重工が製造し2000年までに102発が調達された。射程100 kmでロシア軍の北海道上陸を阻止するため北海道内陸部を主に北日本に集中配備されている。すなわち;―

北千歳/第1地対艦ミサイル連隊、美唄/第2地対艦ミサイル連隊、上富良野/第3地対艦ミサイル連隊、八戸/第4地対艦ミサイル連隊。

各ミサイル連隊は、「6連装発射機」16輌を中心に、「指揮統制装置」、「捜索・標定レーダー装置」、「中継装置」、「予備ミサイル装填装置」などいずれもトラック車載型で構成される。

備蓄102発とは、1個連隊の一斉射撃で96発消費するので無いに等しい。

図25:(陸上自衛隊)北海道静内射撃場から発射される「88式地対艦誘導弾」。発射機は74式特大型トラックに6連装の円筒型発射筒を搭載している。発射時は大きく仰角を取り、ターボジェットで上昇、ロケットエンジンで飛翔する。誘導は目標近くまで慣性誘導で低空飛行、終末は自機のレーダーで目標を捉え着弾する。

図26:(J Defense News 鈴崎利治)北千歳駐屯地記念行事で公開された「88式地対艦ミサイル」6連装発射機。1個連隊にこれが16輛配備されている。

6月26日 Naval Today発表:6月24日、米国航空宇宙防衛企業RTXの事業部門「レイセオン(Raytheon)」は、三菱電機(MELCOM)と艦艇防空用ミサイル「ESSM Block 2 (Evolved Sea Sparrow Missile Block 2)」(発展型シー・スパロー・Block 2)のライセンス生産契約を締結した、と発表した。総額は2億5000万ドル(約400億円)。

これにより三菱電機は、レイセオンからESSMに関するミサイル・キット、部品、技術支援を受け、国産化することになる。

ESSMは、海自艦艇だけでなくNATO海軍艦艇に使われてきたRIM-7シー・スパロー(Sea Sparrow)ミサイルの後継機である。ESSM Block2は中短距離射程の海上発射型ミサイルで機動性に優れ精度が向上している。発射艦からのレーダー誘導も可能だが主としてミサイル本体のレーダー「アクテイブ・レーダー・ホーミング(active radar homing)」で目標を捉え着弾する。これで敵が発射する超音速艦対艦ミサイルや対艦巡航ミサイルに対処する。

RIM-7では、発射した艦からの持続的なレーダー誘導が必要だった。

海自では「ひゅうが」ヘリ空母以降の艦艇「あきずき」型護衛艦などに採用済みで「むらさめ」型「たかなみ」型も改修して対応可能となった。イージス艦は射程の長いStandard Missileが搭載されている。

図27:(RTX)ESSMはレイセオンが開発した艦対空ミサイル。前部の直径は8 inch (20 cm)、後部は10 inch (25 cm)になりMk 134固体燃料ロケットを内蔵している。長さは3.8 m、重量は300 kg、射程は30~50 km、速度はマッハ2.5~3。多種の発射装置に対応していおり、Mk.41 VLSでは1セルあたり2〜4発収納できる。

6月30日 U.S. Navy 7th Fleet/U.S. Coast Guard Pacific Area Public Affaires発表:米第7艦隊第15駆逐艦隊(DESTRON15)所属のアメリカ沿岸警備隊カッター「ストラットン(Stratton)/WMSL 752」と第十管区海上保安本部所属の巡視船「あさなぎ(PLH 43)」、およびフィリピン沿岸警備隊BRP「テレサ・マグバヌア(Teresa Magbanua/MRRV 9701)」の3隻による共同探索救難訓練は、米軍の

スキャン・イーグル(ScanEagle)ドローンおよび海保のヘリコプターも参加して、鹿児島湾で行われてきた。6月20日に終了。

図28:(海上保安庁)6月20日鹿児島湾で行われた日米比3カ国沿岸警備隊艦艇による共同探索救難訓練。左から順に米沿岸警備隊カッター「ストラットン(Stratton)/WMSL 752」、第十管区海上保安本部所属巡視船「あさなぎ(PLH 43)」、フィリピン沿岸警備隊BRP「テレサ・マグバヌア(Teresa Magbanua /MRRV 9701)」の3隻。

―以上―