中国海軍、原潜部隊のベール剥ぐ。人民日報(日本語版)で極秘写真公開


2013-10-29  小河正義

2013-10-31  Revised

中国海軍の原子力潜水艦部隊の㊙写真が、人民日報(日本語版)10月29日付けトップ記事で公開された。これまで厳しい報道管制で”機密のベール”に閉ざされていたが、初公開の背景は西太平洋の覇権確立を目指す中国の対日圧力の一環と見られる。公開された写真は何れもカラーで原潜の外部全体写真に加え、艦内の様子、更には放射能関連事故が発生した際の制圧訓練の様子まで紹介している。一挙公開という印象だ。原潜部隊はSLBM(水中発射弾道ミサイル)搭載型で、来年には太平洋海域で本格パトロール開始の情報をペンタゴンは掴んでいる。とにかく急ピッチの軍拡路線の中でオーシャン・ネービーへの衣替えで日米枢軸の太平洋安保体制に楔を打ち込む意図が透けて見える。

現在の中国海軍の原子力潜水艦は、弾道ミサイル原潜(SSBN)である「晋」(jin)級3隻(+2隻建造中)と「夏」(Xia)級1隻の計4隻、それに攻撃型原潜「漢」(Han)級3隻と「商」(Shang)級2隻の計5隻、すなわち合計9隻からなっている。これに通常動力型として「元」(Yuan)級7隻を含む52隻の潜水艦が加わる。注目される弾道ミサイル原潜は、水中発射型弾道ミサイル(SLBM) JL-1A型(射程2,500km)を12基搭載している。JL-1Aに続く射程7,400kmのJL-2が開発中で、近く換装される予定と云われる。中国海軍は北海艦隊(青島)、東海艦隊(寧波)、南海艦隊(湛江)の3つに分かれており、これ等原潜部隊は、北海艦隊潜水艦第1基地(青島/沙子口)と南海艦隊潜水艦第2基地(三亞/亞龍湾)に配備されている。

動静は中国国内のメディアにも写真など一切、表に出なかった。42年間、完全に機密のベールで外部の目を遮断してきた訳。今回敢えて虎の子の原潜部隊を写真入りで初公開したのは尖閣諸島を巡る日本との領有権問題で強面の姿勢をちらつかせだしたと在京国際軍事筋は見る。同時に、日米ががっちり組む太平洋での海上覇権態勢になんとか突破口を開き、米露と並ぶオーシャン・ネービーへ巣立つ決意表明にも繋がっているようだ。

中国の原潜部隊の行動は海上自衛隊、米第7艦隊の強力な対潜水艦部隊の索敵、追尾能力でことごとく行動の自由を縛ってきたという。具体例として2004年11月10日、沖縄県石垣島付近の中国原潜の領海侵犯のケースが知られる。攻撃型原潜『漢』級が渤海湾の秘密基地出航直後から、日米は連携して追尾を開始。グアム島周辺の潜水航行接近等すべてを把握。石垣島付近で領海侵犯事件が発生するやP3C対戦哨戒機、護衛艦が挟み撃ちする格好で中国原潜の行動は筒抜けとの強烈なシグナルを送った。

人民日報は1)長時間連続航行の世界記録達成 2)深海作戦遂行能力の確立 3)SLBM部隊による海上配備、戦略抑止力の構築 4)42年間、原潜の核関連事故ゼローなど自画自薦している。

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