2014年5月18日(22:00) Aaron Terruli
ボーイング副会長兼COO、デニス・ミュレンバーグが、サンクトペテルブルクで開催直前の『国際経済フォーラム』を欠席したことが判った。海外からの投資を誘致する国内最大の経済イベントだが、ホワイトハウスから欠席の決断を促されていた。対露経済制裁の路線に米・多国籍企業も非協力の立場は許されない例だ。
『国際経済フォーラム』は、プーチン大統領が出身地のサンクトの存在感を海外に知らせ、モスクワ集中の露経済構造の転換を図るべく、プーチン大統領の肝いりでスタートした。ボーイングは当初から、トップクラスの有力者を派遣。露航空産業との協力体制強化に努めてきた。
[(Boeing)ボーイングの次期会長兼CEO最有力候補、デニス・ミュレンバーグ副会長兼COO]
この決定は『国際経済フォーラム』参加2日前だったとシアトルの有力紙『シアトルタイムズ』が5月16日、”ボーイング・ウォッチャー、ドミニック・ゲーツ記者の”独自ネタとして伝えた。
ボーイングと露航空宇宙産業との相互依存関係は、強まる一方。現在、双方のビジネスは、『年間75億ドルにふくらみ、2021年には270億ドルに拡大する』(米航空アナリスト)と見込まれる。目玉は世界最大のチタニューム精錬メーカー、『VSMPO-AVISMA』とのチタニューム合金の長期調達プロジェクト。それと有能な露航空エンジニアの雇用。B787″ドリームライナー”など最新鋭機の設計実務に携わった。1991年、モスクワ市中心部に誕生した『ボーイング・デザインセンター』。直接雇用契約の250人を中核に1,200人の露技術者が関与している。
人件費に比べ設計、コンピュータ技術で露人の才能は魅力溢れるという。また民間旅客機の市場としても有望でライバル、エアバスと競合している。
しかし、米政府の要請は、ペンタゴンが宇宙防衛部門の最大の発注先と勘案するとミュレンバーグ副会長兼COOの直前の欠席決断はやむをえないところ。
ただ、同社としても露航空宇宙産業界との関係を断ち切る訳にいかず、同会議への参加メンバーの格下げという苦肉の策で乗り切る。果たして経済制裁の圧力に反発を強める露側が如何なる反応を示すか。興味深々だ。